くるま解体新書『ブランドマネジメント(3)』 

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 7 弾は、アビームコンサルティング USA シニアマネージャーのクリスチャン・ボッチャーが、ブランドマネジメントについて 5 週に渡って紹介する。今回はその第3回にあたる。

第7弾『ブランドマネジメント(3)』

(日刊工業新聞 2004年11月24日掲載記事)

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自動車メーカーのブランドマネジャーは最近、勝ち組みの消費財メーカーや少数販売スタイルの高級車メーカーに対して強い関心を示している。その理由の一つとして、このようなメーカーがマス市場の中のニッチ市場を見極め、その中で自社ブランドをたくみに管理していることが挙げられる。

特にせん望を集めている自動車ブランドといえば「BMW」「ポルシェ」「レクサス」「ベンツ」などが代表格だ。

マスメーカーの持つ影響力とニッチメーカーの持つブランドイメージの双方を手に入れるには、どうすればよいのか。組織的視点から見れば答えは明白だ。ニッチ市場とは、共通する願望や関心事を持つ限られた数の潜在顧客がいる市場である。そこでブランドマネジメント・インフラを構築し、担当製品を個別のブランドのように取り扱い、ごく限られた数の人々だけにアピールしているかのように見せながら、顧客に提供することが重要だ。

現在、乗用車もトラックも多種多様な車種があり、自動車業界は豊富な選択肢を消費者に提供している一方で、大量生産される車種もある。どの自動車セグメントにおいても、その中核を占めるものはかつてのような販売台数を持たない。ブランドマネジメントの導入が進むにつれ、自動車市場は、マス市場から膨大な数のニッチ市場の集合体へと変化しようとしている。そのため自動車メーカーは、ニッチ企業の意識、行動、市場戦略などを採らざるをえなくなっているのだ。

例えば、「シボレー」や「日産」、「フォルクスワーゲン」は、自分たちをマスメーカーというより、ニッチ製品群を持つ組織として位置付け、ブランドマネジャーたちは担当車種をニッチ製品として管理している。そのブランドが累積販売目標を達成できるだけの規模を持つニッチ市場に対してアピールする限り、このようなビジネスは成立する。

商品を訴求するためには、担当ブランドの差別化を果たすだけの十分なブランドイメージづくりが必要だ。対象となるニッチ市場を知り、そこに到達するための手段を得て、強力なバリュープロポジション(価値提案)を示さなくてはならない。BMW のようにニッチ市場で成功している会社に関心が集まるのは当然だ。

消費者は、自分のライフスタイルに適しているかを基準に自動車ブランドを選ぶ。垂直構造を持つ製品マーケティングと異なり、ライフスタイルというコンテキスト(前後関係)は水平構造を持っており、ブランドマーケティングの本質を成す。

ブランド担当者には、ターゲットユーザーのニーズや、彼らにアピールするコンテキストブランド戦略を理解することが求められている。これが、自動車業界がブランドマネジメントに関して採用している一つの方向性であり、ブランドマネジメントが自動車産業界を導く方向でもある。

< クリスチャン・ボッチャー>