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コラム

『個人向けカーリース』の課題 と可能性について

今回は 3月 15日付メールマガジンにおいて「『個人向けカーリース』の課題
と可能性について」と題してご回答をお願いしたアンケート結果を踏まえての
レポートです。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7640

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【はじめに】
アンケートをお願いした際にも触れましたが、日本の自動車市場においては
その利用形態が「所有から使用へ」という表現に象徴されるような形で多様化
しつつあることが、日々の報道や、街中・ネット上で見掛けるサービスからも
実感出来ます。 個人での利用という範囲で申しますと、引き続き圧倒的多数
派を占める「自己所有」と定着して久しい「レンタカー」に加えて、近年は都
市部を中心に「カーシェアリング」が急速に広がってきています。これらはい
ずれも利用者自らが運転するという形態ですが、それにこだわらない「ライド
シェア」「乗合タクシー」などのビジネスチャンスを窺う動きも少なからず出
て来ています。

そんな中、既にサービスとしては定着しており、しかも「所有」と「使用」
の中間的な存在ともいえる「カーリース」の、特に個人向け市場においての存
在感がなかなか高まって来ないという印象があります。種々メリットがあると
されているにもかかわらず、何故「個人向けカーリース」が大きく伸びないの
か、その課題や可能性を探るべく設定させていただいたのが、今回のテーマで
す。

【設問ならびにアンケート結果】
それでは、アンケートの結果をご覧ください。

<設問>
日本における「個人向けカーリース」が引き続き伸長していくために鍵(=
ボトルネックとして解消・改善が必要)となるのは、どのような点だとお感じ
でしょうか。ビジネス目線・消費者サイドの印象、いずれでも結構ですのでご
意見をお聞かせください。

<結果および頂戴したコメント(抜粋)>

1.「自動車は財産として所有したい」という考え方            48%

2.個人向けカーリースの特徴・メリットについての認知度・理解度の低さ                                        23%
―PR告知が通常販売や残価設定型ローン等と比較して少ない
―「借りる」のを好まない日本人的感覚に加え、リースが財産にはならない
ものの実質的に所有しているのと同様(あるいはそれ以上)の利便性があ
ることが認知されていないのが課題では。
―リースに付随するサービスや利便性についての分かりやすい訴求が不足し
ている。
―リースならではサービスの認知度が高まれば、個人向けカーリースを選択
する顧客も少なからず増加するのでは。
―いまだにオートローンとオートリースの違いがよく理解わからない。所有
した場合はカスタマイズも出来るがオートリースではそれが出来ないので
は。

3.顧客ニーズに合わせた契約条件カスタマイズの不足        10%

4.カーシェア・残価設定型を含むオートローンなどとの競合        10%
―自動車購入の商談が主に行われるディーラーにおいて、個人向けカーリー
スを扱う店が少ないのが普及を阻む要因の一つでは。

5.その他                             9%
―乗るクルマをフレキシブルに変更出来るようなサービスを付帯した契約の
費用がリーズナブルであれば、市場が拡がる可能性があるのでは。

【考察・随想】
今回はいつにも増して興味深い結果ならびにコメントを頂戴しました、あり
がとうございます。

上掲のとおり、最も多く課題としてご選択をいただいたのは選択肢 1.の
「自動車は財産として所有したいという考え方(が、伸び悩みの要因)」で、
実に 48 %を占めましたが、残念ながら付帯してコメントをいただくことは出
来ませんでした。一方、それに次ぐ 23 %に達したのが選択肢 2.の「個人向
けカーリースの特徴・メリットについての認知度・理解度の低さ(が課題)」
で、これに関しては多数の具体的課題認識・ご提案をご記入いただきました。
筆者は、この傾向に現在、日本市場において個人向けカーリースが抱えている
課題と可能性の少なからずが集約されているのではないかと感じました。

まず「自動車を所有したい」という考え方が伸び悩みの要因になっていると
いう見方ですが、自動車の利用者は何をもって「所有」と感じるのでしょうか。
「わ」ナンバーか否か、でしょうか?であれば、オートリースの車両は「わ」
ナンバーではありませんし、更には 1999年から登録車に、2005年からは軽自動
車にも導入された希望ナンバーの選択も可能です。あるいは、車検証(自動車
検査証)の所有者・使用者欄への記載事項がともに自身の個人名になっている
ことでしょうか?少なくとも筆者は車検証を見ることは滅多にありませんし、
ましてや他人に見せることは売買の時を除けば一度もありません。車種・塗色
はもちろんのことグレード・装着オプションまで契約時に指定が可能なリース
車が 3年あるいは 5年といった契約期間を通じて変わらずずっとユーザーの手
許にあるというオートリースの商品特性は、限りなく「所有」に近いと思うの
ですがいかがでしょうか。

