本文へジャンプ

コラム

日産、今後3年間でCVT搭載車種の世界販売を4倍に拡大すると正式発表

◆日産、今後3年間でCVT搭載車種の世界販売を4倍に拡大すると正式発表CVT搭載率を世界で現在の約7%から約24%に、日本で50%、米国で40%へ

>日産、CVTの生産規模を5倍へ。2008年度に世界販売台数の4割強に搭載
>投資1000億円規模、2008年度までに国内外で3ラインを新設。年産200万台へ
><2005年02月18日号>

<2005年02月28日号掲載記事>

◆ジヤトコ、CVTの生産能力を拡充、八木事業所(京都)を増築へ年間40万台の生産ラインを新設し、来年6月に操業開始へ。投資額約250億円

<2005年02月28日号掲載記事>

日産は、同社の販売する車種の CVT 搭載率を高めることで差別化を図る戦略を明確に打ち出した。同社のプレスリリースには、「現在日産は、小型乗用車から大型乗用車に至るまで、幅広く CVT ラインナップを提供できる、世界唯一の自動車メーカー」であり、「CVT を広く導入させ、燃費の向上を図ることは、CO2 排出の低減につながり、地球温暖化の抑制に大きな効果がある」とある。さらに、昨年末に発売したラフェスタでは実用燃費が約 37 %向上したとしている。

ここで、「CVTを搭載すると本当に燃費が良くなるのか?」だとしたら、「なぜ全てのクルマを AT から CVT に置き換えないのか?」と疑問に思われる方も多いと思う。

環境性能の向上が求められる現代社会において、AT から CVT に置き換えることだけで燃費の向上につながるのであれば、日産・ジャトコに限らず、他のメーカーももっと積極的に導入を進めるべきであろうし、そもそも日産も日本(目標搭載率 50%)、米国(同 40%)に限らず、他地域で販売する車両にも導入を進めるべきであろう。

実は、CVT を導入するだけで燃費が向上するわけではない。むしろ、変速機自体のエネルギー伝達効率としては、CVT は MT や AT よりも劣っていると言われる。では、なぜ日産は「実用燃費が向上」すると言っているのだろうか。今回は、このあたりのカラクリについて説明したい。

1.CVTを搭載すると本当に燃費が良くなるのか?
そもそも、CVT (Continuously Variable Transmission)とは、変速比(要はエンジンの回転数と車輪の回転数の比率)を、一定の範囲で無段階かつ連続的に変化させることができるトランスミッションである。MT や AT では、1 速、2 速、3 速、...とギアを変速していくところが、CVT ではステップなしに滑らかに変速していくことが可能になるというものである。

したがって、理論的には、変速に応じてエンジンの回転数が上下せずに、効率的な回転数を保ったまま、加速したり減速したりすることも可能になる。また、変速比の範囲を広く取ることで、一定速度での走行時など、必要最小限の駆動力で十分なときには、エンジンの回転数を最小限に落とすことも可能になる。つまり、CVT とは、効率的にエンジンを使うことではじめて燃費向上を可能にするものであり、それ単体が効率的なものというわけではない。つまり、燃費向上等のメリットを引き出すためには、エンジン制御との連動が前提条件となる。

今回の日産のケースにおいても、CVT の導入だけで燃費向上が図れたというものではない。エンジン自体の性能向上や、パワートレイン自体の最適化を図ることで、「日本での」実用燃費向上を実現したというものである。

過去、CVT を実際にクルマに搭載するためには、解決しなければならない課題があった。ドライバーに伝わる「感覚」である。実は CVT 搭載車が最初に市場に登場したのは 1980年代であった。当時の CVT は「ゴムベルト感」(アクセルを踏んでもすぐに加速せず、1 テンポ遅れて加速するのでこう呼ばれた)が不評で、なかなか普及に至らなかった。

現在 CVT が普及しはじめたのも、エンジン制御技術が向上し、こうした「感覚」の問題を解決できるようになったことが背景にある。特に電子制御スロットルが普及したことで、ドライバーのアクセルペダル操作に応じて、スロットルの開度、エンジンの回転数や変速比を最適制御することで、心地良い加速感を実現することもできるようになった。例えば、無段階変速が可能である CVT を、ある程度変速比を固定させることで、ドライバーの操作性を向上させるロジックを組み込むなどの工夫が凝らされている。こうした努力の結果、市場に受け入れられる商品として熟成されてきたのである。

2.なぜ全てのクルマをATからCVTに置き換えないのか?
現在の CVT 自体がどんな状況でも燃費を向上させるものではないからであろう。特に、現在主流のベルト式 CVT は、その構造上、変速比によってエネルギー伝達効率が大きく変化し、特に高速走行時は伝達効率が悪化する。

現在市場に出回っている CVT のほとんどがベルト式 CVT である。二つの円錐を向かい合わせたような形状をしたプーリーの間にベルトを掛け、この二つの円錐の間隔を広げたり、狭めたりすることで、ベルトの回転半径を変化させるような構造をしている。

このベルト式 CVT がエネルギー伝達効率が悪い原因は二つある。一つは金属製のベルト自体が曲げられており、特に高速走行時は大きく曲げられることもあり、大きな摩擦が発生すること、もう一つは、このベルトを挟むプーリーの力を発生させるために大きな油圧が必要になる、つまり油圧ポンプでのエネルギー損失が大きいことが上げられる。したがって、高速走行が多いような地域では、期待以上の燃費向上が実現できないのが現状である。

今回の日産の発表についても、日本、米国については積極的に導入を進めることが謳われているが、もう一つの大市場であり、自動車先進国でもある欧州で導入目標が明示されていないのも、ここに理由がある。高速走行時の燃費が重視される欧州では、MT やセミ AT (自動変速機構を持つ MT)は勿論、AT の方がCVT よりも有利であるからである。

そういった意味では、変速機の分野では、将来全てこれに置き換わるといった理想的な答えは、まだ見えていないとも言える。CVT についても、Audi・Luk が採用したチェーン式や、日産・ジャトコが採用したハーフトロイダル式などもあるが、それぞれ騒音やコストの問題を抱えており、ベルト式に置き換わる立場を確立するものとはなっていない。これ以外にも、コーン式、トラクション式といった新たな方式の実用化を検討する企業も少なくない。

CVT に限らず、AT も多段化が進められており、レンジ(変速比の可動範囲)を広げることで、更なる燃費向上が進められている。欧州を中心にセミ AT も搭載車種が増えており、様々な技術が検討されている。

変速機市場は、プレイヤーが限られた参入障壁の高い市場との見方が一般的であるが、見方を変えれば、画期的なアイデアさえ出てこれば、将来市場を席巻する可能性だってある魅力的な分野とも言える。自動車メーカーをはじめとする大企業だけの問題ではなく、アイデア次第では、中小企業、ベンチャー企業にも開発に参入する余地があるとも言える。
国内だけでも、年間5千億円を超える「変速機」という大市場をめぐり、今後も各社の開発競争から目が離せない。

<本條 聡>

  • コラム
  • 業界アンケート
  • 書籍&レポート
メールマガジン

住商アビーム自動車総合研究所が発信する各種情報をご紹介します。当研究所のスタッフが日々移り変わる自動車業界を、経営と現場を結ぶ視点で紐解いた記事やコラム、等です。

無料配信申し込みはこちら
PDF メルマガ見本はこちら

News -プレスリリース・メディア対応 自動車業界ライブラリ

UPページの先頭へ