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REPORT

業界レポート『CASE最前線』第1回

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

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読者の皆様へ

 

昨今の自動車業界を取り巻く事情は刻々と進化しており、連日、ニュースが各種メディアを賑わせて居ます。しかし、ひところとは、状況が変わってきた、と我々は考えています。今から約1年前、随所で「百年に一度の大変革」ということが叫ばれました。そして、その大変革を兎に角乗り越えよう、という危機感に業界は混沌と包まれていたと思います。しかし、昨今においても斯様な危機感こそ変わらぬものの、以前のchaosは乗り越え、自動車業界は混沌の中で生まれた業界トレンド「CASE」をフレームとして受け入れつつ、その中で、ある方向性をもって動き出している、というのがマクロ的な実感ではないでしょうか。これから、その様な業界の動きを掘り下げていきたいと思います。

 

ところで、余談ですが、最近、欧州のとある自動車エンジニアリング会社経営陣と会話した中で、私が「最近のCASEの動きは云々」と切り出したところ、先方は、「Daimlerのことかい?」と些か期せぬ返答が。どうやら、「CASE」を普通名詞と捉えているのは、日本や、ごく一部かも知れません。彼に、「正しい表現は?」と訊くに、「敢えて言えば、“自動車のDegitalization”かな?」とのこと。しかし、やっぱり、ここでは日本風に「CASE」と言っていきたいと思います。

初回なので、ここでは、わたし自身の問題意識を「CASE」に従って説明します。

“Connected”(コネクティッド):   

CASEの他の要素、A、S、Eを支える基盤技術とも言えるでしょう。コネクティッドにより、クルマはいろいろなものとつながります。そこでは、色々なデータが行き交い、それらを分析することでまた新たなサービスが生まれています。また、そうした分析の過程では、データ同志も繋がるでしょう(※実態は、そんなに簡単ではありませんが)。つまり、データがある意味合いを持つことにより、「情報」となり、これまでは考えにくかったマッチングを可能にする。そして究極は、市場に参加する誰もが格差なく情報にタッチできる、いわば、ミクロ経済学で言う「完全競争市場」の成立条件の一つ、「情報の完全性」が実現するのかも知れません。

“Autonomous”(自動運転):   

読者の中には、実証実験等を通じて既に自動運転を体験した方も多くいらっしゃると思います。そして、今年について言えば、自動運転は実証実験を超えて、社会実装に向けて大きく進歩することが期待されています。米国では、既に、Waymoがアリゾナで自動運転を用いたライドヘイリング・サービスを開始しています。また、GMも今年中に同様のサービスを開始する計画です。日本でも、諸外国に先駆け、レベル3自動運転の実現に向けて法制度の整備が進められています。日本においても、「令和元年」は、「自動運転元年」、いよいよ自動運転という「技術」が、本格的に社会に向き合う最初の年を迎えるかもしれません。

“Sharing & Service”(シェアリング&サービス):   

C、A、S、Eの中で、“S”は一寸異質な感じがします。つまり、その他C、A、Eは技術的要素を意味しますが、“S”は行為を意味します。つまり、3つの技術要素の社会に向けた出口となるビジネス戦略を意味します。また、“S”の対象は、クルマや人々の移動に限られたものでもありません。情報、流通、ショッピング、飲食、娯楽、金融、等々、色々なものが包括され、プラットフォーム化された市場を形成することでしょう。

“Electrification”(電動化):   

地球温暖化防止等、環境保全に向けた社会要求を背景に、グローバルに環境規制の強化が進んでいます。この傾向は今後とも、加速するものと思われ、モビリティの電動化を「長期的」には後押ししていくことと考えます。では、「なぜ、長期的」なのか?。背景には、インフラの課題もありますが、「EVとしての価値は何か」をしっかり見極めることが大事だと思います。作る側の意図だけでは、市場は受け入れません。EVについては、消費者にとっての価値、つまり、その用途との適合性が問われているのだと思います。そして、ここで言う価値とか用途とは、決して単一のものではありません。かの名言が如く、「進化が齎すものは淘汰ではなく、多様化だ」、と思います。

 

以上、個別に述べましたが、「CASEが一体となって変革をリードする」というのが大元のDaimlerも当初から主張していることであり、その観点からすれば、上述した各論が行き着くところは、いずれも、我々の「社会」がこれら「技術」にどう向き合うのか、言うなれば、「CASE」は「社会」にどういう価値を齎すのか、に尽きると思います。

 

これらについて、考えて行きたいと思います。ある時は、俯瞰し、また、ある時は分析をしてゆきつつ。兎に角、時代は動いており、これからどこに向かうのか、果たして、我々はどうすべきなのか、等々、これから掘り下げて行きたいと思います。

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