タイの洪水被害について

2007年 10月から自動車業界に関連するあらゆる傾向をアンケート調査してきた
「住商アビーム 1 クリックアンケート」が 2011年 2月からリニューアル致し
ました。自動車業界で関心が高いテーマを設定し、幾つかアンケートをさせて
頂きます。ご回答頂いた皆様の声をもとに、翌月、そのテーマに関するレポー
トを発表致します。

今月のテーマは「タイの洪水被害について」です。    
 

                                                                           

タイで自動車産業が集積化した理由について
(2011年11月1日配信分)

質問

 10月初旬より発生しているタイの大洪水により、首都バンコクの郊外にある
7 工業団地が被害を受けました。10月 29日時点で、被災企業数は日系約 450
社を含む約 730 社にまで上るとの報道があります。

 浸水による生産停止といった直接的な被害に加え、下請または納入先の被災・
生産状況により減産を余儀なくされるといったサプライチェーンの分断による
間接的な被害も甚大となっています。

 また、これまでタイから完成車・自動車部品の輸出が日本・ ASEAN 他地域等
へ広く展開されてきました。故に、今回の洪水による被害はタイ国内に留まら
ず、日本を含めた他地域での生産にも影響を及ぼすことになりました。

 このように戦略拠点としてタイに産業集積化を進めてきたことが今回は裏目
となり、日本の自動車産業への被害を大きくさせた要因の一つとして報道され
ています。

 それでは、そもそもタイに自動車産業が集積してきた理由として読者の皆様
が最も当てはまると考えられる項目を以下選択肢の中から一つお選びください。

1. 現地サプライヤの高い技術・品質レベル:
   現地サプライヤの技術・品質レベルが高く、原材料・部品の現地調達が比較
   的容易である など
 
2. 進んでいる経済連携協定/自由貿易協定締結:
   ASEAN 域内に留まらず、中国とも自由貿易協定(ACFTA)を締結しており、
   関税メリットを享受できる など
 
3.優遇税制:
   タイ政府主導の「エコカー」プロジェクトにより、法人税・輸入部品関税の
   減免によるメリットを享受できる など
 
4.新興国の中で比較的整備されているインフラ環境:
   他新興国と比較して物流網の構築や港湾整備が進んでおり、輸出拠点化し易
   い など
 
5.タイの国民性・日本人駐在員の居住環境など文化的要素:
   親日的・勤勉な国民性、駐在員の居住環境レベルなど、日本人との親和性が
   高い など
 
6.その他
 

アンケート結果

                                             
    

代替生産を図る上でネックとなるポイントについて
(2011年11月8日配信分)

質問

    
 タイの大洪水により日系自動車部品メーカーの工場の多くが浸水による操業
停止を余儀なくされ、代替生産への移行を急いでいます。 ロジャナ工業団地にあるケーヒンのタイ工場にも浸水し、10月 8日から操業
停止となりました。然しながら、同社は、10月 19日にタイで生産していた四輪
車製品の日本や中国等での生産補完準備が整ったと、比較的スムーズに代替生
産へ移行したことを発表しています。

 一方で、自動車業界全体としては樹脂、鋳造、電子関連部品といった自動車
部品が品薄状態にあり、自動車メーカーとしては生産調整を余儀なくされてい
るとの報道があります。

 このように、日系自動車部品メーカーにおいて代替生産への移行が比較的ス
ムーズにできているところと、できていないところがでてきています。両者を
隔てる要因には特にどのようなことがあるのでしょうか?

 自動車部品メーカーが代替生産を図る上で、特にネックとなるポイントにつ
いて、読者の皆様が最も当てはまると考えられるものを以下選択肢の中から一
つお選びください。
  
1. 原材料・部品の代替調達
 (代替調達先を探すのに時間を要すること、または特殊設計のため代替調達
  が困難であること、等)
  
2. 生産設備の利用可能性
  (専用設備の搬送可否、設計柔軟性等)
 

3.代替生産場所の確保
  (代替生産拠点がないこと、または他拠点の稼働率が高く余剰ラインがない
   こと、等)
 

4.量的人員不足
 (突発的に纏まった数の作業員を集めることができないこと、等)
  
5.質的人員不足
  (生産ノウハウ、スキルが現地作業員に蓄積されており、他者では代替がき
  かないこと、または一から教育するには時間が掛かり過ぎること、等)
  
6.資金調達
  (突発的に纏まった資金を調達するのが難しいこと、等)
  
7.その他

  

アンケート結果

 
   
                    

自動車部品メーカーのタイでの生産方針への影響について
(2011年11月15日配信分)

質問
 

 トヨタ自動車/豊田社長がタイ訪問後の記者会見の場で、「(タイへの)更
なる投資拡大はあっても撤退はない」との発言があったとの報道があります。
また、タイに新工場を建設中の三菱自動車/益子社長も「他国への生産シフト
は毛頭考えていない」との発言があったとの報道があります。

 このように日系自動車メーカー各社は今回の洪水被害を受けても、今後タイ
での生産を縮小していくという報道はありません。また、被災前に各種機関で
予測されていた 2015年の車両生産 300 万台への影響もそれ程大きくはないよ
うに捉えられています。

 一方で、東日本大震災に続く、タイの洪水によるサプライチェーン寸断の経
験を踏まえ、自動車部品メーカーはより強靭なサプライチェーンの構築が求め
られることになりました。この点を踏まえ、タイの生産能力を分散させていく
可能性もあるのではないでしょうか。

 それでは今後もタイでの車両生産は増加していくとした場合に、日系自動車
部品メーカーのタイにおける生産方針はどのようになると思われるでしょうか。
以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお選
びください。
    
1. タイでの車両生産の増加に応じて、タイで生産能力増強を行う

2. タイでの生産は被災前水準レベルの回復・維持に留め、車両生産増による供給
  不足部分は他 ASEAN 地域等での生産能力を増強することで対応する

3.タイでの生産能力は減少させ、タイでの減少分及び車両生産増加分は他 ASEAN 地域
   等での生産能力を増強することで対応する

4.その他(タイからは撤退等)

  

アンケート結果

   
 

                                             
               

代替生産・調達を実現した要因について
(2011年11月22日配信分)

質問

   
10月中旬以降、今回のタイの洪水で直接被災したホンダに加え、部品供給不
足となった日系自動車メーカー各社は生産停止を余儀なくされました。各社は
代替部品の確保を急ぐものの、当時の見通しは不透明で、生産への影響は長期
化するのではないかと多数報道されていました。

 然しながら、結果としては、直接被災したホンダを除き、自動車メーカー各
社は、停止後約1ヵ月で一部車種の生産を再開しました。

 これは自動車部品メーカーの代替生産・調達により分断したサプライチェー
ンが急速に回復し、想定より早く部品供給に一定の目途が立ったことが大きな
要因となっています。

 それではこのような代替生産・調達を実現した要因として何が有効だったと
考えられますか。以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えられ
るものを一つお選びください。
  
1.部品メーカー自身が、自社の他の生産拠点で代替生産に取り組んだこと

2.同業の他の部品メーカーが、代替生産を引き受けたこと

3.自動車メーカーが、代替生産拠点の確保・調達に取り組んだこと

4. 政府・自治体が、代替生産のための規制緩和等の支援(タイ人労働者の日本
  への早期受入対応等)を実施したこと

5.その他

 
アンケート結果