トヨタ、中国に新車開発のデザイン拠点を来年にも新設へ。…

◆トヨタ、中国に新車開発のデザイン拠点を来年にも新設へ。候補地は上海。デザイン拠点の日米欧の3極体制に、中国・アジア地域を追加、4極体制へ

<2004年4月28日号掲載記事>
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昨今の中国自動車産業の成長については誰もが知るところであるが、どの車種も一様に販売台数を伸ばしているわけではない。

2003年の生産台数統計(出展:Marklines)によると、2003年の生産台数が5万台を超える乗用車の車種と、その前年比は以下の通り。

車種      生産台数     前年比
上海VW(計405,252台)
Santana    124,034台    40.3%増
Santana2000   89,059台    1.2%減
Passart    123,954台    76.8%増
Polo      57,180台    89.1%増

一汽VW(計282,659台)
Audi A6     53,134台    60.8%増
Jetta     142,417台    34.1%増
Bora      77,171台    47.1%増

上海GM(計206,964台)
Buick Regal   75,015台    167%増

広州ホンダ(計117,178台)
Accord     80,440台    78.5%増

神龍汽車(計105,475台)
Elysee     50,613台    58.2%増

天津一汽夏利(計104,505台)
Xiali(夏利)  93,200台    23.8%増

重慶長安鈴木汽車(計102,083台)
Alto      60,827台    21.3%増

北京現代汽車(計55,113台)
Sonata     54,348台    4008%増

ここで注目したいのは、その前年比の成長率である。現代Sonataのように新車種のため前年は通期で生産していないもの、生産設備の能力上拡大の余地がないもの等あるので、一概には言えないが、50%以上の拡大をしている車種は、Buick Regal、Polo、Passart、Accord、Audi A6、Elyseeであり、そのほとんどが世界的にも現行モデルである。
特にAccord、Buick Regal、Atenza(一汽 Mazda6)等はディーラーでも数ヶ月待ちの状況で、プレミアを払って納期を早めるようなことまである状況と聞く。
新しい設備を導入し生産するなら売れそうな新しい車種を導入するのは当然の帰結ではあるが、他国で生産終了した旧モデルを安く作ろうという時代は終わったと言えるのではないか。

一方で、今後、この勢いで中国での自動車産業が成長すると、飽和状態とまではいかずとも、ある程度需要に供給が追いつくという意見も多い。こうした中、自動車メーカー各社も、生産数量の拡大計画だけでなく、如何に市場に受け入れられる自動車を作るかということが、より大きくなると予想される。

市場での人気を大きく左右するのは、まさにデザインとブランドである。特に内外装のデザインは
・人気、売れ行きに対する影響力が大きい。
・時代、地域、文化、国民性によって趣向が異なる。
・パワートレインを始めとする基幹部品は共有化しながらも、多少の
アレンジで変化をつけることができる。という点からも、現地の趣向を反映した車種を開発する上で、最も効果的で即効性の高い項目の一つであろう。

これには、現地のマーケティングが重要となる。今回トヨタのデザイン拠点を新設するのも、益々競争が激化する市場において、現地の消費者のニーズを競合他社に先駆けて反映し、商品力を高めていくためには、拠点の現地化が不可欠と考えたのであろう。
上海GMは既にデザイン部門を抱えており、アジア太平洋地域のデザイン開発、支援業務を行っている。大宇の車種を現地の趣向にデザインを若干変更し、Buickブランドで発売することで人気車種に仕立てたExcelleなどは成功例として上げられる。

今回のトヨタの挑戦は、日系自動車メーカーの中では、初の試みといえる。これからの中国戦略において、マーケティングが一つの鍵となるかもしれない。

<本條 聡>