エー・アイ・エス、中古スタッドレスタイヤを再生する研磨装置を開発

氷結路面の走行でゴム質が劣化したタイヤ表面を研磨ベルトで1~3分間研磨し、細かい凹凸をつけることでグリップ力を回復させる。今冬にユーザー・モニター実験をし、来年度からは産業技術総合研究所と共同で性能比較実験を行う。ガソリンスタンドの新サービスとして受注生産を開始へ。230万円

<2004年12月16日号掲載記事>

◆岐阜・養老町に野積みされた廃タイヤのボランティア撤去、資金不足で中断

県の当初の算定では、廃タイヤは約2万4000本だったが、これまでに約3万本を撤去。しかし、なお元の山の3分の2ほどが残っている。「放置したタイヤ回収業者の報告を基に算定したが、重みで圧縮されたタイヤを計算に入れていなかった」と県西濃振興局環境課。

<2004年12月15日号掲載記事>
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言うまでもなく、タイヤは、クルマの構成要素の中でも最も重要なものの一つであろう。100年以上も前にクルマが誕生した時から現在に至るまで不可欠な存在であり、今後もその役割を取って代わるものが簡単に出てくるとは思えない。

また、今後の自動車社会にとって、地球環境の保全や省エネ対応といったテーマの重要性が益々増してくることは間違いない。こうした状況の中、タイヤの環境負荷、環境性能の改善が社会に与える影響は非常に大きく、この分野での技術革新は特に重要なテーマと言えよう。

タイヤが社会環境に与えるインパクトを、市場規模の観点から、以下の通り整理して考えてみる。

1.タイヤの需要規模
世界では、年間約 11 億本超の自動車用タイヤが生産・消費されており、うち乗用車向けが約 8 億本、商用車等向けが約 3 億本である。

国内においても、2004年の自動車用タイヤの需要見通しは以下の通りとなっている。(社団法人 日本自動車タイヤ協会発表内容より。)

.        本数(千本)(前年比) ゴム使用量(トン)
新車用    49,915   1.0%減   219,655
市販用    73,321   1.9%増   398,594
国内需要   123,286   0.7%増   618,249

上記の通り、消耗品であるタイヤは、「新車用」よりも「市販用」の方が需要が大きい。国内の自動車生産台数が年間約 1 千万台、世界が年間 6 千万台であることからも、タイヤの需要規模が非常に大きいことがわかる。

2.資源の消費量
一般的に、タイヤの主原材料は天然ゴムである。全世界の天然ゴム年間消費量は、2004年は約 800 万トンになる見通しであり、このうち約 7 割以上がタイヤ関連に用いられている。近年、中国での自動車生産の増加もあり、年々増加している。

天然ゴム自体は、大規模なプラントで生産されるものであり、大きな環境負荷を与えるものではないが、タイヤの原材料としては、合成ゴム、スチール他、多数の材料からなる 100 以上の部品で構成されている複雑な構造体である。

大手タイヤメーカーのミシュランによると、乗用車用タイヤ 1本分の重量に占めるエネルギー量は、石油 27 リットルに相当し、そのうち 21 リットルは合成ゴムなどの原材料に、6 リットルは生産工程で使用されるという。また、トラックの場合は、これが石油 100 リットルに相当するという。

したがって、この石油消費だけでも、世界で毎年 500 億リットルに相当する。また、タイヤコードを構成するスチールは、タイヤ全体の原材料重量費の約1 割に相当し、国内だけでも年間 20 万トン超を消費している。昨今の鉄鋼需要急騰の影響も大きく受けているはずである。

言い換えれば、世界では毎年数億本単位の使用済みタイヤが生まれているということである。過去の使用済みタイヤが、冒頭の岐阜県のように、世界中で山積になっており、今後、抜本的な解決策が生まれてくるまでは、こうした問題が世界各地で起こりつづけるであろう。

タイヤ業界における技術革新というと、軽量化、長寿命化といった、燃費向上、タイヤ自体の性能向上に注目が集まりがちであるが、それだけではなく、生産の合理化、リサイクル性の向上についても、環境負荷の軽減に大きな役割を果たすものだと言うことがご理解頂けると思う。

こうした状況の中、使用済みタイヤを再利用する方法の開発・普及に取り組んでいる企業も多い。主な方法としては、以下のようなものがある。

1.燃料等のエネルギー資源
1本のタイヤに含まれているエネルギーは、同じ量の石炭よりも高いと言われている。

廃棄物の量を少なくする技術も進んでおり、国内や米国では高い熱量を必要とするセメント業界での再利用が主流となっている。

2.タイヤへの再生
一般的には、リトレッド、リグルーブの 2 種類の方法がある。

リトレッドは、トレッド部分(接地面)に新たなゴムを巻きつけ、使用可能なタイヤとして再生する技術で、ゴムの使用量を新品タイヤ製造時の約2~3割に抑えられる。主に商用車用タイヤで用いられ、欧州では進んでいる。リグルーブは、溝が減ったタイヤの溝(グルーブ)を彫り直して再生する技術。

ともに、タイヤ構造の強度が問題となるため、何度も再生利用できるわけではない。

今回の冒頭のスタッドレスタイヤの研磨技術も、このリグルーブの一種といえる。

3.新タイヤの原材料
加硫したゴムを加硫していないゴムに還元することができれば、最高の解決手段と期待されているが、実用化はまだ見えていない。

現在は、原材料の一部にこの使用済みゴムを粉状にしたものを混入して利用している。

国内自動車市場は安定状態であるが、世界的には大きく拡大を続けており、今後もこの使用済みタイヤは「生産」され続ける。新タイヤの原料としてリサイクルできる技術が確立できれば、環境負荷軽減と産業廃棄物処理を同時に解決できるであろう。今後、バイオテクノロジーやナノテクノロジーなど、材料分野における技術革新が実用化するのを期待したい。

また、今回のエー・アイ・エス社のように、社会に貢献する事業を志す中小企業が大きく成長して欲しいと同時に、業界関係者にも、こうした企業をバックアップすることをお願いしたい。

<本條 聡>