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コラム

トヨタが「ハリアーハイブリッド」で採用の遮音性合わせ…

◆トヨタが「ハリアーハイブリッド」で採用の遮音性合わせガラス、5dB低減遮音性中間膜は積水化学工業製。フロントガラスは日本板硝子製。

<2005年03月31日号掲載記事>

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自動車用のガラスは、一般的に合わせガラスと強化ガラスの 2 種類が使われてきた。これらの概要は以下の通り。

1.合わせガラス
2枚のガラスの間に、PVB (ポリビニルブチラート)という粘着性の樹脂性の中間膜を挟み込むことで、割れにくくしたもの。
割れた場合にも、ガラスが飛び散らず、衝撃物も貫通しにくいため、安全性が高い。
国内では、フロントウィンドウに使うことが義務付けられている。
防犯性を高めることにも効果があり、フロントウィンドウ以外にも採用されるケースが増えている。

2.強化ガラス
製造過程で急冷することで表面に圧縮応力を持たせ、通常のガラスの 3~ 5倍の強度を持つもの。
割れた場合にも鋭利な破片になりにくい。
主に、サイド、リア、クォーターウィンドウに使用される。

過去、自動車で、ガラスに求められていた性能は、安全性、防犯性、紫外線の吸収等であった。しかし、近年、表面のコーティングや中間膜の機能を高めることで、遮音性や遮熱性など、新たな付加機能を持つガラスが開発されており、採用車種も増えてきている。

こうした、高機能自動車用ガラスの開発に大きな役割を果たしてきたのが、合わせガラス用の中間膜の最大手である積水化学である。同社は、自動車用中間膜では国内の 80 %、世界の 40 %のシェアを占める。同社が提唱する自動車用合わせガラスの中間膜が実現する機能の概要は以下の通り。

1)安全性
ガラスが割れても、破片が中間膜から剥れないため、飛び散らない。
事故時にガラス破片で怪我することを防止する。

2)防犯性
中間膜により、衝撃物が貫通しにくいため、故意にガラスを割るのも簡単ではない。
車上荒し等犯罪者の車内への侵入にも時間がかかることになり、防犯効果が期待できる。
3)紫外線カット
日焼けや皮膚ガンの原因となる有害な紫外線を99%以上カットする。
乗員へのメリットだけでなく、内装部品(プラスチック、皮革等)の退色、劣化防止にも効果がある。

4)遮音性
車外の騒音や風切り音を遮断することで、車内の静粛性を高め、快適性を向上させる。
通常の中間膜よりも遮音性を高めた商品では、最大 5db 以上の遮音効果を実現するものも実用化されている。
実際の環境上でのイメージとしては、車外の音が 75db (地下鉄内と同等)とすると、通常の中間膜を使用した車内では 45db 程度(話し声が飛び交う一般事務所と同等)なものが、遮音性を高めた中間膜を使用すると 40db程度(ホテルの客室や事務所の応接室)まで静粛になるという。

5)遮熱性
太陽の熱線(赤外線)をカットすることにより、車内の温度上昇を効果的に抑制する。エアコンの負荷を低減させることが可能であり、エネルギー消費の効率化や、エアコンの軽量・小型化が可能になることにより、燃料消費低減に貢献する。
フロントウィンドウに搭載することで、駐車中のハンドル温度や車内の気温を、通常の中間膜よりも最大 10℃程度低く抑えることが可能になるという。
また、従来の熱線反射ガラス等では、通信電波を遮蔽する性質があり、ETCやハンズフリーフォンが普及している現代では問題があったが、遮熱機能を持つ中間膜は、電磁波を透過するため、こうした電波障害も起こらない。

【出展】積水化学ホームページより抜粋

同社の遮音性中間膜は、海外の自動車や建築物を中心に積極的に採用が進んでおり、自動車業界では、米 GM (Cadillac)、独 DCX (Maybach)、仏 Renault (Clio)、仏 PSA (Peugeot307)等、韓国双龍(New Chairman)等に搭載されている。国内では、今回のトヨタ(ハリアーハイブリッド)が自動車で初めての採用とのことだが、今後も採用する車種も拡大していくと予想される。

また、同社の遮熱性中間膜は、トヨタ(アルファード、bB、プリウス、ラウム)、日産(エルグランド)、三菱自工(ek クラッシィ、グランディス、コルト)等に採用されており、新型車への採用が進んでいる。

同社によると、独自の多層押し出し成型技術により、既存製品と同じ厚み(0.76mm)で、遮熱性と遮音性の両方の機能を持つ新製品も開発しており、今年春から販売を開始するという。フロントウィンドウ上部の光よけのために、着色層も備える 5 層構造になっている。

国内板ガラス業界は、旭ガラス、日本板硝子、セントラル硝子のトップ 3 社でほぼ寡占状態にある。自動車用ガラスでは、自動車メーカーのグローバル展開にあわせて、国際的な供給体制が求められている。旭硝子は、ベルギーのグラバーベル社や米 AFG インダストリーズを傘下に収め、世界最大のガラスメーカーの地位を確立している。日本板硝子は世界 2 位の英ピルキントン社と、セントラル硝子は仏サンゴバンと提携している。世界の自動車用ガラスのシェア(2003年)は以下の通りとなっている。

旭硝子:                   30%
日本板硝子+ピルキントン:   23%
セントラル硝子+サンゴバン:  22%
その他:                    25%

【出展】日経新聞社推計

まさに、自動車用ガラス業界は、世界規模でのシェア争いが繰り広げられている業界と言える。

高機能化が進む建築用ガラスや国際的に需要が急増している液晶等薄型パネル用ガラス基板に比べ、自動車用ガラスは、高機能化が遅れており、価格競争も厳しい。一方、自動車メーカーとしても、ウィンドウ用ガラスは決して安い調達物ではなく、同一モデルでも複数のサプライヤから調達するのが一般的だと言われている。板ガラスメーカー各社が、価格競争を乗り越え、収益性を改善するためには、商品の付加価値を向上させ、差別化を図ることが最も効果的であろう。

自動車メーカーにとっても、環境性能(燃費)向上に貢献する遮熱性中間膜は、魅力的な商品であろう。京都議定書が発効し、また燃料の相場も高騰している昨今、消費者の問題意識も高まってきており、環境性能は、更に重要性を増す傾向にある。

当たり前のことだが、商品開発の基本は、顧客バリューの実現だと考える。どんなにすばらしい技術であっても、顧客が付加価値を得られないものであれば、新規顧客を開拓することも、既存顧客の厳しい原価低減を回避することもできない。その意味で、今回の高機能中間膜は、ガラスメーカーだけでなく、自動車メーカーにも付加価値を与える商品であり、王道とも言える戦略である。自動車業界に新たな付加価値をもたらすサプライヤの商品開発を期待したい。

<本條 聡>

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