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コラム

レベル 2高度運転支援システムに期待する価値について

 今回は「レベル 2高度運転支援システムに期待する価値について」のテーマ
でご協力いただいたアンケート結果をを踏まえたレポートです。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7721

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【はじめに】

 いよいよ日産は新型セレナを今週 8月 24日に発売する。この新型セレナには、
量産車として初となる高速道路のみ起動可能な自動運転システム(単一車線に
おける追随、渋滞時の停発車、等)を搭載する「セレナプロパイロット」も市
場投入される。なお、読者の皆様の多くが御存知の通り、「自動運転」とは言
ってもあくまでも運転の主体と責任は運転手にある「レベル 2 高度運転支援シ
ステム」と呼称するのが正確である旨を御断りしておきたい。

 高度運転支援システム(ADAS)については、ダイムラーが新型ベンツ E クラ
ス(2016年モデル)で、自動車線変更、自動駐車等の機能を搭載した、現時点
で最も先進的と言われるシステムを導入しており、日本でも 7月 27日に発売開
始となった。加えて、今般の新型セレナの発売により、これから俄かに「レベ
ル 2」の世界が普及するのではないか、と筆者は強く期待している。然し乍ら、
一方では、テスラの米国における数件の事故の問題もあり、これら新しい技術
を社会が受け入れるまでにどんな行程があろうか、この機会に読者の皆様にご
意見を頂きつつ考察するというのが本稿の趣旨だ。

【ワンクリック・アンケートの結果】

 「レベル 2 高度運転支援システムに期待する価値とは何か」という設問のも
と、アンケート調査を行ったが、多数の方々からご回答とご意見を頂いた。本
稿の「レベル 2 の社会的受容性」というテーマに関する関心の強さを再認識す
ると共に、御協力頂いた皆様に感謝を申し上げたい。結果は次の通り。

1. 本来面倒な運転シーンを回避できる「楽々感」                    40 %
2. 人間の関与が一層減ることで事故削減に繋がる「高度な安全性」   26 %
3. 運転したい局面だけ存分に運転を楽しめる「走る歓び」        6 %
4. 運転の無駄が削減されることによる燃費等「効率性」        9 %
5. 却って気が緩み、事故の増加、マナーの低下等、「負の価値」   12 %
6. その他                             6 %

 上記選択肢について、少し申し上げると、あるものが齎す「価値」について
は、夫々の価値が独立して存在する場合よりも、お互いが密接に関係し合うこ
とが多いと考える。同様のことが高度運転支援システムについても言えるだろ
う。そうした中で、直感的に「何を優先して、価値と感じるか」を問うのが質
問の趣旨。アンケートの回答と共に頂いたご意見を拝読するに、大方のご意見
は、アンケートの通り「安全性に裏打ちされた楽々感」ということに集約でき
ると考えた(一方で、「その分、走りに徹底したい」という選択肢 3 が不人気
だったことは少々意外だが)。

【高度運転支援システムと安全】

 「高度運転支援(レベル 1+2)」のグローバル市場規模については、現時点
で年間約 1 千万台と言われ、2030年には乗用車販売台数 6 千万台程度迄に増
加すると言われている。その背景には、NCAP (自動車アセスメント)の評価に
より、予防安全性能に対する効果が「見える化」されていることが普及の主な
要因の一つであると言われる。日本においても、JNCAP により、予防安全性能
アセスメントとして衝突被害軽減制動制御装置(AEBS)、車線逸脱警報装置(LD
WS)についての試験結果が公開されている。安全がシステムの普及をリードし
ている。既に NHTSA (米国運輸省道路交通安全局、米国での NCAP 実施機関で
もある)とグローバルの自動車メーカー 20 社は、2022年を目処に米国内で販
売する全てのクルマに自動ブレーキを搭載することで合意している。義務付け
の動きは今後もグローバルに進展するものと思われる。

 然し、一方で自動ブレーキですら、センシング方式次第で安全性のレベルは
大きく異なる。米国でのテスラ・モデル Sの死亡事故では、そもそもの運転手
の不適切な行動はあるが、「白色のトレーラーが眩しくて認識できなかったセ
ンサーを『路上を走る装備』として認定してよいのだろうか?」という安全基
準に対する議論が高まっている。また、一方では、「仮に不完全な装備であっ
ても装着することで事故の低減には役立っている」という見方もある。

