REPORT

Israel News Letter No.1『イスラエル-イノベーションの世界的ハブ』

住商アビームのイスラエルにおける戦略的パートナー、BMG - Beyond Mobility Garage社によるニュースレター。イノベーション、テクノロジー、スタートアップ、モビリティ事情など、イスラエルにまつわる新鮮かつ有益な情報をお届けします。

イノベーション国家 イスラエル

イスラエルは「スタートアップ大国(Start-up Nation)」として有名で、2018年もまた、このニックネームに十分ふさわしい状況が続いています。イスラエルのハイテクエコシステムは、世界最高クラスの活気、イノベーション性、創造性を誇ります。  イスラエルは、面積(世界第147位)と人口(世界第100位)では相対的にたいへん小さな国にもかかわらず、GDPは世界第31位で、一人当たりGDPでは世界第21位とさらに上位にランクされます。イスラエルの成功は、主として大規模なハイテク部門によるものです。イスラエルは人口一人当たりのスタートアップ数が世界第1位で、活動実態のある企業は現在6,000社を上回っています。NASDAQ証券取引所の上場企業数では、所在地である米国、中国に次ぐ第3位です。これらすべてが、イノベーションにおけるイスラエルの世界的リーダーシップにつながっています。

イスラエルのハイテク産業は、一流企業群と巨大なスタートアップエコシステムの双方を擁しています。チェック・ポイント(Checkpoint:ファイアウォールの発明企業)、アムドックス(Amdocs:企業向けソフトウェア・サービス)、ストラタシス(Stratasys:3Dプリンティング)などの企業は、それらの分野の業界リーダーになっています。同時に、世界で最もイノベーティブなスタートアップもいくつか存在します。ADASと自動運転システムの開発企業であるモービルアイ(Mobileye:インテルが152億ドルで買収)、人気カーナビアプリの開発企業であるウェイズ(Waze:グーグルが12億ドルで買収)、ARグラスの開発企業であるマジックリープ(評価額50億ドル)、ソーシャルトレーディング企業のイートロ(eToro:評価額11億ドル)、その他にも多く存在します。

イスラエルのイノベーションは卓越しており、事実、イスラエルはこの10年間で、大規模多国籍企業が研究開発拠点を開設する主要なハブとなりました。下のリストは、世界最大の企業群と、それらの企業がイスラエルに研究開発拠点を置いているかどうかを示しています。

 
なぜイスラエルか?

イスラエルは面積が狭く、国土の大部分が不毛の砂漠で、天然資源に乏しい国です。それでも、イスラエルは世界的なイノベーションハブという比類のない地位にたどり着きました。この 「スタートアップ大国」はどのようにして可能になったのでしょうか。格言にあるとおり、「必要は発明の母」です。すべては強い必要性から始まりましたが、なかでも特筆すべき要因もいくつかありました。

イスラエルはその建国時から、極めて過酷な地理的・政治的条件の下で、生き残りのために苦闘してきました。世界中から集まるユダヤ人難民によって急速に増大する数百万人のユダヤ人民に食糧を供給するため、イスラエルは革新的な農法と農業技術の開発に多大な努力を注ぐ必要がありました。ミニトマト(および砂漠でも生育可能な他の作物)のような発明や、点滴灌漑システムといった世界を変革する技術は、イスラエルで生まれました。遺伝学・医学からIoTまで、さまざまな先進技術を採用したイスラエルの乳牛は、牛乳生産の世界的リーダーになっています。これらの発明のおかげで、イスラエルは自国民に食糧を供給できただけでなく、特定の農産物については重要な世界的供給国となり、また、これらの技術を世界各地の農家に輸出することができました。

