AYAの徒然草(63)  『恋のつぼみ』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第63回 『恋のつぼみ』

先日、夜中に友達から「件名:みぃ~ちゃった!」という携帯メールが来たので開けてみると、「本日、彩ちゃんのデートを銀座で目撃!!いつから彼ができたの?背が高くてとてもステキな彼じゃない?」という内容でした。「『本日』って???あー、あの人のことね。」と私は一応、身に覚えはありました。でも、思わず「街中で私を見かけたなら声くらい掛けてよね。遠くから見ているなんて悪趣味よ。」とちょっと苛立ちながら返事を打ってしまいました。

私の友達が目撃した私のデートの相手は、実は「彼氏」ではなく、昔から仲の良い男友達の一人なんです。その日はその男友達から、「ちょっと相談に乗って欲しいことがあるんだけど・・・」というメールが来て、急遽銀座で落ち合って二人でご飯を食べに行きました。
彼は、身長 190cm の長身で、細身で足も長く、その上顔もとても小さいので、いわゆるモデル体型なんです。一般的にはカッコイイと言われるタイプの男性だと思います。そんなカッコイイ男性と一緒に街を歩いていれば、すれ違う女性からの視線を感じることも多いのです。それに、きっと目立つだろうから、友達から目撃される率も高いのかもしれないと思ったら、私の苛立ちも少しは収まってきました。

そのモデル体型の彼とは、友達になるくらいですから、異性ですがとても気が合うんです。価値観もとても似ています。その上、見た目もカッコイイ。「そんな人を友達にしておくなんてもったいない!どうして恋愛感情がわかないの?」とよく友達から言われるのですが、私にとっては彼は友達でしかなく、おそらく彼にとってもそれは同じです。だから、長い間友情が成り立っているんです。
よく、「男女間に友情は成り立つか?」という議論がなされますが、私に限って言えば、成り立ちます。男性であろうと女性であろうと友達は友達で、それ以上でもそれ未満にもなりません。
しかし、最近の私は、「今の私は一体どういう男性に惹かれるんだろう?」、「本当に人を好きになるってどういうことなんだろう???」と自分に問いかけてみても、自分でもよくわからないのです。冷静に考えてみると、気が合ってカッコイイ男性にどうして恋愛感情がわかないのかと、自分でも不思議に思うのです。
私は、以前は、自分と趣味が合う人、価値観の合う人、そして、お互いの仕事の話などを通じて喜びや悩みを共有できる人がいいと思っていました。すなわち、一緒にスキーなどのレジャーが楽しめて、そして、私のいろんな悩みの種を一つずつ一緒に解決してくれる、そんな優しくて頼もしいお兄ちゃん的な存在の人がいいと思っていました。

それが次第に、趣味なんか合わなくてもいい、価値観だって多少違っているくらいの方がむしろ刺激があっていいと思うようになりました。それよりも優先されることは、一緒に居て癒される人がいいと思うようになりました。一緒に居るだけでほのぼのできる人です。私の中の母性が覚醒したのか、「守ってあげたい」と思う人がいいと思うようになったのです。それは年上でも年下でもです。男性から「守られたい」のではなく「守ってあげたい」と思ってしまう自分を不思議に思ったくらいです。そして、現在はどういう男性に惹かれるのかと言うと・・・、それが自分でもよくわからなくなっているんです。
私は、読んだ小説やエッセイがあまりにもおもしろくて夢中になってしまうと、その作家の「文才」に惚れ、作家に恋をするなんてことはよくあります。美術館や個展で観た絵に感動して、その画家に恋をすることだってあります。でも、こういうことは、いわゆる「人を好きになる」ということとはちょっと違うんですよね。
そういう話を友達にすると、「人を好きになる時は理屈じゃない」と言います。それに、「文才に惚れて作家に恋をするなんて、ちょっとおかしいよ」とまで言われてしまいます。私から言わせてもらえば、「人を好きになることが理屈ではないからこそ、よくわからないんだけど・・・。それに、文章にはその人の知識や感性、それに性格も滲み出ているものなので、自分を夢中にさせた文章に惹かれて恋することがあったって、おかしくないもん!」と反論したくなります。でも、確かに友達の言う通り、人を好きになると理由なんて後づけになっているような気もするので、理屈じゃないんですよね、きっと。

さて、銀座で会ったその男友達の相談ごととは、「恋愛」のことでした。同じ職場の後輩の女性に勇気がなくて告白できずにいるという話は数ヶ月前にも一度聞いていたのですが、今もその状況が全く変わらない様子でした。いつもの私だったらそんな彼に対し、「もっと自分に自信を持って、結果を恐れずに思い切って告白しちゃえばいいじゃない!!」と言っていたと思うんですが、今回は敢えて止めました。それは、「恋」に悩んでいる期間も、実はそれはそれでとても大切なひとときなのかもしれないなぁと思ったんです。私は彼に、「そうやって恋焦がれている人がいるだけでもあなたは幸せなんだから、今は大いに悩んでおいたらいいのかもしれないよ。その女性への熱い想いを大切にしていれば、いつかそういうチャンスは巡ってくると思うよ」とアドバイスしたんです。

ところで、みなさんは花を育てたことってありますか?花を育てる時って、「きれいな花が咲きますように」と祈りながらお水や肥料をあげ、日当たりも気にして大事に育てますよね。やがて、つぼみが出来てそれがだんだん大きくなってくると、「いつ花が咲くんだろう?」と待ち遠しくなってきます。しかし、まめに観察していても、つぼみはなかなか花を開きません。その間、つぼみは、きれいな花を咲かせるためのエネルギーをたくさん蓄えているんです。それがいっぱいになるとはちきれて、美しい花が一気に咲くんです。つぼみは、花が咲く神秘的な瞬間のために、がんばっているのです。

女性は、恋をするととてもきれいになります。その変化は明らかで、ある日突然、キラキラと輝いて見えるんです。それは、花が咲く瞬間と似ていて、つぼみの間に蓄えていたエネルギーが一気に外に飛び出すような、そんなイメージなんです。
男性だって同じだと思います。好きな女性がいる人といない人では、なんとなく違いがあるように思います。たくましく見えるというか男らしく見えるというか、とにかく違うオーラが見えます。私が相談を受けた彼だって、好きな女性ができてからは、以前の一心不乱に仕事に取り組んでいた時とはまるで別人のように見えるんです。恋の力が彼を優しく思いやりのある人に変化させたんだと思います。そして、私には、今の彼には花が咲く寸前のつぼみのような、そんな秘めた活力があるように見えたんです。
春は新緑の季節です。この季節、街を歩いているだけで新緑の香りがしたり、また、公園をお散歩すれば、たんぽぽやチューリップなどのきれいな花々がつぼみから花を咲かせ、とても活気溢れる季節ですよね。そんな、気候も良く気分もウキウキするような季節には、草花だけではなく、私たちの生活にもなにか新しい出会いや出来事があるような予感がします。だから私も、清々しい季節の中で「恋のつぼみ」を開花させたいなぁと思います。だって、今度は本当のデートの目撃をされて、ステキな彼を友達に自慢したいですからね。そして、きれいな恋の花を咲かせるためにも、つぼみのうちにいろいろと考え悩み、秘めたエネルギーをたくさん蓄えておきたいと思います。さて、みなさんもどうですか?きれいな恋の花、一緒に咲かせてみませんか?

<佐藤 彩子>