勝手にホームページ診断 (最終回)  『いいホームページとは何か?』

自動車の販売・マーケティング活動におけるホームページの重要性は今後、更に高まっていくことが予想されます。

SE のキャリアを経て、現在は自動車好きの中小企業診断士、Web コンサルタントとして活躍する遠藤康浩が、その商品の持つ特徴や魅力が適切に消費者にコミュニケーションされているか、という視点から車種別のホームページを診断していくコーナーです。

【筆者紹介】
中小企業診断士。住商アビーム自動車総合研究所アドバイザー。(株)NTT-ATテクノコミュニケーションズでSEとして勤務後、経営コンサルタントとして独立開業。現在、中小企業向けホームページのコンサルティングを中心に活動。

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最終回 『いいホームページとは何か?』

約半年にわたり連載させていただきた『勝手にホームページ診断』も今回で最終回となりました。これまでご愛読いただきました皆様、ありがとうございました。

私なりにホームページというものに対する信念をもって、これまで色々なクルマのホームページについてコメントしてきましたが、今回はその総まとめをしたいと思います。

実際にクルマの販売につながるホームページにするためにはどのような点に注意すればよいのかを、私なりの観点でまとめていきたいと思います。

【イメージの連続性】

多くのホームページを見てきましたが、以外にテレビCMとホームページが連動していないケースが目につきました。おそらくはテレビCMとホームページで担当している部署が違う、あるいは広告代理店が違うなどの社内的な要因があると思うのですが、消費者の立場からすると、テレビCMでうけた印象と異なるホームページが出てくるとイメージが不連続になってしまい、戸惑いを覚えてしまうでしょう。

巨額のコストを費やしてテレビCMを放映して、せっかく消費者の心にイメージが出来上がったのに、それをホームページが壊してしまうのではCM効果は半減してしまいます。芸能人を活用している場合などは、契約の関係でホームページに写真を載せられないというケースもあるのでしょうが、色やデザインなどでイメージの連続性を保つことは可能なはずです。

テレビCMとホームページで相乗効果を出したいのであれば、まずは入り口の部分でイメージを連続させて見る人に戸惑いを与えないことが必要になります。

【「誰に」「どんな情報を」「どんな形で」】

ホームページには「情報提供」という大きな役割があります。

テレビCMや折り込みチラシでは伝えきれない細かな情報もホームページであれば伝えることができます。しかし、「誰に」「どんな情報を」「どんな形で」ということをあまり考えていないホームページも見受けられました。

例えば若い人がターゲットになっているクルマであれば、現金一括でクルマを購入するケースはあまりないでしょう。だとすれば「オートローンの案内」や「残価設定リースの案内」などが目立つ箇所にあった方がいいでしょう。

輸入車であれば、維持やメンテナンスに関することについて知りたがる人が多いはずです。そうすれば「3年間無料保証」や「ディーラーの所在地一覧」が見やすい場所にあるべきでしょう。

そのクルマのターゲットが何を知りたがっているのかを考えれば、おのずとコンテンツの優先順位が決まってくるはずです。

【ホームページの役割をはっきりさせる】

ホームページの役割は、テレビCMや折り込みチラシで知ったクルマに対する情報を詳しく提供することですが、もう一つ大事なことは実際に購入に向けたアクションを起こしてもらうことです。

具体的には資料請求、試乗申し込み、オンライン見積もりなどのいわば「購買アクション喚起コンテンツ」です。

たいていのホームページはこれらの仕組みを備えていますが、そのコンテンツまで誘導する経路にかなり差がありました。かっこいい写真や動画、スペシャルコンテンツなどももちろん必要なコンテンツだと思いますが、あくまでも最終的にはクルマを購買してもらうことにホームページの存在価値はあります。

だとすればいつでもどこからでも「購買アクション喚起コンテンツ」へ簡単にアクセスするデザインを最低限行うべきです。

【ユーザーにやさしいホームページを】

ユーザーにとってやさしいホームページというのも重要な視点です。

サイトを開くと延々と強制的にフラッシュの動画が再生される(しかもスキップできない)、いきなり音楽が鳴り始める、自分の見たいコンテンツに直接飛べない(用意された順番通りにしか画面遷移しない)等々、ユーザーにとってやさしくないデザインのホームページはかなりあります。

これらはすべてデザイナーの都合だと私は考えています。

ユーザーは色んな場所で色んな環境で色んなシチュエーションでホームページを見ているのだと言うことを、作る側は忘れてはいけないと思います。

【クルマが売れない時代だからこそ】

国内では新車販売の縮小傾向が止まりません。こんな時代だからこそ、ますますホームページの担う役割は大きくなっていると言えます。

今日では、多くの人がたいていのことを調べる場合にはホームページを活用します。つまりディーラーに行く前に、お客様に接するのがホームページということです。ここで適切な情報提供がされ、購買にむけた最初の一歩を踏み出してもらわないことには、絶対に販売には結びつきません。

ディーラーに行けば、従業員の皆さんは一生懸命接客をして、お客様に満足してもらうように頑張っています。ホームページがその足を引っ張ってしまっては元も子もありません。

クルマに関して言えば、ホームページは黒子の存在です。なぜなら、ホームページから直接クルマが売れるわけではないからです。しかし黒子がしっかりサポートすれば、役者(つまりディーラー)は思い通りの仕事ができるのです。

たかがホームページ、されどホームページです。ホームページに力を入れていないところは、目には見えにくいですが、これからじわじわとボディブローのように効いてくるはずです。

ホームページは、人が介在する前にお客様と接触する重要な接点の一つということを忘れずに、お客様の立場にたったホームページをぜひ目指して欲しいと思います。

<遠藤 康浩>