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業界レポート『イスラエル紀行 第二話』

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

はじめに

6月中旬、約 1 週間の旅程でイスラエルを再度訪問した。今回は、現地側パートナー Beyond Mobility との共同企画「イスラエル自動車産業ツアー」として、日本自動車関連企業数社と一緒に訪問した。ツアーは、イスラエルの優秀なスタートアップ企業 18 社との面談/視察に加え、イスラエル国軍 8200 部隊の元コマンダーとの会食、ベン・グリオン大学訪問と盛り沢山の内容であった。

訪問を通じ、イスラエル特有のテック・エコシステムを垣間見ることができた。その辺りを中心にお話したい。

ヤイエル・コーヘン大佐

ヤイエル・コーヘン大佐は、8200 部隊に 33年勤務し、うち 2001-05年の間はコマンダーを務めた。退役後も、セキュリティに関連するアカデミー活動に加え、スタートアップの育成、ベンチャー・キャピタルの創業・運営、と多忙な日々を送る。今回の訪問の際、現地側パートナーのアレンジで、同氏を招いたツアーメンバーとの晩餐会に参加することができた。

席上、参加者より、8200 部隊の話題を向けると、大佐は、回顧しつつ語った。
「今は最強と言われる 8200 部隊にもこれまで紆余曲折はあった。私は元より、隊員は皆、1973年に起こったヨム・キプール戦争(第四次中東戦争)のことを忘れない。その時、イスラエルは、北はシリア、南はエジプト、双方から奇襲を仕掛けられ、序盤戦では苦戦を強いられた。この時、悪いことに、我々の部隊のメンバーが敵(シリア)の捕虜として捉えられてしまった。捕虜への拷問の結果、機密情報が敵国に伝わってしまう中、8200 部隊は生まれ変わりを余儀なくされた。以後、我々は、改めて精進し、外国に頼らない、自国特有の名実共にイスラエルをリードする R&D ユニットとなる覚悟を決めた。結果、このことが、国を強くし、イスラエルの産業も強くした。」

ネゲブ・ベン=グリオン大学

翌日、我々は、テルアビブを発ち、南に向かった。目的地はネゲブ沙漠の中にあるベエルシェバ。聖書の創世記(アブラハムが掘った井戸があると言われる)にも登場する古都だ。初代イスラエル首相、建国の父、ベン = グリオンの名前を冠する国立大学を訪問した。

同地区には近年、8200 部隊の施設が置かれた。在籍する隊員はベン = グリオン大学で学んでいる。また、同大学周辺には、多くの研究機関があり、大学・軍・産業が共同で防衛やセキュリティの分野でコラボする体制が築かれている。

我々は、ベン = グリオン大学内にて半導体の研究を行う電子工学研究センター、及び、ロボット工学研究センターを訪問したのち、併設されたサイバーセキュリティ研究所(Cyber@BGU)も訪れた。同研究所には、パートナーである国家情報保安院、イスラエル警察、に加え、多くの外資企業とも共同研究を展開している。

終わりに・所感

今回訪問/面談したスタートアップ各社については、ここでは敢えて詳細は省くが、サイバーセキュリティ、自動運転 AI、自動運転用センシング、ドライバー状態検知システム、超小型内燃機、ビッグデータ解析、車幅可変型 EV、等々、多岐の分野にわたり、優秀なスタートアップと面談できた。

斯くして、我々ツアー参加者一行は、無事旅程を終了し、帰国した。イスラエル国内では、当初心配された混乱に遭うことはなかった。特別なことは何も無かった。代わりに、特に今回は、情報セキュリティ分野を中心に、改めて、イスラエルの軍を含む産学官の密接な関係を垣間見ることができた。それは、イスラエルという国の成り立ちと密接に関係したものだ。「敵に囲まれた国」という一触即発の緊迫感がイスラエルのハイテックを鍛えているのだろう。そして、我々が何も無かったのは、我々の知らない、外からは見えない世界で日夜展開されている諜報活動のおかげかも知れない。

次のイスラエルツアーは、本年秋に予定したい。その頃は、国際政治も落ち着いて(すでに落ち着いているようには見えるが)、多くの方をお招きできる様、ヤハウェの神に願いたい。

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