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コラム

PMV(パーソナルモビリティビークル)はどのような場所で必要か?

今回は9月20日付メールマガジンにおいて「PMV(パーソナルモビリティビー
クル)はどのような場所で必要か?」と題してご回答をお願いしたアンケー
ト結果を踏まえてのレポートです。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7764

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今回のアンケートの結果をご紹介します。

【設問】
PMV (パーソナルモビリティビークル)はどのような場所で使うのが便利と
思いますか?ただし、PMV として、「超小型四輪車」や「立乗り型移動支援ロ
ボット」に限定して考えることにします。
【ワンクリックアンケートの結果】
1.空港や駅、コンベンションセンター(展示会場)    43%
2.ショッピングセンター                                                  9%
3.公園や動物園                                                             10%
4.自宅から最寄りの鉄道駅                                                        24%
5.その他                                                                14%
【PMV試乗体験記】
皆さんは、「超小型四輪車」や「立乗り型移動支援ロボット」等の PMV に乗
られたことはあるでしょうか?私は今まで二、三の PMV に乗っただけで、今回、
まずはいくつか PMV に試乗させていただきました。そこで、はじめに私の「PMV
試乗体験記」をご披露させていただきます。

・最初に試乗させていただいたのは「日産ニューモビリティコンセプト」です。
日産レンタカーが横浜市で、「チョイモビ ヨコハマ」という名称の下、カー
シェアリング事業を展開しています。安全運転等について簡単な講習を受け
た後、チョイモビの運転席に座りました。後部席には指導員の方が同乗し、
そのガイダンスに従い、公道を走りました。普通の車を運転するのと大きな
違いはなく、容易に運転出来ることにむしろ驚きました。オーソドックスな
車作りのコンセプトなのだろうと思いました。乗り心地は、車体がしっかり
して、丈夫な感じです。週末、近所のスーパーに一人で買い物に行くのはこ
れがいいなと思います。ただ、あまり大きな荷物を積むのは難しそうです。

・タイムズ 24 が都内で展開するカーシェアリングに、トヨタ自動車の「i-ROAD」
が含まれます。タイムズ 24 の日比谷公園地下駐車場で講習を受け、試乗さ
せていただくことができました。i-ROAD は前輪 2 つ、後輪 1 つの超小型三
輪車で、後輪ステアリングであるのが特徴です。そのため、例えば右左折す
るとき、ハンドルを切り、やや遅れて車体後部が曲がり始めます。これは普
通車の運転と少し異なる運転感覚です。講習では様々な走行シチュエーショ
ンに応じて、実車に乗って運転のコツを習いました。1時間以上に及ぶ講習
の後、いよいよ公道に出ます。i-ROAD は一人乗りなので、私一人が運転席に
座ります。指導員が乗ったもう一台の i-ROAD が前を走り、道案内してくれ
ます。今まで味わったことのない、新感覚の乗り物を感じます。楽しく、壮
快な気持ちになります。例えば、スピードを出して右左折するとき、車体が
バイクのように傾きます。普通の 4 輪車では味わえない感覚です。勿論、傾
いても倒れることはないそうです。講習に時間はかかるが、一度マスターす
れば、新感覚の走行を楽しめる PMV と思いました。

・世界のいろいろな場所で活躍している立乗り型移動支援ロボットのセグウェ
イ(Segway Personal Transporter; 以下、Segway)を、セグウェイジャパン
の建物敷地内で試乗させていただきました。Segway は電動二輪車。アクセル
やブレーキ操作なしに、重心移動によって移動方向や移動速度を制御して走
行します。両足で車体の上に背筋を伸ばして立つとその場で静止します。ハ
ンドルを前に向かって押すと、前進します。前に押す力の強さに応じて、ス
ピードの加減速が出来ます。ブレーキがないので、車体を止めるのも、ハン
ドルを押す力加減で行います。ハンドルを押しながら顔を例えば左に向ける
と、車体は左に向かい円弧を描き始め、回転します。運転操作に慣れてくる
と、Segway が体の一部になったような一体感が感じられます。身体のバラン
ス感覚が試されているようで、不思議な心地よさがありました。よくぞこう
いう面白い立ち乗り型の PMV を作ったものと思い、イノベーションを感じま
した。日本では規制の関係で、公道での走行は一部地域(茨城県つくば市と
東京都世田谷区の二子玉川エリア)に限られており、今のところ公道以外で
の利用が中心ですが、施設内での警備巡回、公園等でのガイド付きツアー、
ゴルフ場での利用等で需要が高いそうです。試乗させていただきながら、日
本ももう少し規制を緩めてこういうイノベーションをいち早く取り込むこと
が大事ではないかと思いました。

