ホンダ、4輪車に特化した「基礎研究開発組織」を本田技術…

◆ホンダ、4輪車に特化した「基礎研究開発組織」を本田技術研究所内に新設
「おやじさん(故本田宗一郎氏)の技術者魂を取り戻せ」と原点回帰を図る
<2004年03月25日号掲載記事>
——————————————————————————–

ここでいう「原点回帰」とは、創業者がこだわった独創的なモノ作りのことであり、国内での販売不振打開を目指し、中長期的視点でR&D強化を図ることで、「ホンダらしさ」を取り戻そうというものである。
この「独創性」「中長期」という二つのキーワードに注目したい。

まず、「中長期」的研究開発についてだが、本田技術研究所が新設するこの基礎研究開発組織のテーマはいずれも次世代技術であり、最低10年は実用成果を問わない、という。

一時期よりは少し長くなってきつつはあるものの、モデルチェンジのサイクルが短く、新車効果が大きい日本市場においては、競争が激化するにつれ、資本力に余裕がなくなると、研究開発のリソースは中長期的な基礎研究よりも、実現性・即効性の高い商品開発に集中する傾向にある。

これは自動車会社に限らず、部門別に採算管理をしている大企業には共通の問題と言えるかもしれない。
他社の商品・コンセプト・ビジネスモデルに追従していくのであれば、これでも十分成り立つだろうが、独自のブランドイメージを確立し、市場をリードしていくことは難しいだろう。

他社に先んじて、常に独自の技術を導入していくためには、ある意味自由で冒険的なチャレンジは必要だし、そのためにも、そのチャレンジを生み出し、確かなものにしていく基礎技術力が重要だと考える。

次に、「独創性」についてだが、ホンダの場合、その「独創性」を期待するファンが多いことは勿論、社員の中でも、「自由で独創的な会社」というイメージに憧れて入社した人も少なくないと思う。

しかし、日本の自動車会社のように、その会社規模が世界的に拡大すると、ニッチなユーザーだけを満たすような商品だけでは存続するのは厳しく、当然カバーすべき客層、市場も広くなる。

一方で部品やプラットフォームの共通化は進み、デザイン等は別 にしても、商品種類は絞る方向にあることを考えると、商品自体の独創性との両立は難しくなりつつある。つまり、CSを追求し、万人にとって無難なクルマが生まれやすくなり、画期的なクルマを作ることが難しくなる。そういった環境下で「ホンダらしさ」を見失いつつあったことが、国内販売不振にも影響していたのではないかと思われる。

市場をリードし、他の追従を許さないような独創的な商品を開発する
ためには、市場に合わせた短期的な商品開発よりも、時代の流れを変える独創的な技術が有効であり、そのためにも中長期的な基礎技術が重要であろう。かつての「ホンダらしさ」とはまさにここにあったのではないだろうか。

今や、ただ走るだけのクルマであれば、各社の部品の寄せ集めで作る会社も近隣諸国で登場している。
現時点では世界に誇る生産技術を持つ日本の自動車産業が目指すべきところはこのあたりにあるように思える。

<本條 聡>