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コラム

2030年 未来都市とモビリティのあり方

 

 今回は「2030年 未来都市とモビリティのあり方」と題して、9月 19日配信
のメールマガジンにおいてご回答をお願いしたアンケートの結果を踏まえての
レポートです。
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=8041

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【はじめに】

 9月 21日、東京モーターショー 2017(以下 TMS と略)の開催概要が発表さ
れた。「BEYOND THE MOTOR」を合言葉に、主催者テーマ展示「TOKYO
CONNECTED LAB 2017」をはじめ、従来の「クルマ」に閉じない「未来のモビ
リティ社会」をテーマとした、世界最先端をいく数々の展示や催しが行われる。

 そうした中、本メルマガにおいても「クルマ」を超えて、「未来のモビリティ
と都市」という観点から論考したい。

 加えて、一先ず、「2030年」と置いてみた。国内外での自動運転に関する将
来予測や計画の中で、2030年がある意味大きな「区切り」として扱うケースを
良く目にする。例えば日本の「官民 ITS 構想・ロードマップ 2017」でも「2030
年に世界一安全で円滑な道路交通社会を実現すること」が目標として記載され
ている。日本のみならず、欧米においても 2030年を大体の目途に、ドライバレ
スの自動運転がある程度、社会に定着することと考えられている様だ。

 尚、この種テーマを取り扱う際、どうしてもメルマガの文字のみによる表現
では限界に突き当たる。よって、表現を補足する意味で、できれば読者の皆様
には、文章中のキーワードを使いネット検索して頂くことがご理解の一助にな
るかと考える。

【読者アンケートの結果】

 本題に入る前に、読者の皆様にお願いしたアンケートの結果について、以下
ご連絡したく。『新しい東京』の目指す三つの姿を選択枝として利用させて頂
きましたが、結果は、「『モビリティ』を活用した『セーフシティの実現』」
がブッチギリ。自動運転による事故の無い移動、とか、地震等大規模災害時で
あれば、緊急速報とクルマとが直接繋がることにより、クルマが乗客を乗せて
安全なところ(路肩等)に停車する等の対応が人間よりも確実にできることへ
の期待の表れと考えます。

 また、残る選択肢、つまり、モビリティを通じて『ダイバーシティ』または
『スマートシティ』についても、夫々、来るべき高齢化社会に対応しつつあら
ゆる人々に「移動」を確保するモビリティ社会の実現とか、自動運転による渋
滞の無い交通制御の実現に向けた、強い関心や期待のお言葉を頂きました。ご
協力頂きました読者の皆様に改めて深謝申し上げます。

1. セーフシティ x モビリティ(安全な街つくりとモビリティの実現。交通安
全に加え、台風・地震等の災害対策、テロの回避への貢献、サイバーアタック
への対策、インフラ保全管理への貢献を含む)           87.4%

2. ダイバーシティ x モビリティ(高齢者や子供、外国人を含め、誰もが便利
に、シームレスで、混雑や渋滞もなく、快適な移動をエンジョイできる街づく
りとモビリティの実現)                      6.8%

3. スマートシティ x モビリティ(大気汚染や地球温暖化といった環境問題に
優しく、しかもコスト的にスマート、加え、駐車スペースの削減により、土地
も有効活用できる、街づくりとモビリティの実現)          3.9%

4. その他のシティ x モビリティ                  0.5%

5. その他の意見                         1.5%

【フランクフルトモーターショー(IAA)】

 TMS に先駆けて 9月に開催された IAA を見学した。 IAA は「世界最大のモー
ターショー」と言われる。嘗て来場者数は 100 万人を上回った。然し、第 67
回の今回は、約 81 万人に留まったという。

 そうした中にあっても、メルセデスは SMART を使ってその CASE 戦略そのも
のを体現した”smart vision EQ fortwo”を通じて、単なるクルマ単体に収まら
ない、新たな世界観を演出していたのが印象に残った。都市での運用を意識し
た二人乗りライドシェアサービスを、ミュージカル宛らの演出を用いつつ、
「新たなクルマによる新たなライフスタイル」という形で提案していた。

