新・業界ニュース温故知新 『太陽電池はクルマに普及するのか?』

 過去の自動車業界のニュースを振り返り、新たな気づきの機会として紹介し
ていたこのコーナーですが、新しい形にリニューアルしました。

 過去の記事で取り上げた内容を振り返り、現在の自動車業界と照らし合わせ、
新たな視点で見直していきます。

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『太陽電池はクルマに普及するのか?』

【参照記事】

『太陽電池はクルマに搭載されるのか?』

◆トヨタ、次期「プリウス」に世界で初めて大型「太陽電池」搭載か、韓国紙

 2008年発売の新型プリウス(開発コード590L)は屋根全体に太陽熱発電池を
 装着し、停止中も電気エネルギーを充電できるようにすると報道した。

                   <2006年10月26日号掲載記事>

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【参照記事の概要】

 2006年当時から、三代目「プリウス」には太陽電池が搭載されるのではない
か、という報道が流れていた。二代目を超える燃費性能を実現するためにも、
太陽電池を搭載して更なる燃費向上を図るのではないか、というものである。

 太陽電池をクルマに搭載するためには、高い変換(発電)効率、曲面への対
応、軽量化、経済性などの要件が求められ、決して簡単ではない。こうした要
件を考慮すると、いわゆるソーラーカーのような主動力源として搭載される可
能性は低く、補助電源として活用することが現実的であり、有効であろう。

 ホンダは太陽電池の量産に取り組んでいる。自動車メーカーや大手電機メー
カーは更なる太陽電池の性能向上・低価格化に注目しており、新しい素材・技
術導入により、自動車業界でも実用化が期待される分野である。

(参照記事のコラムはこちら)
『太陽電池はクルマに搭載されるのか?』
 

【「プリウス」と「リーフ」】

 2009年 5月に発売となった三代目「プリウス」には、オプションの「ソーラー
ベンチレーションシステム」として、太陽電池が屋根に搭載されることとなっ
た。同システムは、日中の駐車時に、太陽電池が発電する電力で換気ファンを
駆動させることで、日差しの強い季節でも車内温度が上昇することを抑える仕
組みになっている。太陽電池は京セラ製で、平均出力 56W、変換効率 16.5% と
公表されている。車両に搭載するにあたり、耐熱・耐振動・耐衝撃等の基本性
能に加え、車体デザインに合わせた曲面形状や外観を実現したという。

 このソーラーベンチレーションシステムという装備は、90年代にもマツダが
商品化しているが、空前のハイブリッドブームにより販売車種ランキングトッ
プとなった「プリウス」に搭載されたということで、今回は大きな注目を集め
た。実際のこのシステムの効用以上に、エコカーとしてのイメージ向上にも大
きな役割を果たしていたようにも思える。

 昨年末には、日産が電気自動車「リーフ」を発売したが、上級グレード限定
の装備として太陽電池が搭載された。ルーフスポイラー部に搭載されており、
補機類の電力を補うものだというが、かなり小ぶりなサイズなので、発電量も
限定的だと思われる。

 「プリウス」と「リーフ」という近年のエコカーを代表する二車種に太陽電
池が搭載されたわけだが、補助的な活用、部分的な導入、イメージ先行という
点で共通するところも多い。現在の太陽電池の性能、コストでは、大きな省エ
ネ効果を期待するというよりも、エコカーとしてのイメージを高める効果の方
が大きいということであろう。

 
【クルマに普及される時代は来るのか】

 現在の太陽電池の性能からすれば、クルマに搭載するよりも、移動しない場
所に設置する方が適していることは間違いないだろう。簡単に言えば、クルマ
に搭載するよりも、駐車場の屋根につける方が効果的である。クルマに搭載す
ることで、耐熱・耐振動・耐衝撃といった要求仕様が高まり、必然的にコスト
も高くなる。また、自由に動くクルマの場合、常に発電効率が高い日差しの向
きを確保できるわけでもない。補助金制度も充実している住宅用途であっても
15~ 20年かけないとコスト回収できないと言われていることを想定すれば、ク
ルマ用としてコスト回収することは、かなり難しいことが想像できる。

 一方で、先日の大震災の影響やその後の電力供給問題もあり、これまで常時
利用可能と考えてきた電力というインフラについても、有事の備えを考えてお
く必要があるという意識も浸透しつつある。これまで家庭に設置が進んできた
太陽電池についても、発電した電力を系統に流すだけではなく、蓄電池を併設
して非常時の電力源として活用することに注目が集まっている。こうした形の
発展系として、一定容量の蓄電池を内蔵する電気自動車やプラグインハイブリ
ッド車を非常時の電力源として活用できないか、という考え方もある。太陽電
池とクルマの新たな関係が生まれてくる可能性もある。

 いずれにしても、多くのメーカーがこの分野の技術革新に取り組んでおり、
更なる変換効率の向上が期待されている。また、新興国メーカーもコスト競争
力を武器に勢力を伸ばしており、低コスト化も進みつつある。住宅等の定置用
途に普及が進むと、次の市場として、大量に市場に出回るクルマに注目が集ま
る可能性もある。その時には、クルマに搭載するにも最適なコストと性能の太
陽電池が開発されるのであろう。遠い未来のことのようにも思えるが、近年の
太陽電池の技術革新のスピードを思えば、意外とすぐ来るかもしれない。

<本條 聡>