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コラム

地方における公共交通

【地方の公共交通の現状】
 国土交通省が発表している「平成 28年度乗合バス事業者の収支状況」による
と、路線(乗合)バスの事業者 246 社のうち、63.8 %(157 事業者)が赤字
であり、特に大都市部(三大都市圏)以外の地域での赤字が拡大しているとい
った結果となっている。

 公共交通は、すべての人に対し必要な時に安全な移動を可能とする交通手段
である。しかしながら、地方の過疎地においては、運転手不足や赤字運営等に
よりバス路線の廃止が相次ぎ、公共交通が空白な地域の拡大、また高齢化によ
りマイカーで移動することができなくなった移動難民が増加、今後も更に増え
ていく事が見込まれており、国、地方自治体、さらには住民参加型による様々
な対策が行われている。

【地方の公共交通の取組み】
 京都府の京丹後市では、“空気バス”(乗客がおらず空気を運んでいる状態)
から脱却し、地域の活性化の核とするための取り組みとして、上限 200 円バス
を運行させている。公共交通の活性化で重要なことは、運行収支でみるのでは
なく、まちづくりの面で様々な波及効果があればよいといった行政方針のもと、
同じ結果となるにしても「700 円x 2 人」ではなく「200 円x 7 人」といっ
た発想で、多くの住民が乗る事で住民福祉の増進を図ることができるとの観点
から、「バスの運行」ではなく「乗車する人」に対し補助することを決め、運
賃設定がなされたものだ。

 また、京丹後市では、以下「かきくけこ」の公共交通施策を掲げている。

「か」観光・環境保全・過疎対策
「き」協働体制の確立・客観的評価主義の確立(運行収支のみで、その良し悪
   しを判断しない)
「く」車社会からの脱却 
「け」経済基盤整備・健康増進対策 
「こ」高齢者福祉・子育て支援・交通安全対策・交流人口の増加対策・国際化
   (外国人観光客の誘客)。

 200 円バスの利用者数は、2017年度(2016年 10月~ 2017年 9月)は年間 43
万 5769 人と、2006年導入当初(約 17 万)から大幅に増加しており、隣接す
る市や町にも同様の仕組みのバスが運行される等、広がりを見せている。

 さらに、京丹後市では 2013年から UBER Japan の技術を活用し、公共交通空
白有償運送を開始しているが、住民のための交通政策を実施してきた過去経験
を活かす事で、こういった新技術も、社会システムのなかの一つとして取り入
れられ、更により良い地域交通サービスの提供に繋がるのではないか。

 民間バス事業者が撤退した後の交通手段確保を目的に、地域住民が主体とな
ったコミュニティバスを運行している地域もある。運転手は地元で募った有償
ボランティアが交代で行っており、こういった住民運営型地域交通が展開でき
る地域は、不便な交通環境だけでなく、町おこしや地域活動に取り組んでいる
こと、住民との情報伝達の仕組みが整っていること、リーダーとなる存在の有
無といった特徴を持つ地域が多い。

 そういったことから、自主運行交通は、地域社会の関係性がより深い地域で
ないと成り立たず、また集落全体の高齢化が進む中、ドライバーの確保が最も
難しくなり、継続性に課題が残るものとなっている。課題の解決方法として自
動運転への取り組みがすすんでいるが、今までドライバーが齎してきた、地区
内のパトロールや乗客住民との会話等の付加価値をどのように提供していける
のか、住民ニーズをしっかりと反映し、利用者の増加を図ることで、効率的で
継続的な運行が可能となるのではないか。

 利用者の要求に対応し運行する形態のデマンド型バスを運行させる自治体も
出てきている。オペレーターによる配車、利用者の予約、運転手への指示等、
運行に際しては様々な課題があったが、ICT を利用する事で今後はサービス化
がより増えていく事が見込まれている。

 三重県の玉城町では、ICT を利用することで、外出支援や出かける楽しみの
機会創出といった目的以外にも、利用履歴による安否確認や、緊急通報といっ
た安全見守りサービス、更には台風などの防災情報や防犯情報等の安全情報配
信サービスといったものを複合したサービス提供を行っている。

