デザインが環境技術を普及させる?

◆ハイブリッド量販車、「イメージ重視の段階は終わり」、ビジネス面で勝負ホンダが思い切った価格戦略。新型インサイトの価格は大衆車カローラ並?

<2009年01月28日号掲載記事>

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【ホンダ「インサイト」デビュー】

今週 6日(金)から、いよいよホンダの新型ハイブリッド車(HEV)「インサイト」が発売になる。一番安いグレードは 180 万円台からという低価格が大きな話題を呼んでいる。機能面でも、5 ナンバーサイズのボディに、実用的な 5人乗りの室内、大きめの荷室を備え、低燃費運転を支援するエコ・アシスト・システムを搭載し、30km/L を超える低燃費を実現している。燃費志向が高まる個人ユーザーだけでなく、環境対策をアピールしたい法人ユーザーへの販売も大きく期待されている。

デザイン面では、フロントマスクは最近のホンダ車らしい形状になっているものの、全体的なボディ形状は、失礼ながらプリウスそっくりのシルエットになっている。燃費追求のために、空気抵抗を考えての結果とも言えるかもしれないが、それだけではないと考える。今回は、このデザインについて考えてみたい。

【ハイブリッド車らしいデザイン】

HEV を世に普及させたという点で、トヨタのプリウスの功績は大きい。1997年に HEV 専用モデルとして発売されたプリウスは、10年かけて世界で累計販売台数 100 万台を突破し、今や HEV の代名詞としての地位を築いた。特に現行型の二代目プリウスは、誰が見てもプリウスとわかる独特のシルエットを武器に、大きく販売を伸ばしてきた。

対するホンダの HEV の主力モデルであるシビックハイブリッドは、プリウスに対抗できる燃費性能や価格帯に加え、プリウス以上に広い室内空間や使い勝手を装備しながらも、販売面ではプリウスに及ばなかった。ガソリンエンジンを搭載したシビックと同じ形状であったがために、環境意識が高いユーザーが「ハイブリッド車に乗っている」という満足感を十分に与えられなかったことが敗因という意見も多い。

今回のインサイトは、このプリウスが形成してきた HEV 車のイメージを利用するという戦略に出たものではないかと考える。他のホンダ車に通じるフロントマスクがホンダ車だということをアピールしながらも、プリウスそっくりのシルエットによって、「このクルマはハイブリッドですよ」というイメージを伝えやすいものになっている。もしかしたら、まだこのクルマを知らない人が見たとしても、プリウスのイメージを想起させられれば、「このクルマも環境に良いクルマなのかな?」と思うかもしれない。

オデッセイ、ステップワゴン、ストリーム、エディックスといったミニバンラインナップに代表されるように、独創的なパッケージの車種開発という点では、ここ数年ホンダが先行して取り組み、成功したモデルは他社も追従するというイメージがあったが、今回については、ホンダが追従する形になったともいえる。

【電気自動車のデザインは?】

一方、同じく環境技術の分野で注目を集めているのが、電気自動車(EV)である。今年、自動車メーカーから EV が発売される予定であり、本格的な普及に向けて、いよいよ動き出す年になりそうである。

今年、EV の発売を予定している富士重工、三菱自工は、ともに既存の軽自動車をベースにしたものの発売を予定している。既存車両をベースにする以上、多少外観等に工夫を加えるとしても、誰もが一目で EV とわかるものにできるかといえば、限界があるだろう。
一方で、EV は HEV と異なり、エンジン等も積んでいないので、EV 専用の車両を一から設計するとなれば、パッケージの自由度は大きいはずであり、ボディデザインも大きく変わるかもしれない。将来的にインホイールモーター(各ホイール内にモーターを装備し、駆動する技術)や、バイワイヤ技術(各種運転操作を電気的に伝達・制御する技術)が実現すれば、その自由度は更に高まるはずである。

市場、特に個人消費者への普及を考える上で、EV らしいデザインを誰がどのようなモデルで確立するか、今後大きなキーポイントになるであろう。HEV 同様に、EV 専用モデルが発売されるようになる段階で先行するメーカーが、前述のプリウスのように、業界のデファクトスタンダードとなるシルエットを確立する可能性があるのではないかと考える。

【デザインが環境技術を普及させる?】

環境意識が高まりつつあるとはいえ、クリーンエネルギー車の購買者が持つ購入動機が、必ずしも燃費や環境負荷を低減させることだけではないのが現実であろう。環境貢献をアピールしたい法人ユーザーとしても、環境意識が高いことを自己表現して満足感を得たい個人ユーザーにとっても、このクルマが環境に優しいクルマであることが一目でわかるデザインは、環境性能そのものと同じくらい重要な購買動機となるのではなかろうか。

つまり、こうしたデザインの確立が、クリーンエネルギー車の普及を加速させるものになると考える。1台限りの低公害車を作っても意味がない。普及させてこそ、自動車業界として環境負荷を低減させることができるはずなのだから。

<本條 聡>