ダイフクと大気社、自動車の塗装時間を25%短縮できる塗装…

◆ダイフクと大気社、自動車の塗装時間を25%短縮できる塗装ラインを開発
コンベヤーの構造を変え、車体を傾かせて塗装液の入った槽に出し入れする

<2004年08月12日号掲載記事>
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近年、自動車生産設備業界では、価格競争力を重視し、入札を勝ち抜くスタイルの営業から、自社製品の強みを活かした提案型営業への移行が進んできている。他社製品にはない技術・ノウハウを製品の盛り込むことで、入札せずに契約に持ち込むことや、入札において優位な仕様・条件を引き出すことが可能となるからである。これによって、顧客である自動車メーカーとの共同開発まで発展することもあるだろう。

生産設備は、大きく分類すると「専用設備」と「汎用設備」の2種類がある。

「専用設備」: モデルチェンジ毎に更新が必要。
金型、治具、検具等

「汎用設備」: 一般的にどのモデルにでも対応できる設備。
工場設立、ライン追加・増強、旧設備の更新時に必要。
プレス、コンベア、塗装設備等

自動車会社にとって、自動車生産設備は安い買い物ではない。プラットフォームや部品の共有化が進んでいるとはいえ、新型車種を導入するためには、50 億円から数百億円の新規生産設備購入が必要になると言われる。新規工場設立となれば、更に金額は膨れ上がる。

従って、少しでも安くクルマを作りたい自動車メーカーにとっては、部品、材料同様、設備の調達コストの削減も重要な課題である。

過去、コスト削減を重視する自動車メーカーに対し、ライバル企業同士で熾烈な価格の叩き合いが進み、業界全体が疲弊したような設備分野も少なくない。

しかし、生産設備にとっては、もう一つ重要な側面がある。その設備を稼動させるのに必要なコスト、時間である。ここでのランニングコストの削減は、直接的に自動車の製造コスト削減につながるため、そのインパクトは非常に大きい。

つまり、自動車メーカーにとってみれば、多少従来の製品よりも高くても、ランニングコストを下げることにより、自動車自体の製造コストを削減できる可能性は高い。それが、数十年にわたって使うことになる汎用設備となれば尚更である。

勿論、自動車メーカーも昔から生産工程の改善には取り組んできている。ただ、自動車メーカーにおいては、多様化するニーズに対応する新モデルの追加投入や拡大する海外生産等、技術的な課題は年々増加、複雑化しており、技術リソースは逼迫する方向に向かっている。したがって、部品・設備サプライヤーが期待される役割も拡大、多様化すると考えられる。

今回ダイフクと大気社が発表した新型設備は、自社製品の販売価格を犠牲にしないで、顧客へメリットを提供する、痒いところに手が届く典型的な新技術であろう。

当たり前のことと思われる方も多いと思う。しかし、自社製品と密接に関係する製品メーカーと共同開発に取り組むことで、新たな可能性も広がるかもしれない。今一度、基本に立ち戻って、自社の技術開発の方向性を考えてみることが重要ではないだろうか。

<本條 聡>