今更聞けない経営用語シリーズ1 BPR(1)

日頃、特にその定義や本来の意味を意識することもなく使用している経営用語を取り上げ、自動車業界の事例も交えながら説明を行っていくこのコラム。
第1弾として、今週から4週に渡ってBPR(Business Process Re-engineering)を取り上げる。

第1回 BPR(Business Process Re-engineering)(1)
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BPRのコンセプトは1990年に元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー(Michael Hammer)氏が提唱したもので、企業改革において、既存の組織やビジネスルールを抜本的に見直し、プロセスを再設計(リエンジニアリング)するというものである。
ここでいうプロセスは「最終的顧客に対する価値を生み出す一連の活動」と定義されており、ハマーは、リエンジニアリングを「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義している。
一言で言えば業務改革とも言うことができる。
さて、ここでBPRと自動車業界の関係について触れようと思うが、実はBPRという概念のルーツは日本自動車業界にあるというのはご存知だろうか。
というのも、BPRという概念は、1980年代に世界を席巻した「カイゼン」活動をモデルとして米国で開発された経営手法だからである。
当時、分業体制の進んでいた米国では、それぞれの業務に対してプロセスの最適化を行う「部分最適」が組織全体の効率化を阻んでおり、日本式の組織横断的な「カイゼン」活動を取り入れることで「全体最適」を目指すというのがBPRというコンセプト発祥の背景には存在している。
但し、「カイゼン」活動との相違点もいくつか見受けられる。経営層の強力なリーダーシップ、明確な戦略に基づいて、抜本的な業務改革がトップダウン方式で行われること、また情報システムの変革も含めた形で業務を見直すことが打ち出されている点が主な違いである。
その意味でBPRでは効率化や現状のプロセスを前提とした改善とは異なり、ある理想的な結果を導き出すために、現在のIT技術等も利用して、いちから今どのようなものを作り上げるかを考えていくこととなる。
しかし、90年代初頭にブームとまでなったBPRも、試みた企業の全てが成功したわけではなく、それはコンセプトの提唱者であるマイケル・ハマー自身も認めている。
主な失敗の原因は、トップ主導ではあるが業務改革の目的が不明確、もしくはコミュニケーション不足のため、現場が意識面等で改革に適応できなかった点と、他部門との情報システムによる連携がとりにくかった点にあったといわれている。
上記のような失敗の原因が実は「カイゼン」活動との違いとしてあげた項目と一致しているというのは皮肉なものである。
来週以降のコラムではBPRの「カイゼン」活動との違いであり、かつ失敗要因ともなりうるトップマネジメントの明確な戦略、情報システムといった項目についてさらに言及していこうと思う。
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<秋山 喬>