 加えてメルセデスはボッシュと共同で、両社共通の地元シュツットガルトに
て自動運転が導入された後の近未来の姿を描き公表していた。

 また、両社は世界に先駆けて、2018年からメルセデス・ベンツ博物館にてオー
トバレーパーキングの実証実験を開始するとも発表した。オートバレーシステ
ムにより、駐車に必要なスペースは現在の 1/2 または 1/3 に収めることが可
能とも言われる。また、クルマ自体が完全自動運転化した際には、今の様に駐
車場が点在するのではなく、限られた一定箇所に「詰所」の様に集約されると
も言われており、例えば東京であれば、これまで駐車場として使われてきた約
200 平方キロメートル、つまり、東京ドームの 4180個分の土地が新たに有効活
用することが可能になるとも言われる。もし、そうなれば、街の景観も大きく
変わるであろう。

 かくして筆者は、 IAA を通じてまた新たなチャレンジを垣間見た様な思いを
抱いた。

【モビリティと未来都市】

 「モビリティと未来都市」というパラダイムは実は可也昔から取り上げられ
て来た。古くは、GM が 1939年のニューヨーク万博にて展示した未来都市「フ
ューチャーラマ」のコンセプトがあげられる。そこで、GM は「1960年までに誰
もが無線操縦システムにより制御されたクルマで、自動運転道路を快適に移動
できる時代がくる」と予想した。「運転の煩わしさから逃れたい」という欲求
は実は人間の根源的な思いなのかも知れない。展示は当時、大変話題になった。

 然し、考え方そのものが如何に人々の心を掴んでいようが、その盤となるテ
クノロジーがそのレベルについていなければ発明は成り立たない。「フューチ
ャーラマ」はあくまでもコンセプトに留まり、1960年にはそのような未来都市
はできなかった。

 でも「今」ならどうだろうか? 自動運転の技術開発が進む中、「モビリティ
と未来都市」の構想図は色々なところでよりリアリスティックに描かれてい
る。例えば:

〇 FordHub @ Fulton Center: ニューヨーク・マンハッタンの世界貿易セン
タービル近くに 2016年にオープンした Ford の新たな発信基地。クルマ自体は
販売せず、代わりにカルチャー的な表現でクルマ社会を演出した施設の中に大
きなスクリーンで、近未来のアメリカの都市のイラストが展示されている。そ
こには、「Ford はライドシェア用の完全自動運転車を可也の数量で 2021年に
発売する」と記されている。

〇 Driverless Future Challenge: ニューヨーク在のアートギャラリー、
Blank Space が主催した、ドライバレスカー導入後の近未来のニューヨークに
関する構想のコンテスト。選定にはニューヨーク市も参画。ドライバレス化の
結果、嘗てクルマの駐車に使われていた路肩部分を有効活用し、町を美しく蘇
らせる提案や、ドライバレスシャトルサービスの普及により、雨の多いニュー
ヨークでも快適な移動を可能にする等々。

〇 Smart City Ohio/Columbus: 2016年 6月、米国オバマ前政権は「スマー
トシティ・チャレンジ」の優勝者にオハイオ州コロンバスを選定した。応募し
た 78 都市の中から選ばれたコロンバス市には、米運輸省より 40 百万㌦、加
えて民間企業スポンサーから 20 百万㌦の予算が割り当てられた。コロンバス
は今後 2020年の実現に向けて、「美しい都市」「健康な都市」「繁栄する都市」
というコンセプトの実現に向けて取組み中だ。