【ソーシャル・キャピタルと交通】
 ソーシャル・キャピタルは、社会・地域における人々の信頼関係や結びつき
を表す概念であり、道路や橋を指す社会的インフラである社会資本を意味する
ものではなく、社会・地域における人々の信頼関係やネットワークを資本とし
て捉えるものである。

 アメリカの政治学者ロバート・パットナムはソーシャル・キャピタルを「人々
の協調行動を活発にすることによって社会の効率性を高めることができる、
『信頼』『規範』『ネットワーク』といった社会組織の特徴」と定義した。

 ソーシャル・キャピタルは目に見えない抽象的な概念ではあるが、治安の向
上、健康状態の向上、地域経済の発展等、経済・社会面において有益な効果が
期待できると考えられている。

 地域の人々の繋がり(ソーシャル・キャピタル)が豊かであると、地域の課
題に対する共通認識を作りやすく、住民が協力し地域の課題に取り組んでいく
といった効果があると考えられている。

 つまり、地域のコミュニティバスの存続可否には、ソーシャル・キャピタル
が深く関係してくるという事が言える。また、地域社会に参加し、人との繋が
りや信頼関係をえる為には、地理的な移動が必要となる。ソーシャル・キャピ
タルと交通は相互関係の上で成り立つものであると考えられる。

【交通政策基本法】
 2013年 12月に交通政策基本法が施行された。国民の交通に対する基本的な需
要が適切に充足されることが重要であるという認識のもとに、「豊かな国民生
活の実現」「国際競争力の強化」「地域の活力の向上」「大規模災害への対応」
などの施策について定められたものだ。国民の自立した生活の確保、少子高齢
化の進展に対応した交通機能の確保・向上、交通の安全の確保等を基本理念と
している。

 また、これらの基本理念を実現するために実施することが必要な交通に関す
る基本的な施策のなかに「まちづくりと一体となった公共交通ネットワークの
維持・発展を通じた地域の活性化」が定められている。

 社会参加の機会が広がるということは人々、まちが活気を持つことにつなが
り、交通が地域の活力を引き出すものと考えられている。

 2014年 11月には地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部が改正さ
れており、まちづくりと一体で持続可能な地域公共交通ネットワークサービス
を再構築するといった方向性が打ち出されている。民間事業者の事業運営に任
せきりであった従来の枠組みからの脱却、地方公共団体が率先し地域公共交通
網を再構築するものであるが、住民不在のものとなっており、空気バスからの
脱却には今後は上記にも事例を挙げているが、地域の実情の反映、市民の受け
入れやすさ、計画の遂行のしやすさといった観点から、住民の自主的な参加が
必要不可欠となってくるであろう。

【公共交通に望まれること】
 人口減少、高齢化が進む社会において、安全で安心な持続可能社会の実現の
ためには、交通、エネルギー、産業が一体となった事業創出など循環型の地域
経済を目指す必要がある。そこには総合的な交通政策が求められる。

 地域交通は、買い物、病院への通院等、人々の日常生活に必要不可欠な外出
を支えるだけでなく、生きがいをもって他者と交流したり、学びの場に参加し
たりするためにも重要な役割を果たしている。

 交通は、移動を確保するだけでなく、人との交流により、地域を豊かにする
ことができ、それにより、喜びや安心できる地域社会がうまれる。

【これからの公共交通】
 コミュニティバスを走らせても需要が少なく、廃止に追い込まれる例も多く
ある。不便なのにも係わらず乗って守ろうとするだけでは持続できず、住民が
乗りたいと思う便利な乗り物として、企画の段階から住民が参加し、地域と共
同で地域社会をつくるなかで移動手段としての交通を考えていく必要がある。
赤字により撤退する民間バス事業者の代わりにコミュニティバスを運行させる
といった、もともと乗客数が見込めない状況の中、住民のニーズをしっかりと
汲み上げるためにも、実際に利用する住民が主体となり、地方自治体と一緒に
取り組んでいく必要がある。

 ICT や自動運転といった技術は、それ自体ソーシャル・キャピタルとは関係
のない無機質な技術にも思えるが、利用者の観点から社会システムの中に組み
込まれることで、より良い社会を造りあげていく事が可能となる。それがソー
シャル・キャピタルの更なる醸成に繋がり、また、自然と新しい技術が受け入
れられた社会となることが、つまりは社会受容性が醸成された社会であると言
えるであろう。

<成田 朗子>

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