三菱自動車、日産にトップ派遣を要請、日産は返答を保留

三菱自動車と、三菱グループ3社(三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行)の首脳は11日夜に都内のホテルで会談し、2000億円規模の増資引き受けなどに向け、大詰めの協議を行ったが、最終合意は持ち越された。

5月の再建計画がわずか半年で見直しを余儀なくされたことに対し、現経営陣の責任を追及する意見が浮上。提携を協議中の日産に対し、新たなCEOかCOOとなる経営トップの人材の派遣要請を開始した。カルロス・ゴーン社長のもとで業績をV字回復させた日産の実績を受け、市場の信任を得たい考え

日産側は、提携は軽自動車事業など限定的なもので、大規模な資本提携などに応じる意思はない模様。その為、株主権をバックにしない経営トップを派遣しても、指導力を発揮するのは困難とみられ、判断を留保している。

三菱自動車では増資問題が決着し次第、17日にも臨時役員会を開き、新再建計画を発表する方針だが、日産から経営トップを招く事については、三菱グループ内に反対意見もあり、盛り込まれるかは微妙な情勢。

<2004年12月12日(号外) 掲載記事>
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今月中旬発表予定の事業再生計画の具体策を来年 1月末に延期した三菱自動車を取り巻く動きが、一段と激しくなっている。 残念ながら当初設定した再建計画の見直しを余儀なくされている中、状況を打開する策として、軽自動車領域における提携や、海外メーカーとの資本提携の話などが飛び交っている。

【時代は変わった】
こうした状況下、今度はなんと日産に対して経営トップの派遣要請を検討しているというニュースが飛び込んできた。一昔前であればこのような話そのものがありえないのが日本ではなかったか。日本の大企業では大学からの新卒を横並びで採用し、それぞれい社内で経験を積ませながらある程度横並びで昇進させ、そのなかから何らかのクライテリアにより選ばれた人間が経営者へとなっていく、というのが鉄則であった。
今回のニュースとは隔世の感がある。

【個人的には好ましいと考える】
飽くまでも個人的な見解ではあるが、世の中の変化に合わせて今までのやり方そのものを変えていく動きが好きだ。今回の「社長を競合他社から派遣してもらうように依頼する」という話も、個別の三菱 vs.日産という構図の中に秘められている様々な意図は抜きにして考えると、これまでの右肩上がりの需要増に対応するために如何に効率的且つ継続的に各種商品やサービスを供給し続けることが出来るか、というパターンが崩れつつあることを示している。これからは、自社内リソースのみならず外部リソースも積極的に活用しないと生き残れなくなっているのだ。※
※勿論、今回の三菱の場合は緊急避難的手法として行われている。

【キーワードは分散と統合】
企業を英語になおすと Company となるが、compan とは仲間同志が寄り集まるというところにその語源があると言う。即ち、仲間同士が集まり、共通の目的を達成することが company の存在意義である。
しかし現実には規模の拡大に伴い、いつのまにか当初の仲間が有していた共通の志や目的というのは忘れられがちであり、気付いてみると組織構成員の多くがそこでクラブ活動に従事したり、組織の保存のみに注力するといった現象が見られるようになる。
この仲良しグループの集まりと化した抜け殻を、共通の目的を達成するための集団へと改革する為のキーワードは、「分散と統合」であると筆者は考える。即ち、一つの企業内に凝り固まって沈殿しつつある各種経営資源を一旦流動化して、それを一つのベクトルに集中させる形で再構築するということだ。
最近流行りの M&A、投資ファンド、証券化、各種戦略的アライアンス、の全てに共通する概念がこの「分散と集中」である。
例えば M&A は会社の合併・買収であるが、純血な内輪のグループに外の血を注ぎ、2 つの企業を一つの企業グループへと統合することで、新たな価値を目指した組織へと再構築することを目的としていると言っても過言ではないだろう。
投資ファンドにしても、金融事業者などに分散保有されている「おカネ」という経営リソースを、組合形式で設置される共通の器に統合して、個別の企業のエクイティを取得することで価値向上を目指す。
また、証券化に至っては、個別の統合された資産をバックに小口の証券を発行することで資金とリスクを広く投資家に分散させ、大口資産を流動化し、市場での取引対象として、最適なリターンを求めさせる。

【人材の流動化】
上の「分散と統合」の例としてはモノ・カネについては述べてあるものの、今回のニュースにある「ヒト」という最重要な経営資源についてはあまり触れられていない。3 つの経営資源の中で、1 番硬直性が高く(これは日本に限らない・絶対的には勿論欧米のほうが労働市場は流動的であるが、モノ・カネと相対比較した際には、ヒトが最後に動く)保守的なのが「ヒト」だ。
ヒトを流動化する際の考え方については、以前 5月 11日付の当コラム Vol.15 にて筆者の考えるところを述べているので参照頂きたいが、

https://www.sc-abeam.com/mailmagazine/hase/hase0015.html

本来であればヒトという経営資源が機動的に企業内・間で動くことが可能な環境が無ければ、経営におけるベストプラクティスの移転促進と経済の全体最適化には繋がらない。その意味で、企業間でトップが移動するといった動きは、歓迎すべきものであろう。

【三菱の例】
今回の三菱の例は、結果として日産からのトップ派遣が実現するか否かは別にして、以下の 2 つとして解釈することができる。
1)積極的解釈
「戦略的アライアンスに基づく、ヒトの流動化」という手法に積極的に手を打とうとしている所作である。
2)消極的解釈
3 つの経営資源の最後の一つであるヒトにまで手をつけてしまった。

三菱の問題を解決可能なのはあくまでも三菱の社員であるのは以前から繰り返し述べてきているが、

https://www.sc-abeam.com/mailmagazine/hase/hase0013-1.html)

もし、本当に他社から経営トップが派遣されることになった場合、私が社員であれば上の1)として積極的に考えるだろう。いまだかつてない同業他社からのトップ派遣(エクイティを伴わない形での、内国法人からの、という条件は付くが。別の言い方をすれば、日産だってマツダだって、外国人とはいえ既に経験済みであるとも言える)は積極的且つ先進的であり、もし日産が受けるのであれば、これを利用しない手は無い。勿論、日産からすれば本来はエクイティ(カネ)を伴う形でのモノ(商品開発や相互供給など)とヒト(経営者・社員)というコンビネーションが望ましいため、ヒトの派遣(プラス商品面での融通)が単体で実現するかは微妙であろうが。

【終わりに】
人的資源の流動化は今後の日本経済にとって必須の方向性であろうが(欧米並みになるべきとは考えないが、現状よりは労働市場も流動的になるであろう・昨今の M&A の活発化もこの胎動であると考える)一般的に日本企業内部に蓄積されているノウハウは暗黙知として形成され、人的繋がりを以ってして動かす方式となっている。全ての創造の源である人材が流動化して、今までと異なる環境でヒトを含めた各種経営資源を効果的に活用する為には、今後望むと望まざると、暗黙知の一定レベルまでの形式知化が必要になっていくだろう。

<長谷川 博史>