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コラム

ライドシェアは日本で普及するか

 

 今回は「ライドシェアは日本で普及するか」と題して、8月 22日配信のメー
ルマガジンにおいてご回答をお願いしたアンケートの結果を踏まえてのレポー
トです。
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=8017

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【はじめに】
 ライドシェアは、基本的にドライバーが個人的に所有しているマイカーをそ
のまま使い、「自分の移動のついで」、もしくは「商業的に誰かを乗せること
を目的」としたサービスを行うことをいう。

 「自分の移動のついで」に乗せるサービスに関しては、乗客という扱いでは
なく、同乗者として移動費用は割り勘とする等、実費の枠をでないことが前提
となる。フランス発のブラブラカー等何カ国かで幅広くこと業展開しており、
日本でも、中・長距離の移動を仲介する notteco や nori-na といった業者が
同様のサービスを行っている。

 「商業的に誰かを乗せることを目的」とした場合、既存の公共交通サービス
と重複することになり、世界各地でタクシー業界等から反発を受けるなど、普
及していくためには問題や課題が多いサービスとなっている。

 日本においても、ライドシェアをめぐる動きは、規制緩和を目指す業界から
の要求や、既存業界の動向等、活発な議論の対象となっているといえよう。

【ワンクリックアンケートの結果】
 そのような状況下、皆様に対しライドシェアは将来日本で普及するか、普及
する場合はその加速要因について意見を伺ったものである。結果は以下の通り。

 1.法制度が整備されることで普及は進む 75%
   
 2.自動運転等、新しい技術との組み合わせによるサービス展開により普及が
  進む 9 %
       
 3.過疎地等、局地的・限定的なサービス展開に留まる 9%

 4.日本ではライドシェアは普及しない 6%
   
 5.その他 1%
 将来日本においてライドシェアが普及すると回答頂いた方が多く、その中で
も特に法制度の整備が普及促進要因であると考えられている方が多いという結
果となった。

【現在日本で実施されているサービス】
 現行の道路運送法に抵触しない形で、日本でも色々なライドシェア関連のサ
ービスが展開されている。

 前述の中・長距離間のライドシェア(相乗り)のマッチングサービスを行っ
ている notteco や nori-na といった業者や、レンタカー旅行者とドライバー
をマッチングさせるサービスを提供する業者等がその例である。

 また、2006年の道路運送法の改正に伴い、公共交通空白地での有償運送や福
祉有償運送が認められ、各地でサービスが展開されている。

 世界的に代表的なシェアリングサービスを展開する Uber 社は、日本におい
て福岡県での実証実験に関しては道路運送法に抵触するといった国土交通省か
らの行政指導により中止となったが、その後、上記公共交通空白地有償運送の
枠組みで、京都府の京丹後市でサービスを始めた。Uber 社はその他にも北海道
の中頓別町でも実証実験を行っている。

 サービスの運行主体は特定非営利活動法人(NPO)等に限られるが、代替の公
共輸送手段がない過疎地向けのサービスとして、本制度に対する需要は益々増
加していくと思われる。

 しかしながら、運行に際してはその地域の運営協議会との合意形成が求めら
れ、既存交通サービスが存在するとの理由から許可されないケースもあるとい
う。既存業者にとってはただでさえ厳しい財政状態のなか運行サービスを実施
しており、更なる経営悪化に繋がりかねない事態であることから、少しでも重
複する可能性があるとすれば反対する状況も理解できる。そういった事情は鑑
みるものの、利用者が移動の自由を少しでも享受できるチャンスを与えられる
ような、共存するための仕組みづくりが検討されていくことを期待したい。

【ライドシェアを巡る国内の動向】
 内閣府が取りまとめている「規制改革推進会議」や、「日本再興戦略 2016」
を受け設置された「シェアリングエコノミー検討会議」のなかでもライドシェ
アについての検討がなされており、また、未来投資会議でも、ライドシェアの
推進についての提言がされている。

 経済界の動きとしても、新経済連盟において新たな経済成長の柱の一つを
「シェアリングエコノミー」とし、規制改革ホットラインへの提案や、「ライ
ドシェア実現に向けて」といった提言を経済産業大臣、国土交通大臣、IT 政策
担当大臣、経済再生担当大臣、規制改革担当大臣に宛に提出する等、ライドシェ
ア解禁に向けた動きを行っている。
 一方、全国ハイヤー・タクシー連合会は昨年 6月にライドシェアを断固阻止
するとの決議を採択。また、日本バス協会もタクシー業界との連携強化の申し
合わせを行っており、ライドシェア解禁を阻止する動きを見せている。

