ITS 社会~付加価値を提供する情報サービスへの期待

◆国交省、道路の走りやすさを色で表現!「走りやすさマップ」全国展開へ

実際の道路幅やカーブの大きさといった道路構造上の走りやすさをランク別に色分け。現地の道路事情に詳しくない観光ドライバーへの情報提供を行うと共に、道路網の整備状況を把握し、整備計画への活用を図る目的。

<2005年 11月 25日号掲載記事>

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通常の地図は、道路を国道や県道といった「道路の種類」で色識別しているが、実際の道路ユーザー(ドライバー)にとっては、道路の種類より、むしろ道路幅やカーブの大きさ、勾配の緩急といった「実際の道路の状態や走りやすさ」の情報が重要となる。(特に観光で行く山間部では険しい道も多く、思わず苦労された方も多いのではないだろうか。)

そこで、ドライバーの視点に立って、現地の道路事情に詳しくない観光ドライバーへの情報提供や、道路網の整備状況を把握し、それを分析評価することで、整備計画への活用を図ることを目的として、作られたのが「走りやすさマップ」である。

対象は国道や県道に加え、大規模林道、広域農道、主要な市町村道等の道路等を網羅しており、渋滞情報、事故危険箇所、通行規制区間、交差点間距離・通行時間、道の駅等の関連情報も掲載している。

この「走りやすさマップ」では、実際の道路構造(道路幅の広さ、カーブの大きさ・多さ、歩道の有無、すれ違いが可能か等)を調査し、6 つのランクで評価し、色分けをしている。また、車線数についても線の太さと線の数で表現されており、ドライバーの道選択の一助となる。

道路構造の分析には、実際の走行状況下での走りやすさを判断するために、プローブカー調査を実施して分析を行っている。

プローブカーとは、飛行機に搭載されているフライトレコーダーの自動車版で自動車に搭載した GPS 機器が、人工衛星から自分の位置を瞬時に把握。走行速度や車体にかかる重力を観測できるものである。

最新鋭の技術を用いた調査により、試験エリアとして先行展開している九州地区で好評を博しており、「走りやすさ評価」と「実際の走行した感想」を比較したアンケートでは約 9 割が大体一致していると回答している。

今回の取り組みの結果を受けて、全国の都市部・郊外部の 17 地域をモデル地域とした「走りやすさマップ」を来年 2月迄に作成する予定である。ちなみに関東では都市部に横浜市、地方部に山梨県が予定されている。

【九州地区におけるもう一つの取り組み】

また九州地区では、「走りやすさマップ」への取り組みに加えて、同じく国交省が、道路沿いの駐車場から徒歩で行ける、優れた景観が撮影できる場所をインターネットのホームページと標識で紹介する事業も行っている。

今まで無名な(隠れた)観光資源の活用や、脇見運転による事故防止等が目的であるが、この事業は道路利用者からの情報を活用しているのが特徴である。

本事業は、「写真を撮るパーキング」を略した「とるぱ」が愛称となっているが、国土交通省は 21日、平成 18年度から全国で実施する方針を固めている。

目的地まで早く、快適に、安全に到着することは大切なことであるが、途中に寄り道できることはクルマで移動するメリットの 1 つであり、このような地域情報がドライバーにとっては貴重な情報となることも多いのではないだろうか。

【ITS により提供される情報の進化】

現在、ドライバーに情報を提供する手段は ITS (Intelligent Transport Systems)を活用したものが主流になりつつある。

ITS は、道路交通と通信の連携により、安全性、円滑性、快適性及び環境面で飛躍的に進歩した次世代の交通システムを構築するものであり、ナビゲーション、VICS、ETC、プリ・クラッシュ・セーフティ等が既に提供されているサービス例である。

ITS の推進スケジュールによると、第 1 フェーズの ITS の導入期は終了し、2005年から第 2 フェーズに移行している。

第 2 フェーズでは、ITS 利用者に提供される情報内容が目的地のサービスに関する情報、公共交通情報など更に拡充され、今後、一層の利用者サービスの向上が図られる予定である。

例えば旅行を計画する際には、利用者が希望する目的地を絞込み、旅行日程を移動時間、移動経路等を含めスケジュール化してくれるサービスも想定され、カーナビゲーションの高度化によるオンデマンド化も視野に入っている。

このようにドライバーに提供される情報が進化、増大していく中で、上記で紹介した「走りやすさマップ」や「とるぱ」情報も今後 ITS で提供されるべき候補の一つではないだろうか。

【走りやすさマップがもたらす価値】

「走りやすさマップ」や「とるぱ」情報がドライバーに提供する価値は単に目的地に早く到着することを可能にするものとは、一線を画すことになるだろう。

現状のサービスであるカーナビゲーションは、目的地まで早く行くことを可能とする道案内に過ぎず、地図上で判断されたルートで道案内が決まってしまう。そこには実際の道を走った際の走りやすさや爽快感、またはドライバーが寄り道したいスポットなどは考慮されない。

実際の道の状況や寄り道スポットといった情報がカーナビに加わることで、ドライバー個々が運転の目的に応じて道を選択することが可能となり、より運転は有意義なものとなるだろう。そうなってはじめて情報は付加価値を生んだといえる。

また、現在の画一的な道案内に比べて交通が分散化され、交通渋滞の緩和が期待されるといった一石二鳥的効果も期待できるかもしれない。

ドライバー個々にとって付加価値の高い情報が ITS によって提供され、運転がより有意義なものになることを 1 人のドライバーとして期待している。

<大谷 信貴>