think drive (11)  『東京モーターショー2007』

新進気鋭のモータージャーナリストで第一線の研究者として自動車業界に携わる長沼要氏が、クルマ社会の技術革新について感じること、考えることを熱い思いで書くコーナーです。

【筆者紹介】

環境負荷低減と走りの両立するクルマを理想とする根っからのクルマ好き。国内カーメーカーで排ガス低減技術の研究開発に従事した後、低公害自動車開発を行う会社の立ち上げに参画した後、独立。現在は水素自動車開発プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトに技術コンサルタントとして関与する、モータージャーナリスト兼研究者。

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第11回 『東京モーターショー2007』

9月のフランクフルトに続き、 10月24日から第40回東京モーターショーが開幕した。世界 5大モーターショーの二つがひと月違いで開催されるのだから、出展者側は本当に大変だったであろう。

さて、読者の皆様は行かれたであろうか?
行かれた方はどのような印象を持たれたであろうか?

今回は、出展車両の紹介というより、モーターショーそのものをフランクフルトショーと比較しながら取り上げてみたい。

フランクフルトモーターショーはとにかく大きいという印象がある。そこで展示面積を比較してみると、フランクフルトが225,000m2、対して東京が44,500m2と、実に約 5倍の大きさとなり、足で歩いたイメージは間違いじゃなかったと分かる。そして展示車両はフランクフルトが1,046台なのに対して東京は520台と約半分。つまり、一台あたりの面積ではフランクフルトが約 2.5倍広く使っていることになる。また出展者はフランクフルトが40カ国からなるのに対して、東京は11カ国と少ないが、これは地域性によるものであろう。

さて来場者はどうだろう。フランクフルトは例年 100万人程度という発表があり、東京は150万人程度を見込んでいるという。開催期間はどちらも約2週間とほぼ同じなので、ものすごく単純計算しても来場者/展示面積で比較して東京はフランクフルトの約 7~8倍の人口密度 (?) となり、お目当てのクルマがよく見えないのではないかと、心配になる。

このように展示規模には大きな開きがあるが、どちらも注目のモーターショーであることには間違いなく、事実日本で約150万人、ドイツで約100万人という来場者を考えると、クルマに興味がなくなった、といわれて久しい昨今だが、まだまだクルマに対する興味はあるのだと確信する。

では肝心のショー内容について比較してみようと思う。今年の内容においては残念ながらフランクフルトが優れていたと感じる。もちろん展示車両そのものは両ショー、どちらも引けを取らない内容になっているが、ショー全体の構成やコンセプトの一体感という点にフランクフルトが優れていたと感じる。特にドイツメーカーのAUDI, VW, M.Benz, BMW各社は “CO2 emission”を合い言葉に展示構成がされていた。

M.Benzは何年に何を出し、CO2 排出をこのように下げていく!という提案とも言える車両展示構成をしていたし、BMWは全車両の Cピラー部分に燃費/CO2排出量を大きなステッカーで表示するなどして統一感をだしていた。また、VW、 AUDI もエンジンの将来像や、ハイブリッドシステムに対する開発もアピールしていた。

フランスやイタリアの小型車メーカーを除いてほぼ達成不可能と言われている2008年140g/km自主規制に対する責任の感じ方なのか、2012年130g/kmというEC規制に対しては是が非でも達成するという意気込みが感じられた。ハイブリッド技術では先進的なイメージを持つ日本車だが、残念ながらこの意気込みには勝てていなかったと思われる。

東京モーターショーも、電気自動車を中心として小型・軽量化へ向かうクルマが多数展示され、もちろん CO2排出低減を目指す方向性はあるのだが、統一感のある意気込みが感じるとこまでは至っていない。もっとも、シティコミューター的なコンセプト車両展示が多く、先週号の本條氏の言葉をかりるとそれらはほとんどが台形型デザインだが、現在使用/所有しているクルマの延長線上に乗らないクルマだからかもしれない。

ちなみに、今回のショーには昨日までで計 3回行き、うち一回は一般公開日の日曜日だった。混雑は想定していたのだが、高速の降り口は「うそでしょ?」というくらい前から出口への渋滞が始まり、駐車場は会場から数km離れたところ。当然会場内は人ごみで大混雑、ほとんど全てのブースでお目当てのクルマをみるための長蛇の列ができていた。繰り返しになるがクルマはまだまだ人気者であり、魅力的なクルマを作れば需要は必ずあると思う。

日産GT-Rのような高出力高性能車への人気もあったが、ホンダのプヨや日産のピボ2のような未来のシティーコミューターへの人気もあり、来場者の感心も多様化していることが伺えた。

最後に先の計算通りに高かった人口密度 (?) であるが、主催者、出展者の皆様へは、混雑緩和への工夫を期待したい。

<長沼 要>