北米部品メーカー223社の経営陣への調査、日本メーカーへ…

◆北米部品メーカー223社の経営陣への調査、日本メーカーへの信頼度高まる
トヨタが労働関係指数(最高500)でトップの399。ビッグ3はいずれも200以下

<2004年08月09日号掲載記事>
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米コンサルティング会社プラニング・パースペテクティブ(ミシガン州)が部品メーカー 223 社の経営陣に、取引相手としての完成車メーカーについて調査した。このうち信頼関係を示す「労働関係指数」(最高 500)はトヨタ自動車が 399 でトップ。ホンダ、日産自動車の 3 社の指数を合計すると 1077 と1000台に乗った。

一方、ビッグスリーはクライスラーの 183 が最高で、フォード・モーターと最下位に甘んじたゼネラル・モーターズ(GM)の 3 社の指数を合わせても 487 にとどまった。
プラニング社のジョン・ヘンケ社長は、日本車メーカーが部品メーカーと良好な関係を築く努力を続けているのに対し、ビッグスリーは部品メーカーからコスト削減だけを引き出そうとしているためと、この結果を分析している。

信頼度の面で、日系自動車メーカーに対する評価が高い結果となったが、これは勿論、現在日系自動車メーカーの業績が頗る良いという面も当然あると推測されるが、別の要因としては米系自動車メーカーと比べた際の部品メーカー管理の歴史の違いというものも存在するように思われる。

日系自動車メーカーと米系自動車メーカーでは歴史的に、異なる部品メーカー政策や調達政策を採用してきた。日本の場合は長らく系列取引を中心として部品メーカーとの共同体制により、車づくりを進めてきており、自動車メーカーはコーディネーターとして部品メーカー管理の機能も果たしていた。

一方、米国自動車メーカーでは部品は主に内製が中心であり、フォードからビステオンが分離独立したのが 1997年、GM からデルファイが分離独立したのが 1999年とごく最近のことである。また、以降は最適調達の名のもとにコスト等を基準にしたオープンな取引が推進されてきた。

だが、近年の自動車メーカーの世界的な合従連衡の進展により上記の日系、米系という調達方法の違いもそれほど顕著なものではなくなりつつある。日系自動車メーカーでも外資系メーカーと資本関係のある日産、マツダ、三菱等は欧米流の調達方法を採用し、大幅な調達コスト低減に成功した。トヨタ、ホンダも系列を基本としながらもそれに固執することなく、様々な部品メーカーに対し門戸を開く方針を採用している。

但し、歴史的背景もあり、日系自動車メーカーは資本関係を解消しても、依然として取引を行なう部品メーカーに対しては基本的に共存・共栄の精神で臨んでいる傾向が強いように思われる。当然、米系自動車メーカーもそういった精神が欠如しているわけではないだろうが、歴史的に見て日系自動車メーカーのほうが部品メーカー管理において巧みな面があるのではないかと推測される。

今回のニュースとは逆の視点になるが、以前、本メールマガジンを通じて日系自動車メーカーの方向けに部品メーカーに期待することに関し、アンケート調査を行なった。その結果、自動車会社は、部品メーカーに一層の開発力を期待し、単なる取り纏め役としてのシステムサプライヤーではなく、リスク負担できる真のパートナーを必要としている等、今後も車づくりにおいて部品メーカーとの結びつきを強めていく意思を持っていることがわかった。

今回のニュースでは北米の部品メーカーにとって良好な関係を築く努力をしている日系自動車メーカーのほうが信頼性が高いという結果となっているが、日系部品メーカーであろうと北米部品メーカーであろうと、部品メーカーにとって自動車メーカーと良好な関係を構築し、安定取引が確保できるという状況が何より望ましいということは間違いない。
しかし、ここで問題となるのは自動車メーカーが安定取引を行いたいと思うには、そう思わせるための強みを部品メーカーが持つ必要があるということである。単純な資本関係による安定取引が保証されなくなった今、技術、コスト、もしくは長年の取引関係で培った自動車メーカーとの阿吽の呼吸といった顧客に与える価値の重要性が増すだろう。

一方で、自動車メーカーにとっても自動車の全ての部品を自前で製造していない以上、部品メーカーも組み込んだ形で車づくりを考えていく必要があり、どういった形でサプライヤーとの関係を構築していくのか、何によって部品メーカーを引き付けていくのか(車両の大量販売に基づく購買量、ブランド価値の高い車両の販売に基づき部品メーカーに対しても一定のマージンを認める姿勢等)を明確にしていく必要がある。

<秋山 喬>