日産、決算期を現在の3月から12月に変更へ。2005年にも決…

◆日産、決算期を現在の3月から12月に変更へ。2005年にも
決算期も国際化へ。仏ルノーや欧州とメキシコの子会社は12月期決算
<2004年03月09日号掲載記事>
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日産が決算期を現在の3月から12月に変更する方針を固めたとの報道で、早ければ今年の株主総会で提案し、05年に移行するとのこと。
記事では、「資本提携先の仏自動車大手ルノーや、欧州とメキシコの日産の海外連結子会社が12月期決算を採用しているため、これらに合わせる」、「外資にあわせて、12月期決算を採用する企業が増えはじめた」と述べており、「03年は世界最大の小売業ウォルマート傘下入りした西友や、スイスの製薬大手ロシュ傘下入りした中外製薬などが12月期決算に変更した」と、変更を「国際化」や「外資系傘下入り」を反映した動きとして捉えている。
しかし、果たしてそれだけが理由であろうか。
例えば、ヤマハでも決算期を12月に変更することを昨年11月に発表しているが、同社のプレスリリースでは「当社主要商品の需要期を踏まえ、年度業績をより適切に管理、開示できる決算期へ変更し、あわせて連結子会社を含めて決算期を統一することで、グローバル企業としての事業展開をより一層推進するため」と説明している。
即ち、ヤマハのプレスリリースでは
1)主要商品の需要期を考慮して、年次業績をより適切に管理、開示すること
2)グローバル企業として、子会社などの決算期を統一することの2つを変更の理由として述べている。
2)は今回の日産の決算期変更に関わる報道で述べられているコメントの趣旨を表すが、1)についてはどうであろう。
自動車メーカーの業績は、主に何で左右されるか。
それこそさまざまな要因が考えられるが、最大の要因は「クルマが売れるか」という点であるのは間違い無い。
現在の自動車メーカーの業績好調は米国市場での販売好調が最大の要因ではあるが、単一市場として世界で第2位自動車市場である国内市場でのクルマの売れ行きも、依然大きな要因である。
その国内市場での自動車販売(登録)が圧倒的に多い月が「3月」である。
社団法人日本自動車販売協会連合会が毎月発表している新車登録台数の統計資料に基づき、過去3年間の登録台数の平均を月別に算出すると、以下の通りとなる:
(単位:台)
1月  254,388  2月  362,864
3月  564,445  4月  262,169
5月  288,393  6月  347,781
7月  376,073  8月  251,333
9月  387,949  10月  306,923
11月  317,368  12月  297,798
登録の一番多い3月(564,445台)は一番少ない8月(251,333台)の2倍以上(225%)の台数。また、3月単月の販売台数は、年度通じての総販売台数の実に15%にも達する。
3月末決算企業の売上の15%が最終月である3月に計上される*という状態を以ってして業績管理を行うよりも、決算期を12月末に変更し、3月の台数を予め業績に織り込むことで、株主をはじめとするステークホルダーに対する業績予想や結果の開示をより迅速且つ正確に行う、というのは一つの合理的な考え方であろう。
*1.日別の統計が存在しないため詳細は分からないが、更にかなりの台数が期末の数日に集中しているであろうことは想像できる。
*2.前述の通り、実際には輸出やその他売上も存在する。
但しこの考え方は、鶏と卵の議論で、そもそも販売(登録)が3月末に増加・集中する理由は、期末に売上を計上する為にメーカーとして販売促進ドライブを掛けている結果とも言えることから、仮に決算期を12月に変更したとしても同様の販売促進ドライブが12月に単純にシフトすれば、変更に伴う効果も減殺する。
しかし現実的には、3月~4月頭は学校や職場でも人が入れ替わるなど物理的なクルマの実需としても上向く季節であること、他社や販売先のディーラーなどが引き続き3月末決算であること、などを考慮すると、メーカーが12月末への決算期の変更をしたとしても、3月末に販売が伸びる傾向は一部残ると考えられ、仮に供給側からの販売ドライブが一部なりとも12月に移動したとしても、業績変動の平準化はある程度期待できると考える。
また蛇足ではあるが、車両の供給を受けるディーラー・販売店側からすれば、メーカー側での決算期変更だけでなく、メーカーからの車両販売促進費(インセンティブ)プログラムのスケジュールの変更が行われるか否か(3月から12月にピークが変更されるか否か)を見極めることが、本件の自社経営方針への影響度を見極める重要な指標になるであろう。

<長谷川 博史>