中国フラッシュニュース(13)『苦境に陥るFIAT-南京汽車』

アップダウンを繰り返しながらも、今後数年以内に日本を上回るとされる中国自動車市場。

住商アビーム自動車総研の提携先であり、中国自動車業界に精通したコンサルティング会社オートビジョン有限公司の総経理である張浩群が、中国自動車業界のホットな話題をお伝えするコーナーです。

第13回『苦境に陥るFIAT-南京汽車』
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FIATが中国事業で苦境に陥っている。

南京 FIAT (FIAT と南京汽車の合弁企業)は年間 10 万台(月間 8,300台程度)の生産能力を有しているものの、8月の自動車販売台数は 1,816台であり、生産台数にいたってはわずか 600台に留まっている。

そのため、親会社である南京汽車の業績も激しく落ち込み、2004年の大幅赤字は避けられない状況にある。9月に、筆者が江蘇省政府へヒアリングを行った際、担当者は南京 FIAT への失望感を隠さず、今後は、フォード・マツダ工場へ期待を寄せている様子であった。

南京FIATの苦戦の原因は幾つか考えられる。

「商品投入の遅れ」
2001年、FIAT は Palio を投入した。当時、市場ではエコノミーカーセグメントがほぼ空白の状態であったため、Palio が順調な売行きを見せ、2003年までは好調さを保っていた。しかしその後、他社から POLO、Golf、FIT などが続々投入されたにもかかわらず、後継車種の投入が遅れたことは FIAT にとって致命的であった。

「マーケティング戦略の失敗」
2003年以降、販売低下に伴い、南京 FIAT は頻繁にマーケティングの総責任者を変えたが、かえってマーケティング戦略の混乱を招いたと言われる。とりわけ厳しく指摘されているのは、激しい値引きなど販促戦略へ走り、ブランドイメージ構築への努力が停滞していたことである。例えば、上海 F1 の際には、本来傘下のフェラーリを利用し、FIAT のブランドイメージをアピールするチャンスであったにも関わらず、FIAT本社側と南京 FIAT との間でうまく連携が取れず、チャンスを逃してしまった。

今後 1、2年、中国の自動車市場は厳しい局面が続くと予想されており、一旦競争から脱落した南京 FIAT にとっては、前途多難な状況と言えるかもしれない。

<張 浩群>