敵対国に取り囲まれた、建国後間もない小国のイスラエルは、生き残りのために先進的な軍事防衛技術を開発する必要がありました。この分野への政府投資は相当額に上り、財源は、政府の軍事研究機関、また民間防衛企業に対しても、直接割り当てられました。技術教育にも重点が置かれました。サイバーセキュリティなど一部の分野では、イスラエル独自の多層的アプローチにより、世界的超大国になっています。すなわち、イスラエルの若者は高校でサイバー教育を受け始め、サイバー戦争のエリート部隊で実務経験を積み、その後、政府が支援する学術研究施設で教育を続けます。

方程式の片側は、「強い必要性」です。方程式のもう片側には、イスラエルを他に類を見ないイノベーティブな国へと導いた、いくつかの複合要因があります。すなわち、人的資本、独自の文化、そしてスタートアップが活用できる支援体制です。

人的資本

イスラエル国民は、常に教育に大きな重点を置いてきました。実際、イスラエルの人口一人当たりのエンジニア数と科学者数は世界最高です。イスラエルの人的資本の独特な点は、スタートアップエコシステム内のリーダーのかなりの部分を、「8200部隊」(イスラエル軍諜報局の一部隊。単一の部隊としてはイスラエル軍最大)や、「タルピオット」(特待研究開発プログラム。軍事研究開発の技術的リーダー育成のための3年半の長期訓練プログラム)といった、他に類を見ない軍事研究開発部隊の退役軍人が占めていることです。どちらの環境も、実務経験を持つ最高レベルの起業家やエンジニアを、イスラエルのスタートアップエコシステムに供給し続けています。

文化

イスラエル文化の一部となっているのが、常に資源に困窮しているという考え方です。イスラエル人は、非常に若い頃から、常に物事に即興的に対処し、既成概念にとらわれない考え方をする教育を受けます。正式なプロセスは、常に、解決策をまず素早く見つけるアプローチに劣ります。別の文化的側面として、「失敗を許容する文化」があります。これも、課題に挑戦し、解決しようとする試みの一つです。試行錯誤によってのみ真にイノベーションを実現できることを、イスラエル人は理解しています。これらすべてが、イスラエル人がスタートアップと起業家精神を理想と考える背景にあります。スタートアップを起業するのは「イスラエルの夢」であり、リスクを取ることはこの夢不可欠な一部分です。

支援

第三の主要因は「支援」です。イスラエル政府はごく初期に、イノベーションこそイスラエルのような国が難局を切り抜ける唯一の方法と認識していました。そこで、イノベーションを育成・奨励する目的で、イスラエルイノベーション庁(IIA: Israel Innovation Authority)、イスラエル輸出協会(IEI: Israel Export Institute)、政府が支援するインキュベーター、アクセラレータープログラム、研究施設・ラボなど、多くのスタートアップ成長支援プログラムを策定し、支援しています。総じて、イスラエルは、韓国と共に、対GDP比で最大の研究開発投資を行っている国です。

多様な得意領域

天然資源が豊富ではないイスラエルの産業は、ソフトウェア企業へと大きく傾斜しました。イスラエルのイノベーションも、最も必要とされる分野へと傾斜しました。例えば、イスラエルは国土安全保障技術の世界的なリーダーとなり、また、水資源が限られているために、農業技術の先駆者ともなりました。以下にイスラエルが秀でている分野をいくつか示します。

 

次回のレポートでは、イスラエルの自動車・モビリティ技術がどのように世界を変え始めたかに焦点を当てます。

 

イスラエルがどのように世界的なイノベーションリーダーとなったかについて、より深く知りたい方は、以下の文献をお読みください。

  • Start-up Nation: The Story of Israel’s Economic Miracle” by Dan Senor and Saul Singer 
    -ダン・セナー、ソール・シンガー共著『スタートアップ大国-イスラエル経済の奇跡の物語
  • Israel’s automotive and smart mobility industry – Electrified, autonomous and intelligent” – A report by global strategy consulting firm Roland Berger
    ー ローランド・ベルガー『イスラエルの自動車・スマートモビリティ産業-電化・自動運転・インテリジェント

 

 

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