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コラム

自動車業界が新政権に期待すること

  「自動車業界が新政権に期待すること」をテーマとした以下のアンケー
ト結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=6630

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【新政権の発足】

 昨年 12月 16日に第 46 回衆院選が行われ、自民党が新政権に返り咲き、早
くも 1 ヵ月が経過した。今回の総選挙にて、自民、公明両党が、衆議院で再可
決が可能な 3分の 2 を上回る 325 議席を確保したこともあり、決められない
政治からの脱却が期待される。

 安倍首相が就任してからこの 1 ヵ月で、為替相場は、2010年 6月以来、約
2年 7 ヵ月ぶりの対ドルで 90 円台へ、日経平均株価も約 2年 9 ヵ月ぶりとな
る 1 万 900 円台まで大きく数字を戻している。また、内閣人事には、TPP
(環太平洋戦略的経済連携協定)賛成派を多数据えている。TV の街頭インタビ
ューでは、こうしたトレンドに少し安堵した顔を見せる会社員も見かけた。自
民党/安倍首相の経済対策に期待するところが大きいのであろう。

 国の基幹産業である自動車産業が、今後の事業戦略を描く上で、新政権の政
策や対応に期待するところも大きいと思われる。弊社メルマガ読者に、自動車
業界として特に新政権に期待を寄せる政策や対応についてご意見をお伺いした
ところ、以下のような結果となった。

[新政権に期待すること]

1.自動車取得税・重量税の撤廃                          :34 %

2. 円高是正への対応                                            :30 %

3. TPP等、各種経済連携協定の推進                      :17 %

4. 電力供給の安定化と電気料金上昇抑制に
                向けた取り組み        : 9 %

5.法人税率の引き下げ                                         : 6 %

6. その他                                                             : 4 %
 
 結果として、「円高是正への対応」を押さえて、「自動車取得税・重量税の
撤廃」がトップとなった。次章以降で、この結果に対する解釈について、考察
をしていきたい。
 
【自動車取得税・重量税の撤廃が期待される理由】

 まず、日本の自動車産業の就業人口について見ていきたい。日本自動車工業
会が発刊している「日本の自動車工業 2012」によれば、日本の全就業人口
6,257 万人の内、自動車関連就業人口は 545 万人(8.7 %)と言われている。
この 545 万人の内訳を見てみると、以下の通り、非製造業に従事されておられ
る方が圧倒的に多いことが分かる。

 1.製造部門:787 千人
   ・自動車製造業(二輪自動車を含む)
   ・自動車部分品・付属品製造業
   ・自動車車体・付随車製造業
 
 2.利用部門:2,810 千人
   ・道路貨物運送業
   ・道路旅客運送業
   ・運輸に付帯するサービス業等
   ・自動車賃貸業

 3.関連部門:411 千人
   ・ガソリンステーション
   ・損害保険
   ・自動車リサイクル

 4.資材部門:361 千人
   ・電気機械器具製造業
   ・非鉄金属製造業
   ・鉄鋼業界
   ・金属製品製造業
   ・化学工業(塗料含む)、繊維工業、石油精製業
   ・プラスチック・ゴム・ガラス
   ・電子部品・デバイス製造業
   ・生産用機械器具製造業

 5.販売・整備部門:1,085 千人
   ・自動車小売業
    (二輪車含む。新車・中古車・自動車部分品・附属品、等)
   ・自動車卸売業
    (二輪車含む。中古車・中古部品・自動車部分品・附属品、等)
   ・自動車整備業
 
 日本自動車工業会や経済産業省によれば、自動車取得税・重量税が存続し、
消費税が 15年に 10 %となった場合、国内新車販売が 93 万台減少し、約 27
万人の雇用が失われるとの試算結果を出している。既にグローバル展開をされ
ている、又は検討されている企業もあるかと思うが、現時点では、国内での自
動車需要動向が生命線となる企業も多数おられるのではないかと思う。

 新車販売の減少は、製造業だけでなく、非製造業にも当然ながら影響を与え
る。既にガソリンスタンド過疎地といった問題も出てきているが、「ガソリン
を入れたいけど近くにはサービスステーションがない」、「自動車を修理に出
したいけど、遠くまで行かなければいけない」といったように、自動車ユーザー
の利便性が著しく低下し、更に自動車需要が伸び悩むという負のスパイラルに
陥る可能性も考えられる。

 また、自動車関係諸税が他の先進国と比べて、そもそも圧倒的に高く設定さ
れていることも、今回撤廃を求める声に繋がった部分があるであろう。日本自
動車工業会発刊の「日本の自動車工業 2012」によれば、日本が圧倒的に高い水
準にあることが見てとれる。