 そこで、NHTSA は近々「自動運転車についてのガイドライン」を公表する予
定だ。このガイドライン自体は拘束力を持たないもの乍ら、後続してクルマの
安全基準 FMVSS (連邦自動車安全規格)が詳細に見直される。然し、クルマの
規格は多岐にわたる膨大な内容であり、一方で、技術自体が日進月歩で進化中
である為、制定作業には 5-10年は要すであろうとも言われる。

 加え、米国では「自動運転車についてのガイドライン」と並行して、「クル
マのサイバーセキュリティ」についてもガイドラインの検討が進められている。
クルマに対するハッキングのリスクは未だ大きく取り沙汰されて居る。しかも
サイバーセキュリティについては、「ガイドライン」として公表すれば、中身
がハッカーにも知れてしまう為、逆に一網打尽の目に会う、というリスクもあ
る。そこで、まずは、自動車メーカー間でハッキング情報の交換を促進しよう
という試みの元、『Auto ISAC』というテーブルが昨年末より稼働した。そうし
た観点から、今後発表されるガイドラインとなどの様なものとなるのか、が注
目されている。自動運転云々の以前に、現行のクルマは何らかの形で外部と
「繋がる」機能を備えている為、サイバーセキュリティに関する安心感はクル
マ自体の社会的受容性、という世論にも大きく影響する要素だ。

 今後、これらのガイドラインがどう制定されるのか、は大いに注目したい。
更に、これらガイドラインの制定は、米国に当然限らない。欧日、更には中国
を加えこれらの基準作りにどう対応するか、リーダーシップを握れるか否かが
ビジネスの面でも大きく影響する。

【技術と社会】

 つまり、高度運転支援、乃至は自動運転、という「新たな技術」を迎えて、
「社会」がそれを受け入れるか否かの議論が至るところで沸騰している状況に
ある。「イノベーションは社会変革を伴う」という命題からすれば、至極当た
り前ではあろうが、それが現実になりつつある。

 「アーリー・プロトタイピング」というイノベーションの手法では、開発期
間を大幅に削減する為に、意図的に早期に製品化し、市場化することで、その
是非を社会に問う。

 そして、今、製品化された「新たな技術」を社会が吟味しようとしている。

 然し、「新たな技術」はそもそも社会が待望したものでもある。よって、
社会自体もそれを受け容れるべく変わろうともしている。例えば、交通事故と
保険について、自賠責法の考えにより、製造物責任の追及よりも、迅速な被害
者救済が優先された。然し、今後はこれまで以上にクルマにおける製造物責任
の追及を求める仕組みになる可能性もある。

 更には上述は「高度運転支援(ADAS)」に絞ったものだが、レベル 3-4の
「高度自動運転」についても、Ford、Uber、Volvo、とこのところニュースは絶
えない。自動運転をめぐっては、「Evolution(進歩派=現行自動車メーカーに
よる合法且つ漸進的なアプローチ)」と「Revolution(革命派=Google等新興
IT勢力を軸とする急進的なアプローチ)」との間で、闊達な議論が進行中だ。
そして、今日、連邦政府(NHTSA)としては、改めて安全を考慮しつつ、寧ろ
「熱を冷ます」方向を検討中とも言われる。

【新たな社会に向けて】

 冒頭申し上げた通り、今、まさに「レベル 2高度運転支援」の世界が幕を開
けようとしている。現時点では「あくまでも、高速道路等、限定領域において」
という条件付きだ。つまり、「一般道でのレベル 2」という一歩高いレベルの
課題も残されたままである。

 然し、この流れは、現状のジュネーブ条約の枠の中でありながら、社会を
徐々に変えつつある。現行のシステムが、少しでも楽で、誰にとっても安全な
ものに近づくのであれば、今まで何らかの理由で運転から遠ざかっていた人々
にも、運転の歓びや自由を呼び起こすかも知れない。そして、そのベースとな
るのは「安全」というクルマに求められる最も基本的、且つ、社会根源的な性
能だ。

<大森 真也>

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