車検有効期間の延長に向け、来年度に見直しへ。政府の総合… 

◆車検有効期間の延長に向け、来年度に見直しへ。政府の総合規制改革会議

政府が今後3年間に取り組む規制改革の具体案をまとめた「規制改革推進3カ年計画」が明らかになった。自家用車の車検有効期間の延長について『自動車の高性能化や国民負担を考えれば「初回3年、2回目以降は2年」の現行基準は厳しすぎる』と指摘し、来年度中に調査するよう提言された。全部で千項目以上にのぼる緩和策の年次目標を明記し、今月にも閣議決定へ
<2004年03月08日号掲載記事>
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日本の自家用自動車の車検制度は、1952年発足以来52年間が経過しているが、この分野での規制緩和は1983年に初回車検の有効期間が2年から3年に延長、1995年に車齢11年超について1年から2年に延長された2回のみとなっている。

自動車の検査及び点検整備を巡っては、従来より整備料金が高い、整備料金の内訳が不明確、整備内容の説明がないなどのユーザーからの不満も高く、国土交通省では、このような事態を重く鑑み、1994年に車輌法の一部改正を行い、自動車の使用者保守管理責任を明確にするとともに自動車の検査、点検整備制度を大幅に見直したのである。

その主な内容は、

(1)定期点検整備の簡素化
・自家用自動車等の6ヶ月点検の廃止
・12ヶ月点検項目を60から26に削減
・24ヶ月点検項目を120から60に削減

(2)自動車検査証の有効期間の延長
・車齢が11年を越える自家用乗用自動車等について、自動車検査証の有効期間を1年から2年に延長

(3)定期点検整備の実施時期(前検査、後整備を可能とした)
・検査を受ける前に行うこととなっていた定期点検整備について、検査の後に行ってもよいこととし、整備の実施時期について、自動車の使用者による選択を可能とした
さらに商用車は、2000年5月より、8トン未満のトラック及びレンタカー (乗用車)について初回車検の有効期間を1年から2年に延長、定期点検整備の簡素化が実施されている。

2003年12月22日に内閣府総合規制改革会議の「規制改革の推進に関する第3次答申-活力ある日本の創造に向けて-」の中でこのように答申されている。自動車の検査制度及び定期点検制度は、例えば自家用乗用車については、現在1世帯あたり1.09台まで普及しており、かつ運転免許保有者数も7,650万人を超えている現状を鑑みれば、一般国民の日常生活に密接にかかわる問題であり、その規制緩和については、安全確保と環境保全の観点からのみならず、国民負担の一層の軽減の観点からも常に見直しを図っていく必要がある。

諸外国の制度に目をむければ、例えば欧州については初回4年(EU指令に基づく最長車検有効期間)としている国もあるなど、他の先進国においても、わが国よりも長い期間設定している国も存在する。

車検・点検整備制度については、従来から車検有効期間の延長等により、相応の規制緩和が進めれられてきているところであるが、特に車検有効期間については、技術の進歩等を踏まえ、国民負担の一層の軽減等の観点から常に見直しを図っていく必要がある。

このため、安全で環境との調和のとれた車社会の実現を目指すという車検・点検整備制度本来の目的を念頭におき、必要なデータを収集の上、安全確保、環境保全、技術進歩の面から有効期間の延長を判断するための調査を平成16年度中に取りまとめ、その結果に基づき速やかに所要の措置を講ずるべきである。なお、その際には、国民に対する説明責任を全うするとともに、十分な透明性を確保するべきはもとよりである。

この文言から内閣府総合規制改革会議の並々ならぬ決意のほどが伺われる。
1995年以降、車検の価格競争が活発化する中、経営の圧迫、後継者問題などで既存の整備事業者が年間500軒のペースで廃業に追い込まれているのは事実である。

また、整備事業の売上の推移は、1994年の6.5兆円をピークに漸減傾向にあり直近では6.2兆円前後である。
しかし、分解整備工場、指定整備工場の基準緩和がなされたことにより、その一方で整備事業への新規参入が増加している。1997年には専門認証工場制度が発足したことで専門認証を取得する事業者も増え、1995年当時よりも工場数で3,000社余も増えているのだ。車検チェーンシステムなどにみられるようにニューサービスの導入も進んでいる。新車販売市場は成熟しているが、自動車の平均使用年数は年々伸長を続け10年を超えるまでになっており、整備機会・補修部品の販売機会は寧ろ増加する可能性もある。

一概に規制緩和=整備事業者にとっての危機とするのはやや一面 的な見方では
なかろうか。
確かに規制緩和の促進は、規制の枠内での事業機会を減らすうえ新規市場参入を促すので既存事業者にとっては脅威には違いない。だが、同時に規制ゆえにアクセスできなかった顧客や手掛けられなかったサービスを取り込むための機会という風に発想を転換してみることも必要であろう。

日本の置かれた社会情勢から規制緩和の流れ自体に抗することはいずれにしても不可能である以上。ヒントはいくつかある。今回の車検・点検整備制度の更なる規制緩和は、
これまで以上に自動車保有者の使用責任を問うものであり、車の安全確保、環境保全に対するユーザーの責任が重くなることを意味している。全てのユーザーがその責任を全うできるだけの知識と時間的余裕を持っているわけではない。

むしろ、自らの自動車保有のどのステージでどんな責任とリスクを負い、どんな作業を行うべきなのかという情報を、その作業を代行してくれる事業者名とサービス内容、コストとともに適切なタイミングで分かりやすく提供してくれる事業者をいっそう求めることになるのではないか。いわゆるCRMである。

こうした対応を取ることのできる事業者であれば、2006年にも実施されるであろう今回の車検・点検整備制度の緩和にも十分存続可能であり、飛躍が期待できるのではないだろうか。

<寺澤 寧史>