〇 Singapore Tengah New Town :  シンガポールは 2015年に発表したサスティ
ナブル構想の下、自動運転を軸とするニューモビリティの導入と新たな街つく
りの実現に取組んでいる。ご存じの通り、nuTonomy によるレベル 5 自動走行
を搭載したタクシー(但し、現時点では無人走行はしていない。同社トップに
よると、「未だ無人運転を実現できるまでには、完璧な安全性が確保できてい
ないから」と返答を頂き、却ってその謙虚さに感心したが)をはじめとする国
内外のベンチャー企業の育成にも積極的に取り組んでいる。それに加え、今は
未開の同市郊外 Tengah の田園地区を切り開き、自動運転をテーマとする新興
地区を開発することを計画中だ。

等々。

【都市交通のあり方】

 再び、昔にさかのぼる。そもそも、クルマが普及しだした 1910-20年代は、
そもそも今に近いクルマ自体がニューモビリティだった。このニューモビリテ
ィを如何に都市に調和させ、活用しうるか、という議論はこの時も取り上げら
れた。例えば、1920年代後半に著名な建築家ル・コルビジェはパリを舞台に高
層ビルと自動車交通を組み合せた「パリ・ヴォアザン計画」を発表した。コル
ビジェは、この計画を通じ、クルマ交通を活かすことで「これまでにない高い
価値を都市に与えること」を目標とした。因みに、「ヴォアザン」とは、コル
ビジェが愛したクルマのモデル名(開発者の名前)である。

 続いて、第二次大戦後、欧米でモータリゼーションが進む中、「クルマ+都
市」の観点が、イギリスのブキャナン・レポート(1963年)にて本格的に取り
上げられた。急増するクルマにより事故や混雑や騒音といった弊害が広まる中、
同レポートでは対策として、「歩道と車道の分離」が提案され、更には、「居
住空間への居住者以外によるクルマでの乗入を禁止する」都市計画が提案され
た。更に、道路を主要幹線道路・幹線道路、補助幹線道路・区画道路と段階的
に整備するべきだと唱えた。これらの考え方は何れも未だに有効なものであり、
街づくりに生かされている、と言われる。

 2016年に建築デザイン会社 WSP Parsons Brinckerhoff 社と Farrell 社とが
共同ではイギリスを舞台に自動運転社会のイメージ図を発表した。その中で、
自動運転が未来都市デザインを如何に変えるかが提案されている。「自動運転
だからと言って、必ずしも道路インフラの大幅な削減を必要とする訳ではない。
自動運転車両は歩行者や自転車等、交通環境を考慮しながら走行することがで
きる。結果、自動運転の導入に伴い、徐々に(革命的でなく)革新的に、我々
の空間が持つベネフィットが最大限活用できる様になる」と唱える。例えば、

〇 自動運転車が走行するエリアでは、その人間を上回る認識技術により、歩
行者も自転車も事故の心配なしに安全に走ることができる。

〇 路上にあったさまざまなものがなくなる。例えば、道路標識や、制限速度
表示、更には信号までも。

〇 駐車場は今の様に決まった場所を占有する代わりに、よりフレキシブルで
便利な場所に、降車場乃至は待機場所として使われる。結果、新たに 15~20
%の都市空間がより有効に活用できる。

〇 都市の中に、商業目的やレジャーに活用できる空間が新たに生まれ、歩行
者をはじめ皆が新たに生まれた空間を自由に活用することができる。

〇 自動運転車が、これまでバラバラだった鉄道、バス、海上輸送等の色々な
交通手段をシームレスに繋ぎこみ、利用者に大きな利便性をもたらす。

 こうして、嘗てのブキャナン・レポートの様に、然し、今度は単なるクルマ
ではなく、自動運転を軸に都市に新たなソリューションがもたらし、未来都市
の都市へと促す構想が今色々なところで始まろうとしている。

