AYAの徒然草(44)  『裏切りは裏切りでも、心地よい裏切りってな~んだ?』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。
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第44回 『裏切りは裏切りでも、心地よい裏切りってな~んだ?』

今年の春、女優の藤原紀香さんとお笑いタレントの陣内智則さんが結婚しました。出会いはドラマの共演で、それから四ヶ月後にはゴールインというスピード婚でしたよね。爽やかで仲むつまじいとてもステキなカップルだと思います。しかし、ミス日本から芸能界入りした才色兼備の大女優とお笑いタレントの結婚ですから、二人の結婚が発表されて以来、やっかみ半分で世間では色々と言われていました。随分と失礼なことを言うもんだなぁと思いますが、「格差婚」という言葉をこの頃からよく耳にするようにもなりましたよね。

陣内さんは、共演したドラマのスタッフたちと食事をしている時に、みんなのいる前で堂々と紀香さんに自分のメールアドレスを書いたメモを渡しながら、自分の気持ちを打ち明けたそうなんです。二人きりの状況ではなくて、みんながいる前ですよ。すごいと思いませんか?きっと周りにいたスタッフたちは、「おいおい、君がそんな高嶺の花にアタックしたって無駄だよ。」と内心思っていたことでしょう。彼は、後々、紀香さんへのこの最初のアプローチについて、「もちろん、断られて当然だと思っていました。でも、もしも OK してくれたらラッキーじゃないですか?僕に失うものなんて何もなかったんです。」と語っています。とても男らしいですよね。しかし、緊張の余り手も声も震えていたに違いありません。

紀香さんは、きっと、彼のそんな勇気ある行動と、素直な気持ちの表現にほろっときたんだと思います。私も、もしも全く同じ状況で同じことをされたら、その人がたとえ好みのタイプの男性じゃなくても、その瞬間に恋に落ちるかもしれません。だって、大勢の人の前で「恥」をかいたとしたって、その「恥」と引き換えに私の気持ちを射止めたいと思ってくれたんですよね?そんな人には間違いなく誠意を感じ、好印象を持ちます。それに、この人なら絶対に私を守ってくれるに違いないと確信が持てるような気がします。

でも、もしこれが、陣内さんではなく、キムタクこと SMAP の木村拓哉さんのような男性だったらどういう印象を持つでしょうか?木村さんは、今年も、雑誌 anan の「好きな男」ランキングの第 1 位を獲得し、14 連覇を達成しています。そんな、誰が見てもカッコ良く、クールでスマート、そしていかにもモテそうな男性が、陣内さんと全く同じ状況で同じことをやった場合です。

私だったら、おそらくこういう印象を持ちます。「みんなの前で堂々と告白するなんて、この人、よっぽど自分に自信があるのね。絶対に私に断られないとでも思っているんだわ」と。オレに振り向かない女性なんていないんだよ、と自分のカッコ良さをみんなの前で誇示している自信過剰で感じの悪い人という印象を持つのです。実際は、そういう意図がなかったとしてもです。陣内さんとは正反対の最悪の印象です。

こんなふうに、全く同じ行動をとっても、その人のルックスやキャラクターによって人に与える印象は違ってくるんです。その人の外見や良く知っている性格通りの行動だと、「やっぱりね」と思うだけなんですが、それとは異なる行動を垣間見た瞬間はドキっとするものなんです。

陣内さんのように、どちらかと言うと地味で不器用そうに見える男性は(陣内さん、ごめんなさい!)、堂々とした男らしさを強調したアプローチの方が相手をドキっとさせます。一方、キムタクみたいに、カッコ良くていかにもモテそうに見える男性の場合は、控えめでさりげない告白で「シャイな部分もあるんだなぁ」と思わせた方が、相手をドキっとさせるのです。

つまり、「○○なのに、実は△△」というような「意外性」が、人に好印象をもたらすのです。たとえば、女性の場合だと、「アネゴ肌でさばさばしているのに、実は人一倍涙もろい」とか、男性の場合は、「恐そうに見えるのに、実はとっても優しい」とか。いかにもか弱くて泣き虫に見える女性が涙もろくても、それは見た目通りのこととして受け入れてしまうので、涙もろいこと自体がその女性の際立った「魅力」にはならないと思うんです。それよりも、ドライで気の強そうな女性の涙を見た瞬間の方がドキっとしませんか?また、男性の場合も同じです。恐そうに見える男性と、物腰柔らかに見える二人の男性が、同じ優しさを持っていたとします。比較論の問題ですが、その優しさがより際立った「魅力」として感じられるのは、不思議と、恐そうに見える男性の優しさの方なんです。このように、「意外性」とは、相手に「えー!ちょっと違うじゃない!」と思わせるような一種の裏切りなんです。でもそれは、心地よい裏切りなんです。

「意外性」が人に心地よい裏切りをもたらすならば、それは自分の強い味方になってくれるかもしれません。とすると、自分の「意外性」を知っている方が得をするような気がします。しかし、なかなか自分のことを自分自身で客観的に見つめることって難しいですよね。だから、仲の良い信頼できる友達などに、一度、自分はどういう雰囲気を醸し出しているのか、それに対して性格はどうなのかをざっくばらんに話してもらうのも良いかもしれません。自分が思い込んでいる自分とは違う姿が人には映っているかもしれませんから。

また、このような自分の本質的な部分の意外性だけではなく、「好み」の意外性でも相手をドキっとさせることができます。一番身近なもので言えば、服装です。寒色系の服装が多い人が、たまに暖色系の洋服を着てみるだけでも、人をドキっとさせると思うのです。いわゆる「イメチェン」(イメージチェンジ)です。これは、普段と違う色を纏っているというだけで気分転換にもなるので、着ている本人自身にも、何かほかに良い影響がありそうです。

さて、私の「意外性」って何だろう???と、ちょっと考えてみたんです。私は、何の取柄もなく、細かいことは気にしないおおざっぱな性格です。だから、私の周りで起きた小さな出来事や喜び・感動について、独自の思想で、常日頃あれこれと考えているようには見えないと思います。それに、日ごろの行動がアクティブな分、じっと机に向かって文章を書くことが嫌いな人間だと思われているんじゃないかなぁとも思います。こんな私なので、このコラムを書き続けていること自体が、私の一番の「意外性」なのかもしれません。みなさんはどうですか?みなさんは、どんな心地よい裏切りをもたらしていますか?

<佐藤 彩子>