 さらに、タクシー業界もこういった動きに反対するだけでなく、サービスの
高度化に向けた変革が始まっている。昨年 10月にサービスの活性化にむけ今後
新たに取組む 11 項目を策定しており、取り組みが開始されている。

 その中の一つとして、タクシーの相乗りサービスの実証実験が今年度中にも
東京都内で開始される予定だ。

 乗合事業の許可を取得するためには地元の協議会の同意が必要であったこと
から、実質過疎地など一部地域への展開にとどまっていたサービスであるが、
東京オリンピック・パラリンピック等、訪日外国人の増加への対応策の一つと
して、検討が行われているものだ。

 また、それ以外にも事前確定運賃、定額運賃、需要に応じた運賃制度、運転
士の評価等、実証実験を重ねながら制度化が進んでいくとみられている。こう
いったサービスの多様化はライドシェアに対抗する手段として考えられたもの
かもしれないが、利用者としてサービスの選択肢が増えていくのは歓迎すべき
ものであろう。

【オンデマンドシャトルサービスについて】
 先週筆者がイスラエルを訪問した際に、相乗りシェアサースの Gett 社、Via
社に話を聞く機会があったが、両社とも都会でのオンデマンドシャトルサービ
スの提供に力を入れているとのことで、欧米でのサービス展開を進めていた。

 個人が自家用車でサービスを展開するケースもあるが、国の規制がある場合
はタクシー事業者が運用者になる等、サービス提供者は変わってもプラットフ
ォームとしては共通で使えるもので、日本でも前述の相乗りタクシーが普及す
れば有効な移動サービスとなりえると感じた。

 サービスの差別化のためには、動的情報を得るための情報提供先との提携が
重要であり、データ量を多く取得していくことで、広範囲の視点から最適なル
ート決定が可能となるとのこと。更に交通流の整流化にも繋がるとのことで、
渋滞解決にも役立つといったコメントもあり、各社とも自社のアルゴリズムに
対し自信が伺えるものであった。

 東京都での相乗りサービスの実証実験でも配車アプリの開発を進めていると
いった報道もある。情報量が多く、複雑な交通環境下に置かれている都会でこ
そ差別化が期待できるものであり、利用者にとって使いやすく、さらに交通環
境の改善にも役立つサービスとなることを期待している。

【将来に向けて】
 世界各国でのライドシェアの法制度を俯瞰すると、ライドシェアを禁止とす
る理由として以下二つが大きく上げられる。一つはタクシードライバーの雇用
保護にかかわるもの。苦労してライセンスを取得したタクシードライバーが、
一般の人に仕事の領分を侵食されるのは不公平であるというものだ。もう一つ
は輸送の安全、利用者の保護にかかわるものである。ドライバーの状態、車両
の整備、事故時の対応等、現行のライドシェアサービスでは利用者が安全を確
保できるだけの仕組みがないといったものだ。

 更に相乗りサービスとなると、住所の特定といったプライバシー侵害や犯罪
に繋がるといった危険もある。

 ドライバーが不要となる自動運転になった場合は、乗客同士が乗合わないサ
ービスであれば、そのようなプライバシー侵害や身の危険から守ることが可能
となる。

 他人の世話になることに抵抗がありがちな日本人にとっても利用しやすくな
り、また人材不足に悩む地方にとっても、歓迎されうる技術になるであろう。
今回、コメントとして各回答にまたがって「自動運転」をキーワードに挙げら
れる方が多かったが、法制度もこういった技術進化に対応したものになってい
く必要がでてくるであろう。
 ダイムラー社が Via 社と合弁会社を設立すると 9月 4日に発表があったが、
ダイムラー社が Via 社と組む狙いとして、将来自分で自動車を購入しなくなっ
た際に、どういった形の車が求められるのか、つまりライドシェアに最適な車
両の開発を行っていきたいといった理由があげられていた。

 今回アンケートで、車を綺麗に使用することに対してコメントをいくつか頂
いた。車内を清潔に保つ技術が今後普及の鍵になるのではないか、といったご
意見もあり、今後どういった車両が最適化されていくのか、将来が楽しみであ
る。

【さいごに】  
 アンケートで MaaS (Mobility as a Service)の観点から回答頂いた方もい
た。確かにライドシェアは移動手段の一つの方法でしかなく、他交通機関と組
み合わせることで更にサービスの向上が目指せるものになる。

 移動手段が多様化することで、利用者が今以上に快適なサービスが享受でき
るような社会が来ることを期待したい。

<成田 朗子>

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