悩みを抱える事業者同士の補完関係構築を何と呼ぶ?

◆リース会社が地方金融期間と動産担保融資で提携・機械設備や自動車など
動産担保の評価ノウハウを提供。担保物件処分はリース会社が実施。

<日経金融新聞2007年7月24日号掲載記事>
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地方の事業者に対して、地銀や信用金庫などが資金の出し手となり融資を拡大する手法として、リース各社との提携が進んでいるという。

【記事概要】

融資機会を増やしたい地方金融機関と事業領域の拡大を志すリース会社とが協働する手法として、動産担保融資が増加している。

例えば、興銀リースは今年 6月に八千代銀行と提携した結果、既に 20 前後の地方金融機関とのアライアンスに基づき、動産担保融資を拡大している。

また、東京リースも岡山県のトマト銀行や岩手県の北日本銀行などと提携。既に提携先は 10 行程度となっている、とのことだ。

更に、三菱 UFJ リースも現在 10 程度の地方金融機関と提携交渉を進めているとのことだ。

【リース会社・地方金融機関の役割及びメリット】

記事に基づき、両者の役割分担及び得られるメリットを以下整理してみた。

1)リース会社

・役割
地銀などが取得する動産担保の評価ノウハウの提供並びに貸し倒れに伴う担保物件処理

・メリット
1.地銀などから、動産評価を実施することに伴う手数料獲得
2.一定枠までの信用保証を地銀などに提供することに伴う、保証料の獲得
3.担保物件処分に伴う売却益獲得

2)地方金融機関

・役割
融資提供

・メリット
1.融資先、融資残高の拡大
2.融資焦げ付きに伴う担保物件引き上げの煩雑作業軽減
3.担保物件の処分ルート獲得

地方経済の停滞に伴い融資がなかなか増加しない地方金融機関の悩みに対して、リース会社としてもリース会計制度の変更や市場金利上昇に伴う資金調達コストの上昇などの悩みを抱えていることから、こうした提携が進んでいる。

【提携関係が成立する条件と住商アビームの事例】

上記の通り、事業者毎に抱えている悩みが共通している必要は無い * が、異なる悩みを共通の手段を用いて解決出来る場合にアライアンスが成り立つ。

更に異なる経営資源を有していることで役割を分担できることもアライアンス成立の条件であろう。

* もし完全に共通の悩みであれば、競合関係が成立すると言って良いだろう。

例えば当社、住商アビーム自動車総合研究所もコンサルティング会社と総合商社がそれぞれ抱える異なる悩みを協働して解決することを目的に設立された。

コンサルティング会社は複数産業に跨る共通の問題解決手法であるベストプラクティスを有すが、総合商社ほどの実業の広がりに基づくネットワークは有していない。

反面、総合商社はプラットフォームとしての事業ネットワークは有しているものの、顧客への問題解決ノウハウであるベストプラクティスは、コンサルティング会社ほど有していない。

両者の最適な資源を活用することで、初めて自動車関連事業者及び自動車産業に興味を有す金融事業者やその他事業会社向けに、最適なコンサルティングサービスを提供することが出来ている。

【自動車流通事業者における提携の可能性】

そこで同様の提携が潜在的に可能な自動車流通事業者を、例えば自動車ディーラーを基点に 2 点ほどアイデアベースで並べると、以下のようになるだろう。

・自動車ディーラーと整備工場
拠点数削減の動きの中でディーラーとしてはサービス併設拠点を温存する傾向があることは過去 7年の弊社調べでも明らかになっている。
特に板金塗装については次項とも絡むものの、ディーラーのサービス原価における外注費の大きな内訳となっている。
よって、この原価を減らすために近隣エリアにおける整備工場のネットワーク化が更に推進され、その延長形態として事業統合が進む可能性も高い。

板金工場側としても、ディーラーと異なり顧客との接点が薄いという実態もあるため、これを補完する意味で有効なアライアンスと言えよう。

・自動車ディーラーとロードサービス事業者
前項では板金塗装がサービス原価の内訳として賦課される外注費の大きなポーションを締めることから、この原価を削減する手法として、整備工場とのアライアンスの可能性を説いたが、売上高を増加させるという観点からは、事故整備そのものの入庫台数を増やすこが肝要である。
ディーラー 1 事業所当り作業内容別売上高、年間整備入庫平均台数、平均単価の動向(平成 17年度整備白書より)から見てみると、事故整備は以下の通り入庫台数の内訳としては一番小さいものの、単価としては圧倒的に高い単価を獲得している。

車検 定期点検 事故整備
平均単価 74,626 18,278 164,880
入庫台数 677 580 217
売上高* 50,522 10,601 35,779

*千円

即ち、事故整備の入庫台数を 1台促進するほうが、車検・点検の入庫台数を1台増やすよりも、理に適っていると言えよう。

こうしたことを考えれば、現在例えば JAF のみと提携しているディーラーの場合には、複数のロードサービス事業者との提携によりネットワークを広げることにより入庫台数を増加させることも得策と言えよう。

また、ロードサービス事業者にとっても、顧客からのレッカー依頼に対して全国を面で捉えるネットワークは必須であること、更に提携整備工場網の再編に伴う拠点当たり出動回数(稼働率)を上げることに伴う、総額コストの削減メリットもあるだろう。

同様の指摘は、筆者過去コラムの

『ディーラー・企業統合における課題と解決策-数字で見る歴史的変遷と施策案-』

にも触れているのでご興味のある読者は参照願いたい。

【終わりに】

コラムで取り上げたリース会社でも、個別営業や企業統合に伴う規模拡大→管理費抑制に伴う収益性増加の先にある一手をなかなか打てていない事業者も多いことを考えると、個別自動車ディーラーでその先の事業提携までを視野に入れた動きが出来るか?と考える経営者がいてもおかしくない。

しかしトヨタ自動車国内営業部門トップの豊田章男副社長が言う、「自動車販売会社の経営者 3 代目、4 代目の皆さんと再度、自動車販売がベンチャー(事業)であるが如く楽しい世界であるというものを作り上げる」 * というコメントにあるように、事業を推進していく為に外部のリソースを積極的に活用していくことが本当の(楽しい)経営であるのではないだろうか?

*(出典:日刊自動車新’07年 7月 26日号)

<長谷川 博史>