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REPORT

業界レポート『コロナ禍で加速するDX:オムニチャネルからバリューチェーン全体最適を実現するエコシステムへ』

自動車業界、そして未来のモビリティ社会に関連する業界の最新動向や、世界各国の自動車事情など、さまざまな分野の有識者のレポートをお届けします。

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グローバルにおけるコロナ禍で、巣ごもり消費が加速。その結果、自動車でもついにオンライン販売が活発化

グローバルで突如として沸き起こったコロナ禍は、我々の意識や生活に様々な変化をもたらしている。
その中でも、人々の移動を媒介するモビリティは、人々と共に移動するコロナウィルスに大きく影響を受けている分野の一つである。
グローバル各国でのロックダウン政策により、多くの地域で人々の移動の自由が制限され、日本でも厚労省から国民に対し、“三密“を避ける新しい行動様式の実践が要請されている。
そのような状況で、自家用車を所有すること・自家用車で移動することの意義が見直され、感染リスク低減という観点で安心安全な移動手段として車を再認識する人や、車に対する購入意欲が高まったという調査結果もある。(*1)
また、このようなコロナ禍による外出制限・自家用車ニーズの高まりによるものか、これまで他業界に比べると歩みが遅かったように見えた自動車のオンライン販売も促進され、北米ではトヨタの4月の販売台数の大半がオンライン経由によるものと報道(*2)されている。

 

自動車に関する顧客接点が全てオンラインで完結するわけではない。オフラインとオンラインを融合するオムニチャネルが必要。では、他業界のオムニチャネル先行事例から学べることは何か?

自動車の販売やサービスが今すぐにオンラインに全て移行するかというと、そうではなく、車が物理的な存在である限り、実車を見て乗って確かめたいというニーズや、アフターセールスの車両点検整備・部品交換の作業は今後も存在する。
つまり、これまでのオフラインなチャネルによる顧客対応・サービスを維持しつつ、そこにオンラインの顧客接点をどう融合させるかという、いわゆるオムニチャネル(顧客のニーズや購買データをチャネル間で共有、それらをもとに個々の顧客にとって最適かつ一貫性のある体験を提供すること*3)による対応が求められる。
では、他業界ではどのようにオムニチャネルに対応しているのだろうか。
ここでは、金融機関のオムニチャネルの考え方を参照する。

 

<金融機関におけるオムニチャネル概念図(*4)>

 

<りそなグループのオムニチャネル戦略(*5)>

オムニチャネルによる異なる顧客接点間のデータ連携・分析で、顧客に対してどの接点でも一貫性のある顧客経験の提供とマーケティング施策の精度向上が可能

上記の金融機関における例の通り、オムニチャネルとは、異なるチャネル間のデータを連携・分析し、最適なカスタマージャーニー(CJ)をデザインすることで、最適なカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供することが目的である。
顧客のCJがこれまでのようにぶつ切りではなく、全体像として可視化できるようになると、より精度高くマーケティング施策の効果測定ができる。
その結果、次に打つ施策の精度が向上し、マーケティングのPDCAが好循環していく。
顧客目線で見ても、自身にオファーされる施策の内容と時期が最適化されCXが改善されれば、その店舗やブランドに対する満足度・ロイヤリティが高まることとなる。

 

CX・CJの最適化だけで満足せず、自動車バリューチェーン(VC)全体のデータをend-to-endで連携させ、VC全体における様々な事象の因果関係を分析し、分析結果をVCの上流プロセスや次のプロジェクトにフィードバックできれば、VC全体を強化し続けるエコシステムに

自動車の販売・マーケティングプロセスにとどまらず、開発・生産からアフターセールスに至る長いライフサイクルの各プロセス間でデータ連携・分析ができると、上述したCX・CJ最適化や販売・マーケティング施策の精度向上にとどまらず、VC全体の最適化が可能になる。
もう少し具体的に述べると、どのように作って、どのように使われて、その結果どのようなことが起きたか(例えば故障や不具合の発生など)といった、一連のVCで起きた事象の因果関係分析とフィードバックが、格段に高効率・高精度に行えるようになる。
この分析・フィードバックのプロセスを部門横断で繰り返すことで、モノづくりVC全体のレベルアップ・強靭化につながるエコシステムが構築できる。

 

<エコシステムの概念図(*6)>

エコシステム実現にはデータ連携プラットフォームが必要となる。プラットフォーム投資の前に、まずPOCで効果を確認するところからスモールスタートすることと、部門の壁を越えたリーダーシップが、成功の為の重要なファクターとなる

VC全体のデータを連携させるのは、まさに「言うは易く行うは難し」で、部門間の利害調整・合意形成や、ITアーキテクチャの設計・構築に多大な工数・投資を要する。
まず、問題意識やToBeイメージを共有する同志を部門横断で募り、少なくとも数か月、場合によっては数年単位で協業していくことになる為、部門の壁を越えた強力なリーダーシップによる旗振り・後押しが欠かせない条件となる。
そして、POCとして複数部門の一定期間におけるデータを連携・分析し、関係者間で効果を確認できたところからプロジェクト化していけば、いわゆるスモールスタートとして、投資リスクを抑制しながら業務変革を着実に実現していくことが可能である。
ウィズコロナ・ポストコロナの時代において、物理的には非接触・リモートな顧客対応でも、従来以上に顧客を深く理解する為に必要なのはデータとその活用であり、このようなプラットフォームと、それを土台としたエコシステム活用が、これからより一層求められるDXと言えるのではないだろうか。

 

 

【出典】
*1:①コロナ禍を機に「クルマ買いたくなった人」 (18%)が「買うのを中止・延期した人」( 11% )を上回る、②クルマは生活に必要な移動を安全行うことができると認識されている(80%)、③特定警戒 8都道府県、特に東京ではクルマ移動が増加(26%:全国比 +10pt)「コロナ禍における『移動』『クルマ 』に関する意識調査」・株式会社デルフィス・2020年5月

*2:“トヨタの4⽉の⽶国販売は8万4694台だが、このうち政府向けなどを除いた約8万台のほとんどがオンライン販売だったというのだ。トヨタは実数を明らかにしていないが「⼤部分がオンラインだったのは確か」と話す。”「⾞ネット販売、新型コロナで起動 トヨタは⽶国で主流に」・日経ビジネス電子版・2020年5月

*3:CX Clip(https://cxclip.karte.io/topic/omni-channel/)

*4:顧客と金融機関の接点を強化する「CXMソリューション」を提供開始・株式会社NTTデータ・2019年9月

*5:りそなグループのデジタル化戦略・りそなホールディングス オムニチャネル戦略部・2018年4月

*6:弊社作成

以上

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