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コラム

バリューチェーン全体を通じて差別化を図る

◆ホンダ、「フィット HV」 159 万円。課題となったのは値段

「(採算は) ギリギリでやれる」と伊東社長。「ガソリン車のフィットはもちろん、フリード、インサイトとのバランスや影響も考えた」と小林浩・日本営業本部長。

<2010年10月10日号掲載記事>

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【「フィット ハイブリッド(HV)」発売】

ホンダが 10月 8日に、「フィット」のマイナーチェンジを行うと伴に、「フィット HV」を追加して発売した。

月販目標台数は「フィット」と「フィット HV」の合計で 1.4 万台である。その内、「フィット HV」の目標は、その 4 割に相当する 5.6 千台である。それに対し、「フィット HV」の事前受注は約 1 万台であり、エコカー補助金制度終了の反動がある現在の環境化では、出足好調と言ってよいのではないだろうか。

「フィット HV」の価格は 159 万円~で、「フィット」の 123 万円~と比較すると、36 万円程高い設定となっている。顧客から見れば、概ね 36 万円が、ハイブリッドという付加価値の対価として認識されるだろう。

もちろん、「フィット HV」と「フィット」の違いはハイブリッドシステムを搭載しているだけでなく、「フィット HV」には専用色があることや、グリルなどにも多少の違いはある。また、価格差も税金や燃費性能の違いから保有段階で徐々に縮まっていく。

【「フィット HV」の価格設定】

今回取り上げた記事にもあるように、「フィット HV」の発売には価格設定が課題となったようで、ガソリン車の「フィット」だけでなく、「フリード」や「インサイト」といった自社の他モデルとのバランスが考慮されたようだ。

それ以外にも、他社の小型車セグメントの車種やハイブリッド車なども考慮したことが想定される。価格差の納得感という意味では「シビック」と「シビック HV」の価格差も考慮したかもしれない。

このように価格は、自社や他社商品の中でのポジションや過去からの経緯、加えて製造原価等コスト側の事情などを考慮した上で、決定される。

結果、「フィット HV」の価格は 159 万円~で、収益としては、記事によれば「ギリギリでやれる」とのことである。

【価格決定の際の考慮余地】

新車販売から目を広げて、サービスの状況を見ると、ハイブリッド車は整備売上高が減少するというデータがある。

自販連の資料によれば、名古屋トヨペットが、新車購入から初回車検までの整備に関して、ガソリン車とエコカーを比較して整備売上高を試算したところ、ガソリン車「プレミオ」と比較して、ハイブリッド車「プリウス」は 95 %、プラグイン・ハイブリッド車は 79 %(予想)、EV は 49 %(予想)になったという。

こうした状況を踏まえ、各自動車メーカーや販売会社では、従来の工賃をベースとした課金に加え、診断技術料など新しい課金方法の検討が進んでいる。

基本的には、サービスは販売会社の収益なので、前述した「フィット HV」の収益が「ギリギリでやれる」という価格設定に、サービスの収益まで考慮されてはいないと思われる。

新車販売だけでなくサービスも含めて、言い方を変えれば、自動車メーカーから販売会社までバリューチェーン横断的に、収益を検討していく余地がないだろうか。そうすることで例えば、サービスでこれだけ収益が獲得できるから、新車価格は幾らといったように、価格設定の柔軟性が高まることなどが考えられないだろうか。

【商品や販売戦略の全体で差別化を検討する余地】

上記は価格・収益の話しであるが、もっと大きな捉え方をすれば、商品戦略や販売戦略の全体を通じて、差別化を検討していく余地がないだろうか。

というのも、例えば「フィット HV」の場合、小型車という観点でもハイブリッド車という観点でも競合車種は多数ある。現状、小型のハイブリッド車という組み合わせでは差別化できたポジションかもしれないが、電気自動車の普及や、今後「ヴィッツ」のハイブリッド車の投入も検討されていることを考えると、商品面だけで、差別化できたポジションを持続できるとは限らない。こうした時に、差別化できた要素を、販売面まで含めて検討する余地はないだろうか。

商品と販売が一体となって差別化を図っている代表事例として、国内の「レクサス」が挙げられる。詳細な施策は割愛するが、「おもてなし」をキーワードに商品設計・開発から生産、物流、販売まで一貫性を持った形で差別化を図っている。

今年の 8月で「レクサス」導入から 5年が経過するが、当初の計画と比べると、トヨタブランドの顧客をレクサスブランドに引き上げることは一定の成果があったが、輸入車ブランドからの顧客獲得は想定以下であったという報道がされている。

トヨタ社内では、ブランドの浸透には時間が必要なのか、地場系を中心とした販売ネットワークでは末端まで「おもてなし」が行き届かないのかなど、各種の要因分析がなされてると思う。

また、トヨタは、2011年末に予定している新型スポーツ車「FT86」の発売と合わせ、スポーツ車を中心に取り扱う新コンセプトの店舗を全国に展開することも検討している。「レクサス」での教訓が活かされるかもしれない。

上記のようなブランド展開や店舗展開など、大掛かりな仕掛けに限らず、商品と販売を含めて差別化を考えていくこともできるのではないだろうか。

【摺り合わせ能力を発揮する】

顧客に商品を購入してもらうには、他にも類似した商品がある中で、なぜ、当該商品を選択するのかの理由付けが必要だと思う。その理由となるものが差別化できた要素であろう。

自動車メーカーは、あくまでメーカーであるから、販売の領域に深入りするべきではないという考え方も当然あるが、商品に限らず、販売などバリューチェーン全体を通じて差別化を図ることも一つの方向性だと考える。

それを牽引していくのは、バリューチェーンの中心に位置する自動車メーカーであろう。その際には、自動車メーカーの押し付けとならないようにする必要があるだろう。

以前、弊社メルマガで櫻木が、日本の自動車産業の強さは、「摺り合わせ能力の強さ」にあり、これは技術・製品価値を生み出す際だけでなく、海外進出のケースなどでも活かせるのではないかと述べた。

バリューチェーン全体を通じて差別化を図る際にも、押し付けとならないよう、各社との「摺り合わせ」が重要であり、日本の自動車メーカーの強みを発揮できる領域ではないかと考える。

<宝来(加藤) 啓>

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