・「電動車いす」はアンケート対象から除外したのですが、以前試乗したこと
がある 4 輪駆動の電動車いす「WHILL (ウィル)」が気になって、本社を訪
ねお話を伺いました。WHILL ㈱によれば、「車いすユーザーの人も、そうで
ない人も乗ることができる、全く新しいカテゴリーのパーソナルモビリティ」
が WHILL であるということです(同社の カタログより)。簡単な説明を聞
いただけですぐ乗れます。後輪を中心にその場でくるくる回転でき、小回り
がきくのが印象的です。これも乗る人との一体感を感じさせる PMV です。電
動車いすとして、公道(歩道)での走行が可能です。イオンのショッピング
センターで試乗会を開催した他、今後、空港施設での試乗等も展開するそう
です。また佐賀県の基山町と言う町では、WHILL を使い、お年寄りや足の不
自由な方が買い物に出かけるのを促す「商店街買い回り実証実験」をスター
トさせたそうです。超小型四輪車としての可能性を合わせ持つ PMV と思いま
す。ただ、雨風をさえぎる屋根や窓はないので、その分、利用は制限されそ
うです。
【アンケート結果について】
次に、アンケート結果と皆さんからいただいたコメントを下に考察します。

・「空港や駅、コンベンションセンター(展示会場)」が 43% と最多でした。
比較的広い場所で、かなりの距離を移動する場所なので、移動にかかる時間
と労力を省きたいと言う気持ちがこの高い数字に表れていると思われます。
ただ、「混雑する場所では使えないだろう」というコメントがありましたが、
確かに混雑した状況で PMV をいかに利用するかは課題です。一定の対象者に
利用者を限定する等、運用面における工夫が求められるでしょう。これらの
施設で、警備巡回など、業務目的で PMV を利用するのはかなり有効だろうと
思います。

・「ショッピングセンター」は 9% という結果でした。これも比較的広い場所
での移動です。コメントには、「広いショッピングセンターの中で買い物商
品を持っての移動に便利」、「買い物の荷物を目的の店舗まで自動で案内し
てもらえると便利」などがあります。身近なショッピングセンターで PMV を
利用したいという気持ちと思います。WHILL がイオンと共にショッピングセ
ンターで試乗会を行ったのも、将来の本格的な利用を目指してのことと思わ
れます。一方で、ショッピングセンターも曜日や時間帯により、混雑が避け
られない場所なので、導入に向けて課題も多いと思います。

・「公園や動物園」が 10% でした。ここでは Segway の利用が適しているかも
しれません。実際、Segway は各地の観光施設や広い公園などのガイド付きツ
アーで利用されています。お年寄りやお子さん、体の不自由な方には、WHILL
の利用が適していそうです。

・「自宅から最寄りの鉄道駅」が 24% とかなり多い結果でした。いわゆる「ラ
ストワンマイル」のモビリティです。大都市圏においては毎日の通勤や通学
で、鉄道やバス等、公共交通の利用が移動の大部分を占めますが、自宅や会
社・学校等から電車の最寄り駅やバス停までの移動など、公共交通による移
動の前後にある短距離移動に PMV は適合するだろうという考えです。多数の
コメントが寄せられました。「自宅から駅までの距離が遠い高齢者向けに公
道で利用出来ることが必要」、「これからの高齢化社会・地方の過疎化を考
えると、軽自動車よりも手軽な移動手段が求められると考えられる」等、高
齢者へ配慮したご意見。「早くメーカー・行政共々、実用化に向けて動いて
いただけることを願っています」という要望や願い等です。ラストワンマイ
ルで利用される PMV の種類は、利用される方の個々の事情に応じて様々だろ
うと思います。ここで大きな課題は、インフラ側の対応だと思います。大勢
の人がラストワンマイルに PMV を利用するようになったとき、インフラ側は
それを受け入れられるかと言う問題です。ラストワンマイルの移動実現に向
けて期待も大きいですが、解決すべき課題もまだまだ多そうです。メーカー
や行政・自治体、利用者等、関係者が一丸となって考えて行くべきテーマな
のだと思います。

・「その他」は 14% でした。コメントでは、今回の選択肢に挙げた以外にも、
いろいろな場所で PMV の利用可能性があることが伺われました。「自宅から
数 km 圏内の目的地を問わない自由な移動(買い物、駅への移動)」、「自
宅、自分の主たる職場から近隣への移動」等は、ラストワンマイルよりも広
い生活圏、職場圏での利用と言う考え方だと思います。さらに距離を広げて、
「近距離通勤(片道 10km 程度まで)」というコメントもあり、今までの車
の代わりに、PMV を通勤手段として積極的に利用したいというご意見と思い
ます。
【どうしてPMVが必要なのか】
今回、i-ROAD を開発されているトヨタの方、また「日産ニューモビリティコ
ンセプト」を開発されている日産の方にお話を伺うことができました。非常に
参考になる考え方がありましたので、ご紹介させていただきます。(ただし、
これらは、お話を伺って、私自身が理解した内容であり、両社の公式見解とし
て記載するものではありませんので、御了解ください。)