【東京のチャレンジ】

 東京に舞台を戻したい。遡ること 1950年に東京を我が国の首都として相応し
く計画し、建設すべく、首都建設法が整備された。その後、同法は首都圏整備
法となり、ほぼ 10年の周期で見直されて運用されている。その中で、前回の東
京オリンピックの頃、高度成長期には 1960年代に日本がモータリゼーションを
迎え、それを支える高速道路等インフラも急速に整備された。そして、その後、
経済が成熟期に至るや、都心部のムダな交通を抑制し、「デ・モータリゼーシ
ョン」が進められた。東京の鉄道ネットワークは世界一と称され、公共交通分
担率は 49 %と、パリ(40 %)、ロンドン(36 %)を上回る。
 
 この様に、東京は常に更新され今日に至った。開発のピークが重複しない様、
計画的に順番に地区ごとに更新を繰り返してきた。東京駅周辺の丸の内の大改
新が終了、今後は渋谷、更にその後は品川、という順番で今後とも生まれ変わ
りは継続し、常に新しいどこかが生まれている。斯様にして、東京は、未だ交
通渋滞をはじめ色々な課題はあるものの、漸進的に、住む人や訪れる人に多く
の利便性を与え、魅力的な街であり続ける様、進化してきた。

 2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えようとする中、これを更
なる飛躍のチャンスととらえ、現行都政が昨年 12月に発表したのが「都民ファー
ストでつくる『新しい東京』」という 2020年に向けた実行プランだ。この内容
詳細は、400 頁近くにわたる内容で東京都から公開されており、詳しくはネッ
トでご覧頂くことも可能な為、多くは触れぬものの、前述の「 3 つのシティ」
を基本コンセプトとしてこれを実現する詳細なロードマップが描かれている。
その中には、現在、内閣府が推進する「 SIP 自動走行システム」による次世代
都市交通システム( ART: Advanced Rapid Transit ) の導入、羽田空港の拡
充と、自動運転システムの実証推進も織り込まれている。2020年に向けて東京
はまた大きく変わりそうだ。

【Beyond 2020に向けて】

 まずは短期的には東京オリンピック・パラリンピックを成功させることが、
東京の課題であるが、一方で、むしろその後が東京にとっての本当の試練とも
思われる。

 上述の実行プランの中でも、触れられえているが、2020年以降、東京への新
たな課題がより顕在化してくる。

〇 東京都の人口は目下、増加中ながら、2025年に 1,398 万人でピークを迎え、
その後は減少に転じる。2040年には今の人口 1,352 万人を下回り、継続して減
少する見通しだ。

〇 東京都の高齢化率は目下 22.7 %であり、今後上昇を続け、2030年に 25
%を超え、4 人に 1 人が高齢者となる。

〇 東京の内部には、空き地、空き家等の低未利用地がどんどん生まれており、
今後とも増え続けることが懸念される。「都市のスポンジ化」と言われる事態
が新たな課題として既に生まれている。

 オリパラの熱が通り過ぎた後の2020年代、今から経済も縮小が予測される。

【2030年に向けて、『自動運転』への期待】

 それでも、何とか、我々は楽しく生活して前向きに生きなければならない。
前出の『新しい東京』レポートでも、「Beyond 2020 東京の未来」として、次
の 4 つがうたわれている。

〇 いきいきと暮らせる都市

〇 生涯にわたり自分らしく生きられる都市

〇 新時代の技術と懐かしさが融合する都市

〇 革新が生まれ人々を惹きつける都市

 これまで述べてきた様に、これらの実現には、自動運転が大きく貢献ではな
いだろうか? 2020年 東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が進
む中、その先の未来を胸に、今から構想を考えて行きたい。自動運転の技術と
新たな都市のルールやインフラとが融合すれば、上述の 4 つを活かせる都市が
生まれると思う。

 ニューヨーク、シュツットガルト、シンガポール、そしてロンドン等々、い
ずれでもなく、またいずれをも凌駕する未来都市、未来の東京の姿について、
「BEYOND THE MOTOR」、つまり、「クルマを超えて」実現されうる姿はどのよ
うなものか、今回の TMS を機会に改めて考えてみたい。

<大森 真也>

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