また、「個人向けカーリースの特徴・メリットについての認知度・理解度の
低さ(が課題)」という選択肢にいただいたコメントも、その多くがリースと
いう商品そのものに関してではなく、その特性の PR ・認知度不足を課題とし
て挙げてくださいました。筆者も今般のアンケートを設定して以来、いくつか
典型的なユーザー層を想定し、事業者や潜在ユーザー層への聞き取りなどを含
めて個人向けオートリースに関する調査・研究に取り組みましたが、その過程
でも、あくまで一般論としてですが 1)個人向けオートリースの Web サイト
などは、オートリース利用を前提としている顧客層にはともかく、漠然と自動
車の利用を考えている層にはオートリースならではの特性が把握し難い 2)メ
リットの平易な説明が不足している(特に自己資金による購入や、オートロー
ンとの対比という視点=顧客層拡大の Key)と感じました。 以下、オートリー
スの主な特性を挙げてみますと、いずれも業界内では当然のことばかりですが、
果たして潜在顧客層を意識して、分かりやすい発信・説明が出来ているでしょ
うか。

1)利用当初の一時費用が発生しないこと(新車購入の場合は?)

2)利用期間を通じて支出が定額で、車検・自動車税などの支払による増減も無
いこと(保有の場合は?)

3)車種・塗色・オプション選択の自由度(保有と同等)

例えば、これまで 10年周期で購入~乗り換えを繰り返して来たユーザーが高
齢化した際に「あと何年(10年も)クルマを運転し続けるのか」「5年もすれば
更に自動運転機能が進化するので乗り換えてより安全に」「毎月 4 万円台でそ
れ以外の一時出費はありませんので年金生活期にピッタリ」といった具体的な
提案も可能なのではないでしょうか。あるいは、クルマへの依存度が高い地域
の若年層に対して「好みの車種・グレードで、希望ナンバーも選択可能。出費
は月々のリース料のみ。新車のための月額 3 万円なら何とか捻出出来ませんか」
といった、属性に合わせた分かりやすい訴求をしていくような活動がもっとあ
っていいのではと思います。

そのためにはオートリースを販売するチャネルの多様化も課題だと感じてい
ます。今ですと個人向けオートリースのメディア宣伝も限られています(意識
していると以前より増えてはいますが、潜在利用者の開拓には力不足でしょう)
し、個人向けオートリースを積極的に打ち出しているディーラーも一部に限ら
れています。

今回のアンケートおよび調査を通じて再認識出来た最大のポイントを 2 つ挙
げますと「個人向けオートリース」の商品特性を訴求すべき潜在顧客層は少な
からず存在するであろうことと、その一方で広く一般にはそのサービス特性
(メリット)が十分に周知されていないと思われる(また、業界内部でもそう
認識されている)ことになろうかと思います。自己保有に代表される「所有」
と、カーシェアリング、更には Uber や Lyft のような自らの運転を前提とし
ない「使用」側サービスの中間的な商品として、個人向けカーリースの市場が
より拡大し、ひいては自動車市場の活性化の一翼を担うようになることを期待
したいものです。

近年、増勢にあるとはいえ、総台数は約 15 万台(2015年 3月現在=日本自
動車リース協会連合会資料による)と、50 百万台を超えるとされる個人車の総
保有台数に対しては 1 %に遠く及ばない水準に留まっている日本国内の個人向
けオートリース車両が、国内の大口法人車(リース比率 40 %程度)や、米国
自動車販売に占めるリース車比率(同 25 %程度)に近付いていくことによる
市場への刺激は、決して小さくないと思います。

米国では「(乗り出しに際して纏まった費用がかからず、月々の支払が定額
である)リースだからこそクルマを‘持てる’」という層も少なくありません。
日本市場でも、個人向けオートリースの拡大により、中古車購入層や、所謂
「クルマ離れ」世代においても、新たな新車需要が開拓出来る可能性があるの
ではないでしょうか。

<清水 祥史>

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