米国自動車業界の購買(3)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 9 弾は、アビームコンサルティング USA 代表 ダロン・ L ・ギフォードとアビームコンサルィテング USA マネージャー河合博子が、米国自動車業界の購買について 4 週に渡って紹介する。今回はその第 3 回にあたる。

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第9弾『米国自動車業界の購買(3)』

(日刊工業新聞 2005年03月30日掲載記事)

完成車メーカーと部品サプライヤーが協働体制を強化するのは互いがグローバルな競争に勝ち抜くためである。今回は協働を可能にするソリューションについて紹介したい。

米国ビッグスリーにルノー・日産が加わって 00年 12月に設立したコビシント社の目標は、完成車メーカーとサプライヤーを結ぶ、B2B のハブ(中枢)となることだった。システムの重複を省いたオンラインソリューションの活用でプロセスの効率化を図り、メーカーのコスト削減・利益増加に寄与すると同時に、サプライヤーの投資負担を削減して業界全体の効率化を目指すという意図を持っていたのである。

まずオンライン・オークションを導入。

(1)時間短縮
(2)明確なスペック提示
(3)入札プロセスの可視化
(4)人件費低減

など、購買プロセスの効率化を進めた。だが一部では、メーカー側によるコストカット押し付けの風潮と懸念され、サプライヤー側の感情的な反発も見られた。その後、業界における協働作業を可能にするインターオペラビリティー(異なるシステムやソフトウエア、データ交換上の相互運用性)に重点を置き、具現化した電子データ交換( EDI )ソリューション「コビシント・コネクト」の提供を開始した。コビシント・コネクトを介してメーカー、サプライヤー間の情報受配信を可能にするものである。従来サプライヤーは顧客である自動車メーカー側のシステムに対応するため、複数のシステムを導入することをやむなくされてきたが、これによってシステム構築への投資も自社の IT インフラの変更も、必要が無くなった。

このソリューションについては、大手サプライヤーも、単にユーザーとして使用するだけではなく、開発そのものに業界団体を形成して投資した。この出来事は、米国自動車業界全体が協働の実現へ真剣に向かい始めた象徴ともいえる。このように IT 面では、協働を促進するツール等が開発されたが、それを存分に活用し、不信の歴史を払拭するような「考え方のソリューション(解決策)」はまだ十分ではない。

元クライスラー社マーケティング部門のウイルバー氏の発言にあるように、「米国の自動車業界は今やもっとも変革を必要としている業界であろう。メーカーはサプライヤーからのイノベーション(発明・改革)を期待し、必要としている。

だが「サプライヤーはメーカーのビジネスを促進するようなイノベーションに投資し、提供すれば見合う成果を回収して評価してもらえるという信頼感をメーカーに対して持てるようにならなければ、グローバル競争に負けてしまうことは必至である」というのが厳しい現実でもある。

米国自動車業界が必要としているのは、プロセスやソリューションの導入のみならず、その成果を定量化し、サプライヤーの貢献を正当に評価していく態度への転換であろう。

<ダロン・L・ギフォード/ 河合博子>