中古車の個人間売買について

今回は、「中古車の個人間売買について」をテーマとした以下のアンケート結
果を踏まえてレポートを配信致します。

https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6573

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【税を巡る動き】

 現段階では、国内の消費税率が、2014年 4月に 8 %へ、2015年 10月に 10
%へと引き上げられることが予定される中で、日本自動車工業会(自工会)を
始めとして、自動車取得税と同重量税の撤廃に向けた動きが活発になっている。

 自工会からは、自動車取得税と同重量税が残ったまま消費税率が 10 %にな
れば、国内の新車市場は 400 万台を下回るという指摘も出ている。

 また更には、上記 2 税に変わる財源として二酸化炭素の排出量等に応じて税
額を決める環境自動車税や、軽自動車の優遇税制を含めた形での報道もされて
いる。

 その一方で、個人向けネット競売大手の「ヤフー」やベンチャーの「トロイ
カ」等、消費税が掛からない取引として改めて中古車の個人間売買に関する取
り組みが見られる。 
 
【個人間売買のメリットと課題】

 現在の中古車販売の主流は、新車ディーラー(新車 DLR)や中古車販売店
(中販店)を通じたものであり、年間に新車 DLR が約 100 万台、中販店が約
100 万台を小売していると言われる。

 個人間売買も、従来から友人・知人間等の取引はあるが、全体の中では主流
とは言い難いだろう。

 一般に言われる個人間売買のメリットは、消費税は事業としての取引に課税
されるため、個人同士の売買や、その売買を仲介業者に委託した場合でも、非
課税になることだ。

 また、下取り・買取り、オークション、販売店で発生する流通マージンの一
部を省くことにより、従来と比べて、売り手は高く売れ、買い手は安く購入で
きる可能性がある。

 一方で、売り手・買い手の不安や手間が発生する。買い手側には、現物が見
たい、購入後に予期せぬ車両不具合が発生しないだろうか、盗難車ではないだ
ろうか等といった不安や、自動車登録の手続き等の手間が発生する。

 売り手側には、売却後にクレームが来ないか、期日どおりに定められた金額
を払ってくれるか等の不安や、個人間売買市場への出品や登録関係の手間が発
生する。

 上記のような不安や手間を解消するサービスとして、モノに関しては、査定
や保証、返品猶予を与えることにより、リスクを減少・肩代わりするサービス
検討が進んでいる。カネに関しても決済を代行するようなサービスが検討され
ている。

 また、個人間売買の市場を成立させるためには、売り手・買い手のマッチン
グという課題もある。

 売り手は、車検時期や各種事情等で、売却までの期間が限られている場合が
多いことが想定され、その間に買い手を見つけなければならない。買い手・売
り手のマッチングにズレが生じることもあろう。

 新車 DLR や中販店を介した流通では、売買タイミングや車種のマッチングの
ズレを言わば在庫リスクを取る(また一定在庫期間が過ぎればオークションを
通してシャッフルする)形で解消しているが、個人間売買の場合には、一義的
に在庫リスクを取る業者はいないという構造的な違いがある。

 個人間売買の特に初期的な段階では、売り手が、下取りや買取りに出す方法
もあるが、その前に、より高い価格で売れるかもしれないから、個人間売買市
場へ気軽に出品してみようというポジションを確立することで、市場が形成さ
れていくのではないだろうか。
 
【IT の活用による効率化】

 先月の弊社 1 クリックアンケートで、2015 年に 10 %へ消費税率が引き上
げられることが予定される中で、2020年頃に中古車の個人間売買はどれくらい
の規模に拡大しているかについてお聞きした。結果は以下のとおりである。

・数千台~数万台/年程度(僅少)                          :27%
・10 万台/年程度(現状中古車小売台数のシェア 5 %程度)  :27%
・20 万台/年程度(現状中古車小売台数のシェア 10 %程度) :22%
・30 万台/年以上(現状中古車小売台数のシェア 15 %以上) :24%

 20 万台/年程度や、30 万台/年以上と回答された方も多くいた。その前提
として、個人間売買のインフラ(仲介の場や、ユーザの不安や手間が解消され
るサービス)が整えばというコメントを頂いている。

 個人間売買の拡大のためには従来の流通との価格差が必要と考えるが、下取
り・買取りよりも高い価格設定をベースに、上記のような仲介市場のマージン
や各種サービスを付帯していくと、結果的に従来と比べて、あまり魅力的な価
格水準にならない可能性もあり得る。

 もちろん、そうはならないようにサービス検討は進むであろうが、その際に、
事業性・効率性の観点から、どれだけ IT を活用しきれるかが重要になってく
るのではないだろうか。

 例えば、米国には「CARFAX」等、ネットを介して特定車両の所有履歴や整備・
修理等のサービス履歴情報等をレポートするサービスがある。国内では、米国
に比べて情報開示が進んでいないことや、データ取得費用が高額なため、同種
のサービスを開発する場合には、行政側との調整や協力も必要になってくるで
あろう。

 また、現物を見たい等、IT だけでは不安を解消できないことも出てくると思
う。個人間売買普及のためには、リアルとバーチャル(IT)の線引きにおいて、
どれだけバーチャルの領域を大きくする形で、効率的なサービスを開発できる
かが、一つの重要な要素になると考える。

                                

<宝来(加藤) 啓>