[自動車関係諸税(取得・保有段階の車体課税)の国際比較]
 ※排気量 1,800cc、車両重量 1.5t 未満、車体価格 180 万円、11年間使用等、
  一定の条件設定を行い比較されたもの。

 1.日本:74.1 万円
    内訳:自動車税(43.5)+自動車重量税(13.5)+自動車取得税(8.1)
       +消費税(9.0)

 2.イギリス:53.9万円
    内訳:自動車税(17.9)+付加価値税(36.0)
 
 3.ドイツ:49.8万円
    内訳:自動車税(15.6)+付加価値税(34.2)

 4.フランス:39.3万円
    内訳:登録税(4.0)+付加価値税(35.3)

 5.アメリカ:16.8万円
    内訳:自動車税他(1.3)+小売売上税(15.5)
 
 やはり、他国との比較においても、税そのもののあり方について改めて考え
直す必要があるように思う。12年度の予算額では、自動車取得税(地方税)で
2,068 億円、自動車重量税(国税)で 7,032 億円の税収が期待されている。総
務省、財務省、及び地方は、この税収に代わる財源が無いから撤廃反対と言う。
既得権益が失われることで実務上大変になるとは思うが、やはりあるべき論で
考えることや、実態として負担が増えてきている社会保障費等において見直す
べきところがあるのではないであろうか。

 1月 18日に開催された自民党の税制調査会小委員会では、ある議員から「自
動車産業を立て直せば、5 千億円から 6 千億円の税収は直ぐに出てくる」との
発言があったと報道されている。算出根拠は不明ながら、ただ税収が無くなる
というのではなく、それによる波及効果も見ようと言うのは傾聴に値するもの
と思われる。
 
【内需の創出とグローバル化が進む製造業の国内拠点の役割再定義の必要性】

 最近はウォン高に振れていることもあり、隣国、韓国においても、これまで
のウォン安を武器とした輸出産業を主軸とする政策を見直し、内需の創出を図
ろうとする動きが見れる。

 日本においても、自動車産業のみならず、より一層の内需の創出と、グロー
バル化が進む製造業の国内拠点の役割再定義が必要になってくるであろう。

 行き過ぎた円高については、一定の是正が必要になるのは間違いないが、政
府の為替介入は他国との消耗戦になるであろうし、中長期的には、市場の評価
として自発的に実力値に是正されるものと思う。また、内需の維持、創出とい
う観点からは、必ずしも円高への是正が良いということにはならない。最近急
激に円安となったこともあり、原油の輸入価格が上昇し、資源エネルギー庁が
発表した 1月 15日時点のレギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)が 8 ヵ
月ぶりに 150 円/ L台となったこと等、デメリット面についての考慮も必要で
あろう。

 内需の創出という観点では、新しい産業の育成や、個人消費を促進するよう
な政策が必要になるだろう。新しい産業の育成という観点では、超小型電気自
動車や、高齢者を意識した技術開発等に期待が寄せられる。製造業としては、
国内をグローバル展開する中でのマザー工場とする向きや、先進技術開発拠点
として位置付ける動きがある。個人消費促進という観点からは、やはり失業率
の低下や、個人所得の上昇が必要になろう。

 自民党が緊急経済対策に盛り込む減税案として、特に上記を意識したものが
ある。企業が新規に従業員を雇用したり、現在雇用している従業員の給与を増
額する等して人件費の総額が増えた場合には、一定の割合を法人税から減税す
るというものである。

 また、研究開発の後押しを目的として、法人税から差し引ける控除の上限を
税額の 20 %から 30 %へ引き上げる方向で調整に入っている。更に、設備投
資減税の拡充についても議論が開始されたところである。他にも、他国で導入
されているパテントボックス税制、若しくはイノベーションボックス税制と呼
ばれる、特許権からの所得を税優遇する等、知的財産を減税で育成するような
税制導入についても、産業界から政府へ提案されている。

 このように対応策は各種検討されているが、政府財源が厳しいことは誰もが
認識しているところである。自民党内部では、自動車取得税のみ廃止といった
案が出てきているが、短期的な視点だけではなく、中長期的な視点を持って、
業界の持続的な発展と財源確保のバランスを考慮した上で、自動車関連税制の
あるべき姿を考えて貰いたい。

 この 7月に参院選が予定されるが、自民党には、これまでのように選挙票ば
かりを意識した決められない政治から脱却するとともに、各政策の確実な有言
実行を期待したい。

                             

<横山 満久>

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