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REPORT

業界レポート『電動化の現状 ~欧州と日本~』

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

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はじめに

 2020年10月の菅総理による2050年カーボンニュートラル宣言、それに続いた政府 諮問会議の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」採択により、日本国内の脱炭素機運が一気に高まっています。「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という言葉と合わせて「電気自動車」や「ハイブリッド」というワードも以前より多く目にするようになりました。中でも注目したのは、欧州自動車市場での電動車の増加に関する記事です。欧州で伸びているということは、カーボンニュートラルを目指す日本でも、近い将来、欧州と同じ勢いで電動車が伸びるのではないだろうか。この直感はアタルのか、ハズレるのか。このことについて少し考えてみたいと思います。

欧州乗用車市場

 まず欧州乗用車市場の全体推移を確認してみました。左のグラフは直近12か月間の販売台数を積算し連続的に示したもので、年間販売台数の最新状況を示す曲線です。この10年間では2012年頃の欧州債務危機で低迷し、その後2019年まで緩やかに拡大してきたことがわかります。そして2020年、コロナウイルスで大打撃を受けました。

 

 

出典:ACEA 統計値をもとに住商アビーム自動車総合研究所作成                                 

 このグラフでも 約1581万台から約1201万台へと1年間で約24%市場が縮小したことが見て取れます。ところが、冒頭で述べた通り、電動車は急激に伸びているというのです。そこで次に動力源別の増減をグラフにしてみました。「約24%も減っているのに伸びている」とは、いったい、どういうことなのでしょうか? 

欧州乗用車 動力源別販売推移 (4×四半期移動合計)

出典:ACEA 統計値をもとに住商アビーム自動車総合研究所作成

 

 そこで動力源別の販売推移をグラフにしてみました。左からBEV&FCV、PHEV、HEV、ガソリン車、ディーゼル車です。BEV&FCV、PHEV、それにHEV のいわゆる電動車が増加傾向で、ガソリン車とディーゼル車の内燃機関車 (ICE) が減少傾向であることがわかります。統計公表値の関係で四半期数値となっていますが、グラフからそれぞれの増減の勢いを感じ取っていただけると思います。

 さらにここで、2019年Q4と2020年Q4を比較して、1年間の増減を定量的に読み解いてみましょう。上述の通り、2019年末では約1571万台/年の市場だったのが2020年末には約1201万台/年となり、1年間で370万台/年減少しました。
 この間、ガソリン車が916万台/年から574万台/年へと342万台/年 減少 (▲37%)、ディーゼル車も474万台/年から309万台/年へと165万台/年 減少し(▲35%)、主力2種類で合わせて 507万台/年 ( =342+165 ) 減少 (▲36%)しました。
 これに対して、BEV&FCVは36万台/年から75万台/年に39万台/年増加(+108%)、PHEVは20万台/年から62万台/年に42万台/年増加(+301%)、HEVは95万台/年から145万台/年へ50万台/年増加(+53%)、3つ合わせて131万台/年 ( = 39+42+50 ) 増加(+87%)しているのです。メディアはここを捉えて「欧州で電動車が大幅に増加した」と報じたわけです。

 

 欧州経済をコロナ禍が襲ったのは2020年春以降で、2020年Q2が最も景気が落ち込んだと言われています。したがい、移動合計グラフは2021年上半期には回復してくるものと予想されます。上記5種類の動力源別グラフによれば、電動車3つのグラフは2020年Q2に多少の落ち込みを示しているものの、力強い増加トレンドにあります。恐らく今後もこの傾向は続くでしょう。一方で、ディーゼル車は排ガス偽装事件の影響でコロナ禍以前から連続的に減少トレンドにあります。
 欧州ではカーボンニュートラル推進策として、BEVとPHEVに補助金を支給する傾向にあることから、HEVは減少するのではないかと推察されています。また中長期的には、排ガスを出すPHEVとHEVもいずれ販売禁止になるのではないかという観測も出ています。したがって、欧州での注目ポイントは、PHEVとHEVの位置付けがどうなるかという点であり、今後の動向が注目されます。

 

日本国内 乗用車 動力源別販売推移 (4×四半期移動合計)

 

出典:JAMA統計値をもとに住商アビーム自動車総合研究所作成

日本乗用車市場

 日本自動車工業会が公表している統計値を使って、欧州と同様のグラフに落とし込んでみました。左のグラフから見ていきましょう。BEV+FCV は減少傾向です。ただし、未だ市場サイズが小さく黎明期を脱しておらず微増減の範囲内と捉えて問題ないと思います。PHEVも同様で減少傾向にはありますが、未だ黎明期にあります。続いてHEVグラフを見てください。市場サイズは100万台/年を超えていましたが、足元では100万台/年を割り込んでいます。ICEの2つを見ると、ガソリン車はダラダラと減少が続いていて、ディーゼル車はいったんピークを付けたのち、減少に転じています。いずれも増えていませんが、欧州のように大きく減少しているということもありません。
 こうして見てみると、足元では景気循環とコロナ禍の影響で全般的に減少トレンドにあり、電動化の視点で見ると、日本市場は欧州に比べると電動化が遅れていること、そして電動化という方向性がまだ表れていないことがわかります。

まとめ

 以上見てきたとおり、欧州ではコロナ禍という逆風を受けながらも電動車が強力な増加トレンドに入ったことが確認できました。
 一方、日本では電動車が著しく増加する兆候はまだ見られません。政府がカーボンニュートラルを目標に掲げ、グリーン成長戦略を打ち出してから間もないので、販売統計に表れるまでにもう少し時間がかかるかもしれません。
 自動車メーカーの動向にも注目が集まります。例えば、日本ではHEVにも補助金が適用され普及してきた陰で少し高価なPHEVはあまり普及していませんが、欧州ではHEVは補助金対象から除外され、PHEVだけが対象にされる国が多いことから、欧州ブランドの多くがHEVではなくPHEVに力を入れ車種を増やしています。日本でも大都市圏を中心に欧州ブランド車が一定の市場シェアを持っていることを考えると、それらがガソリンやディーゼルからPHEVに代わっていくというストーリーも考えられます。
 テスラがBEVのイメージを植え付けたように、欧州車がPHEVを日本でメジャーにするきっかけを作るかもしれません。
今後の動向に引き続き注目したいと思います。

 

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