カヤバ工業、タイに4輪車メーカーなど向けエンジニアリン…

◆カヤバ工業、タイに4輪車メーカーなど向けエンジニアリングサービス拠点
100%出資の現地法人を設立する手続中。「KYBテクニカルセンター」

<2004年5月26日号掲載記事>
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カヤバ工業は、タイにおいてエンジニアリングサービスを行なう100%出資の現地法人、KYBテクニカルセンターの設立を決定した。

四輪車メーカー、二輪車メーカーが開発機能を日本からタイを中心とした現地に移管する動きに対応すべく、技術窓口としての拠点を設立し、客先メーカーの技術情報、要求事項の日本カヤバ設計への伝達、及び技術折衝を行なう。また、現地ユーザー要求に適合した緩衝器の提供を可能にするため、実車チューニングテスト、評価も行なうとのこと。

莫大な開発コストのカバー、スケールメリットの享受のため、早くから市場を世界に求めた自動車メーカーにより、自動車業界のグローバル化は進展したが、それは同時に自動車メーカー自身が世界中の様々なマーケット、顧客のニーズに対応していかなければならないということを意味する。

一概に自動車といっても、その価値、受け止め方は各国によって様々であるし、また求められる内装、外装、スペックも異なる。

そのため、自動車メーカーはある程度、市場が成熟してくると開発機能をその地域に移管し、その市場向けに車輌の開発、カスタマイズを進めるのが一般的である。

今回のカヤバ工業のケースは自動車メーカーのASEANに対する開発機能移管の動きを部品レベルでサポートするものと位置付けることができ、またそうすることで自社を競合他社と差別化していく動きともとれるだろう。

一方で、自動車メーカーの元々の海外進出の動機が市場を確保し、スケールメリットを享受することだと考えると、各市場ごとに全くのオリジナルモデルを開発するというわけにはいかず、その意味で共通化とカスタマイゼーションが同時に推し進められることとなる。

ここでいう共通化とはプラットフォームの共通化や使用部品の共通化等が含まれ、いわば、車輌を構成する要素のうち、どこをどの程度、特定市場向けにカスタマイズして、どこをどの程度共通化するかというバランスを取っていく必要があるのである。

こういった事態も踏まえた上で、今後、サプライヤーは、従来のQCDといった要素に加え、戦略的に行動することが必要となるのではないかと思われる。

例えば、先程の議論に則ると、自分達が生産している部品は自動車メーカーから見て特定市場ごとにカスタマイズされるものなのか、それとも共通化されるものなのかということによっても、取るべき戦略、アクションは異なってくる。

前者であれば今回のカヤバ工業のようなアプローチが価値あるものになるであろうし、後者であれば同一部品をグローバルレベルで迅速に供給できるというようなことが価値あるものになるだろう。

また、自動車メーカーが特定市場ごとにカスタマイズは不要だと考えていたと考えていた部品に対し、実はそうではないと提言したり、市場ごとに仕様が異なる部品のみに生産を絞りこむことで、自動車メーカーに対し、付加価値を提供したりと自社のポジショニングを変化させることも戦略的な行動ということができるだろう。

今回は特定市場ごとにカスタマイズが必要とされるもの、そうでないものという視点から論を進めてきたが、要は己を知ること、己の生産している部品の特性を様々な角度から客観的に把握することが今後サプライヤーが効果的な戦略を策定していく上でのキーになるのではないかと思われる。

<秋山 喬>