<トヨタ自動車>
PMV は「小型」であることが特徴だが、小型であることのメリットとは何か?
小型といっても、軽自動車ではまだ大きく、バイクくらいのサイズでないと小
型のメリットは出にくいだろう。バイク並みのサイズなら、まず駐車スペース
が普通の車の半分で済む。次に PMV の使い方として、「所有(占有)」と
「シェアリング」の二通りがある。前者に付いては、「Open Road Project」と
言う名称で、東京都の一部の地域限定だが、一般の方々に1ヶ月間、i-ROAD を
使っていただき、使い勝手その他のご意見をいただきながら、実証を行ってい
る。後者については、タイムズ 24 と組んで、これも地域限定だが、i-ROAD を
カーシェアリングで提供させていただいている。ひと一人がミニマムのエネル
ギーを使って、サイズも最小にして、もう一度車作りを根本から考えてみよう、
周りの環境も都市化の進行や人口の高齢化などの動きがあり、車によるモビリ
ティにもこれらの変化を反映させる必要があるだろう。そのような思いがあっ
て、2003年頃から PMV を開発してきた。ところで、自動車は既に100年
以上の歴史があり、社会インフラも今走っている車を前提にして出来上がって
いるので、今ある交通環境を前提とした PMV でなければ、公道で走らせるわけ
にゆかない。そこで開発したのが i-ROAD だった。小ささのメリットを活かし
ながら、公道を走れる車。「バイク並みの使い勝手」(気軽に駐車できる、取
り回しがよい等)と「クルマに近い快適性・安全性」(雨に濡れず快適、安定
している(誰でも楽に乗れる)等)を両立させた新モビリティ EV、それが
i-ROAD だ。

<日産自動車>
統計によると、一般に車による移動は、距離は 5~ 12km 以内、人数は 1~
2 人というのが 90 数 % を占める。ところが、今使われている大多数の車は、
これ以上の走行距離や乗車人数を前提にして作られている。大は小を兼ねるか
ら、これは仕方ない。しかし、環境や社会に与える負荷や効率的な移動の観点
から、これだけでよいだろうか?日産は、「ゼロエミッション社会に向けた取
組み」をビジョンとして掲げており、このような大多数の移動に適合した車作
りも(今までの車作りに加えて)進めなければならない。それが基本的な考え
方だ。人口の集中する都市における自宅から最寄りの駅までの移動、また地方
におけるコンパクト・シティに向けた取組みでも、このようなスマート・モビ
リティの考えは重要である。「日産ニューモビリティコンセプト」はこの考え
に対する一つの答えだ。ここで大事なことは、スマート・モビリティは新しい
町づくりとセットで考える必要があるということ。実証実験に関しては、我々
は、かなり地方で取組んできた。観光では、人々は電車で地方に来て、駅から
観光スポットまで移動するが、大型バス等が使われることが多い。しかし、大
型バスの排気ガスは地方の環境によくないし、バスが大きすぎて名所旧跡まで
近づけないことも多い。このようなシチュエーションで活躍するのがスマート・
モビリティだ。小回りのきく移動の足を確保出来るので、人々の回遊性が高ま
り、限られた時間で多くの名所等を見て回ることが出来る。EV だから環境への
負荷も心配ない。お土産を買う機会も増え、町にとっても有り難い。狭い道で
もすれ違うこともできる。駐車場も効率的に使える。新しい町づくりや再生に
向けた取り組みと共に、「日産ニューモビリティコンセプト」を活かしてゆき
たい。
【後記】
今回、特に2点、思うことがありました。

一つは、日本の規制です。PMV の公道での走行に関して、日本はかなり規制
の強い国と思います。PMV の公道での走行実現に向けて、規制緩和に時間がか
かっています。一方で、それは、PMV が新しいコンセプトの車で、かつ、様々
なユニークなタイプが登場するので、既に出来あがったインフラや制度が、こ
れらに対処するのに、どうしても時間がかかる面があるのだろうと思います。
個人的には、出来るだけ早く新しい PMV が公道に出て利用されることを期待し
ますが、これを受け入れる制度・インフラ面での体制作りの必要も痛感すると
ころです。

もう一つ、今回のアンケートで、「これこれの PMV に乗ったが、すばらしか
った」など、実際に試乗を体験したというコメントはありませんでした。まだ
試乗出来る機会が限られているためかもしれません。出来るだけ多くの人が、
いろいろな PMV に試乗して、何を感じ、どんな価値を見出すか、各自が実際に
体験することが大事だろうと思いました。その体験から生まれる思いや気持ち
が、PMV に対する期待感や需要を高め、ひいては行政をも動かして、規制緩和
を早めることに繋がるかもしれません。PMV が活躍する新しい社会が出来るの
を待ち望みます。

 

<薄井 徹太郎>

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