米Business 2.0 誌、’05年 1 ・ 2月号の「他の追従を許さ…

◆米Business 2.0 誌、’05年 1 ・ 2月号の「他の追従を許さないスマート(頭の良い)企業」特集で、トヨタがSmartest Company(最も頭の良い企業)

<Business 2.0誌 2005年1・2月号記事>
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英語でしか発刊されていない海外の雑誌で取り上げられる最新の記事の内容を日本語で解説・海外での最新ビジネストレンドを分かり易くお届けするコーナーです。

第4回 Business 2.0誌 January/February, 2005
“The Smartest Company of the Year, Toyota, “Andrew Tilin”

このコラムで Business2.0 を紹介するのは 4 回目になるが、今一度米国における Business2.0 の位置付けについて紹介したい。同誌は、米国でビジネスと IT のコラボレーションを模索・新しいビジネスモデルや技術を中心に紹介している先進的な雑誌である。

【記事の骨子】

同特集は、2005年に Smart (頭の良い)手を打った企業を複数している。
例えば、以下 3 つの事例。

1.米マクドナルド
2003年に創業後初の四半期赤字を計上した後、新店舗展開を前年比 8 割減に抑えることでブランド希薄化を防ぎながら、商品ラインナップを集客目的の低価格商品と健康志向の高価格商品のコンビネーションにするなどで店舗当りの売上を 10 %増、株価を 167 %上昇させた

2.P&G
歯磨き粉の Crest の用途を口臭予防や黄ばみ落とし剤へと拡大したことなどにより、510 億ドル(5 兆円超)の売上を年間 19 %も増加させた

3.アップルコンピューター
言わずもがなですが、iPod (アイポッド)と音楽配信サイトの iTune Music Store (アイチューン)の成功。

これら「頭の良い企業」の中で、Business 2.0 誌が Smartest (最も頭の良い)としたのが、トヨタである。記事では、トヨタの Smart な理由として以下の 4 つを挙げている。

1.ブランド戦略
米国における Y 世代向けブランドである Scion の bB、イストに続く第 3 弾の商品である”tC”の導入時商品展示の場所としてファッション店やレコードショップ、カフェ・パブなどを選択。3 モデル合計で 2004年は 10 万台強の販売を記録。10 万台は Y 世代向け競合である BMW のミニとホンダ Elementの合計販売台数と並ぶ。全く新しいブランドによる新しい売り方(広告に懐疑的な世代に対する、経験重視の売り方)を実施することにより、トヨタブランドとのカニバリゼーションをさせないで Scion ブランドそのものが成長している(Scion 購入者の 85 %は過去トヨタを購入していないユーザー)。
因みに、Scion ブランドの平均購入車年齢は 35 歳。Toyota ブランドは 50歳、Lexus ブランドは 55 歳。

2.地域特性の反映
トヨタ家に言い伝えられている言葉に、「良いものを作るには、現場を経験しろ」というものがある。(日本語が英語に訳されたものを邦訳しているため、正確ではないかもしれません・悪しからず)ミニバンの 04年式 Siennaのチーフエンジニアは自らハンドルを握ってプエルトリコ、ハワイ、バージンアイランドを含め、北米大陸を 5 回横断。ニューメキシコ州のサンタフェでは狭いダウンタウンの道で回転半径を狭める必要性を、小石が散乱しているアラスカの高速道路では四輪駆動の必要性を、メキシコ湾沿いやミシシッピ川での強い日差しに巻き取り式日除けシートの必要性を痛感。
これら細かな地域毎のニーズを巧みに吸い取った結果、04年式 Sienna は 1-11月で前年比売上 60 %増とミニバン市場で Dodge Caravan に次いで 2 位となった。

3.他社ニッチによる失敗の学習・革新の踏襲
米国で初めて発売されたハイブリッド車であるホンダインサイト。(日本でも必ずしもヒットしているとは言えないが)米国でも車内スペースが狭く実質 2 シーターであることなどから、苦戦を強いられた(99年から 2004年の5年間で 13 千台の販売)。その後、シビックハイブリッドも導入したものの、今度は見た目がガソリン車と全く変わらないことなどから、顧客の支持を得るには至らず。
2000年にトヨタが米国に導入した初代プリウスもトランクスペースの不足や不十分な加速性能などから当初はもたついたものの、2004年の 2 代目プリウスに至り、室内スペースの確保やパワー 5 割増のモーター導入など細かな改善を加えたこともあり一大ヒットとなった。
他社と自社の失敗に学びながらも自らが革新を起こしていく姿勢について書かれている。

4.企業価値の輸出
カナダオンタリオ州のレクサス工場では、製造現場にも関わらずラグジャリーな家具などが並べられている。これらは、13年のトヨタ車製造経験を持つトヨタカナダの社長 Ray Tanguay 氏が全てのレクサス工場を視察したうえで、「工場での労働者に顧客がレクサスブランドに求めるものを思い出させる」ものとして導入。
これに加えて、工場ラインでコンピューターが不良を探知したことに対してラインの人間が 15分以内に対応しなかった場合は、上司の Blackberry (情報通信端末)に自動的に連絡が入る仕組みや、全ての製造プロセスにおける三重チェックの仕組み、木製ステアリングホイールを納入している部品サプライヤーに対してピアノ製造業者から表面艶出し加工を学ぶよう誘導するなど、自己規律を持ちながら向上していく工場となっており、2004年 4月の JDパワー社による品質調査では日本製のレクサスとの間の品質差は非常に小さい、という結果が出ている。
これらは全てトヨタ流のやり方の世界的レベルでの最適化に他ならない。

【生産改善やカンバン方式ではない】
上記の通り、トヨタを良いとしている理由は決して生産領域でのコストダウンの領域ではなく、寧ろ創造的な付加価値提供に伴う収益アップの領域である。確かに、別枠では「トヨタの知恵」と題して有名な「乾いたタオルを絞る」といった事例も紹介されているものの、具体例が掲げられているのはブランディングと現場主義(開発の現場化)、他社ニッチの模倣と革新、更には企業文化である「トヨタウェイ」の輸出といった領域である。

【行動・改善・繰り返し】
実は、上の Smart な理由として 5 番目に挙げられているものがある。それは、張富士夫前社長とのインタビューで繰り広げられる「頭で良いアイデアを考えるだけでなく、行動に移す・実行するということ」ということだ。ここではじめて生産改善における無駄ムラ取りといった事例が挙げられているが、こうした「結果を出す」為の「行動」こそが全ての鍵であり、それを継続的に少しずつ良いものに仕立て上げることが重要であるとして、実際に手を汚して・動かすといった作業が伴わなければならない、と結んでいる。

我田引水ではあるが、丁度先々週のコラムの結びで「経営」について「経営が「絶えざる行動」である以上、重要なのは「アクションを起こすこと」であり、企画したり、計画化したりといったことは重要だが、それらに基づく自らの「行動」こそが、経営そのものであり、全ての原点である」と述べさせて戴いた。

https://www.sc-abeam.com/mailmagazine/hase/hase0051.html

Smart (頭の良い)とは、頭の中だけで捏ね繰り回したり、社内の仕組みを弄ったりすることでは達成されない。ビジネス社会では「行動」こそが唯一 Smart に繋がる、というのを忘れてはならないということを、「米雑誌」という普段と異なる視点を通じても改めて確認出来たような気がする。

<長谷川 博史>