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コラム

御料車の開発がもたらす効果

(皇室専用車「プリンス・ロイヤル」が引退。「センチュリーロイヤル」に)

『陛下のお車』として知られる「ニッサン・プリンス・ロイヤル」が引退し、トヨタが「センチュリー」をベースに2002年春から開発が進めていた「センチュリーロイヤル」が、来年度から導入される事になった。

<2005年08月31日号掲載記事>

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今週、宮内庁が来年新しい御料車の導入を予定しているというニュースが流れた。このトヨタ製の特別車両「センチュリーロイヤル」は、今年 10月の東京モーターショーにも出品するのではとないかと業界でも噂されている。

御料車、つまり天皇陛下専用車両であるが、これまで日産製の「プリンスロイヤル」が使用されてきた。開発を受託したのはプリンス自動車であったが、納入を前に日産に統合されたため、日産製となっている。1967年から 72年にかけて、国産初の皇室専用車として宮内庁に 5台納入された。

当時の国内最高水準の技術を注ぎ込んで開発され、安全性・信頼性に万全を期するためにブレーキ・燃料系は完全二重系統となっているという。それまで御料車として使用されてきた英ロールスロイスを始めとする輸入車に対抗する最高級リムジンを目指して開発されたわけだが、開発期間や信頼性の観点から、GM 製 AT を使用する等、海外技術に頼らざるを得ない部分もあり、その意味で純国産というわけでもなかった。

1980年頃からは、老朽化が進んでいることもあり、総額 1 億数千万円もの特別整備を進めてきたが、補修できない部分や重要行事での故障回避のために、使用は都内の主要行事に限られていた。地方訪問等では改装した日産プレジデントやトヨタセンチュリーが使用されてきたが、後継車両探しが課題となっていた。

そこに国内トップメーカーであるトヨタが名乗りをあげることとなった。センチュリーロイヤルはトヨタセンチュリーをベースに 2002年から開発を進められてきたという。最大 8 人乗りのリムジンで、排気量 5L、全長 6.15m、全幅2.1m、全高 1.77m の巨体はプリンスロイヤルとほぼ同じサイズである。乗降時に美しく見える様に後部ドアは観音開きとなっており、窓枠位置も後部座席の両陛下がよく見える様に配置されている。標準車 1台、防弾車 3台、寝台車 1台の計 5台が製作される予定であり、来年より順次納入される予定となっている。

宮内庁はこの新しい御料車の購入費用として 1台 5,250 万円を予算に盛り込んでいるという。しかし、トヨタがこの車の開発に予定している開発費は総額80 億円と言われている。当然単純なビジネスとして成立するものではない。では、トヨタが御料車開発を請け負う狙いは何であろうか。今回はこのトヨタの狙いについて考えてみたい。

一つは真の国内最高級車を開発するというトヨタ自身の威信、プライドであろう。海外自動車メーカーも、以下の通り、国家元首の「御料車」を手がけている。今年就任したローマ法王の専用車を巡って、法王の母国ドイツの両メーカーメルセデスと VW が競っていたのを記憶されている方もいると思う。世界の自動車業界をリードするトヨタとして、御料車の納入はお金で買えない価値があるとも言える。

米国   米GM/キャデラックDTSエクスクルーシブリムジン
英国   英ロールスロイス/ファントム4エリザベス二世専用カスタム
ドイツ  独VW/フェートン
フランス 仏プジョー/607特別仕様車
イタリア 伊ランチア/テーマ 8.32

世界の VIP の注目を得て、宮内庁以外に納入することがあるかもしれない。米 GM の大統領専用車として開発されたキャデラック DTS の特別車(上記)は、米実業家のドナルド・トランプ氏にも納入されている。しかし、開発費が回収できるほど生産するとはとても思えない。

他にも狙いはないだろうか。ここで、トヨタが今年最も注力するレクサスの国内投入という視点で考えてみる。競合となるメルセデス(DCX)、BMW、AUDI(VW)などの高級輸入車ブランドにあって、レクサスにないものの一つとして、当該ブランドの上をいく最高級車の存在が挙げられる。DCX はマイバッハ、BMWはロールスロイス、VW はベントレーといった、1台 5 千万円クラスの最高級車を抱えている。レクサスの上を行く世界最高水準の高級車を開発することで、自社の品質・性能が欧州高級車ブランドと肩を並べる世界トップレベルにあることを示す象徴的な存在として御料車を開発した、つまりトヨタ・レクサスブランドの価値向上を狙っているとは考えられないだろうか。

最も、それでも 80 億円という開発費の費用対効果がどうなのかは計り知れない。しかし、こうした波及効果を色々と考えたとしても、トヨタ以外のメーカーにはなかなかできないことも事実であろう。

この御料車は、今後 30年の使用が計画されているという。30年後の環境性能基準が現時点と比較できるレベルにあるとは考えにくい。まぎれもなく、トヨタの最高級車であることを考えれば、是非ハイブリッド化も検討してもらいたい。

<本條 聡>

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