くるま解体新書第 10 弾 中国で生き残る(1)

弊社親会社であるアビームコンサルティング(旧デロイトトーマツコンサルティング)が、自動車業界におけるモノづくりから実際のチャネル戦略に至るまで、さまざまな角度から提案していく。

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第 10 弾は、中国自動車メーカーの調達戦略を 5 週に渡って紹介する。今回はその第 1 回にあたる。

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第 10 弾『中国で生き残る (1)』

(日刊工業新聞 2005年 06月 01日掲載記事)

中国自動車産業は国際化の一途を辿っている。世界の主要自動車メーカーが相次いで市場参入し、産業自体の技術レベルも飛躍的に向上しているだが需要と供給が逆転し、価格下落を続ける中にあって、より魅力ある新製品の投入が市場から求められている。国内外の自動車メーカーは、現地でのシェア拡大を目指してし烈な競争を繰り広げている。

日系自動車メーカーの中国市場への参入に伴い、多くの日系自動車部品メーカーも中国に進出してきたが、絶えず変化する自動車メーカー間の競争環境によって、今後の事業戦略が不透明となるケースも少なくない。そこで 5 回にわたり中国市場に参入する自動車メーカーの部品調達の現状と将来の方向性を分析し、自動車部品メーカーが生き残るために必要な条件を提案する。

アビームコンサルティングと住商アビーム自動車総合研究所は、04年末に、中国で乗用車を生産している国内外の主要自動車メーカー 30 社の購買担当者を対象にアンケートを実施した。回答企業の内訳は日系自動車メーカー 9 社、外資系(日系以外)自動車メーカー 11 社、中国系(民族系)自動車メーカー10 社。

まず、自動車メーカーの今後の製品戦略について分析する。自動車メーカー各社に中国で注力する分野について質問した結果を資本別に比較すると傾向に以下のような特徴があることがわかった。

日系自動車メーカーは、「安全性」と「輸出拠点としての育成」への注力度が高い。安全性能は顧客に訴求しやすい付加価値であり、値下げ競争を止める武器ともなるが、同時に何らかの問題を起こせばブランド失墜にもつながる大きなテーマである。また、今後は輸出の重要性が増すと予想され、中国をグローバル生産拠点に位置付けた展開も視野に入れていると考えられる。

一方、外資系自動車メーカーは、「利便性・快適性」と「走行性能」への注力度が高い。商品の魅力向上とラインナップの拡充に注力する方針がうかがえる。顧客ニーズ吸収のため現地研究開発(R&D)拠点の整備を進めるメーカーもある。

最後に、中国自動車メーカーであるが、「デザイン性」と「環境・省エネルギー」に注力する傾向がある。商品の魅力を国際レベルに高めるためにも、デザイン力の向上は不可欠であろう。今後規制が強化される環境性能の向上も、基礎技術レベルが低い中国自動車メーカーにとっては大きな課題となっている。

次回は中国自動車メーカーの調達戦略について分析する。

<本條 聡>