VTホールディングス、中古車輸出事業拡大、前期比8割増… 

◆VTホールディングス、中古車輸出事業拡大、前期比8割増の1.5万台輸出へ

2004年3月期はアフリカや中南米など世界113カ国に8138台を輸出。販促費を 増やし、新規輸出国を開拓するほか、仕入れルートも拡大。今秋をめどに 2003年3月に買収し、同事業を手がける子会社「トラスト」の上場も検討へ
<2004年06月22号掲載記事>
——————————————————————————–

ホンダ系有力ディーラーのVTホールディングスは中古車輸出事業を拡大すると表明した。VTホールディングスの子会社で2003年3月に買収した「トラスト」が中古車輸出事業を手がけており、上場の検討も開始していると報道では伝えている。

この「トラスト」は1988年設立(本社;名古屋市、社長;ジェームス・アンソニー氏)で、従業員20人、2004年3月期売上高34億円、経常利益468百万円、純利益282百万円を計上する中古車輸出業界大手企業の一角である。2005年3月期は、前期比で8割増の1.5万台の輸出を計画であるという。

VTホールディングスが強気の計画を立てている中古車輸出市場の現状は、いかなるものであろうか。

中古車輸出市場の概略は、次の5項目の通りである。

1)市場規模
業界団体である日本中古車輸出業協同組合によれば、1997年40万台、2001年60万台、2003年70万台と伸長を続けている。
市場参入している事業者数は、10年前には200社程度だったものが、近年の中古車輸出急増とともに、1,000社ともいわれるまでに拡大している。
この業界には、組合非加盟の企業も多く存在している。また、自動車解体工場入庫した”使用済み自動車”も輸出向けに30-40万台回っているといわれる。これらを、日本中古自動車輸出業共同組合の台数と合わせると、概ね100万台規模であるといわれている。
また、中古車輸出のFOB価格は、平均40万円前後であり中古車輸出業界は推定4,000億円市場となる。

現在、中古車関連マーケットの中では中古車買い取り市場がダイナミックな動きをしているが、大手チェーンの売上合計は約3,000億円である。
意外に感じるかもしれないが、中古車輸出市場は中古車買い取り市場と同等かそれ以上のマーケットに成長している。

2)販売先
中古車輸出の主な仕向け地をみると次のようになっている。

2002年 2003年 単位千台
(1)NZ      160  189
(2)UAE      108  130
(3)ロシア     59   76
(4)UK       33     68
(5)フィリピン 32     44
(6)その他    370  408
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*合計      762  915

*(合計が100万台に達していないのは上述の理由による)

ニュージーランドは、日本の中古車最大の輸出国となっており、年間19万台
にも及んでいる。
UAE(ドバイ)、チリ(イキケ)等はは左ハンドル圏への再輸出向けが多
い。近年は上記の国に加えて南・東アフリカなどアフリカ大陸の伸びが著し
い。

日本の中古車価格は、その品質と比較して非常に割安感があり、現地で販売
されている中古車価格との乖離(現地相場の方が基本的に高価格)が大きいこ
とが、中古車輸出を下支えしているともいえる。

3)仕入先
一般的にこれらの輸出向け中古車は、全国150近くあるオートオークション会
場から調達されるケースが多い。ちなみにトラストでは全国50会場から中古
車を仕入れ在庫販売を行っているという。
最近では、アガスタのようにオークションに出品される前のより鮮度のいい
玉の供給源である、中古車買い取りチェーン、新車ディーラールートを利用
する中古車輸出事業者も出現している。

4)業界構造
中古車輸出事業者は古物商の免許取得だけで開業が可能であり、市場参入障
壁が限りなく低いため、小資本、少人数の零細個人事業主が多い。
日本で居住権を取得しているパキスタン人のブローカーも多いとされる。
小規模事業者による過当競争となっており収益性は余り高くない。
全般として信用力の低いのも事実である。

収益性が余り高くない業界であるが、IPO企業が出始めていることは、注
目すべき動きである。
2003年12月に四日市のアップルインターナショナルが東証マザーズに中古車
輸出業界のトップを切って上場を果たした。
2004年7月には情報販売を標榜するアガスタが同じく東証マザーズへの上場が
決定している。VTホールディングス子会社のトラストも上場の検討段階に
入っているという。

5)ビジネスモデル
ビジネスモデルとしては、次の3つに大別される。
(1)従来は、海外バイヤーの指示のもと、オートオークションや自動車解体
工場で落札、買い付けを行い手数料をもらうという手法。
個人のブローカーなどは、このケースに該当している。
(2)事業規模が比較的大きくなった平和オート、山銀通商などが代表企業と
なるが、自社リスクでオートオークションから輸出向けの車両を一旦自社在
庫として保有し、海外バイヤーに販売する手法。
(3)アガスタが事業モデルとしている一切中古車在庫を持たず、海外の「買い
たい中古車」情報と国内の「売りたい中古車」情報のマッチングを行ってか
ら売買を成立させる手法。

VTホールディングスの目指すビジネスモデルはどの事業モデルとなるので
あろうか。
これまでの「トラスト」は、オートオークションを主体に輸出向け中古車を
仕入れ在庫する(2)のビジネスモデルであった。
VTホールディングスは、自社系列ディーラーでユーザーから下取りした中
古車や取引先ディーラーの中古車仕入れに変更することで、自社の生き玉を
中心とした鮮度のよさを武器に海外バイヤーに情報を配信し、海外顧客を開
拓するという、新しいビジネスモデルを模索していくことになろう。

<寺澤 寧史>