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コラム

ハイブリッド自動車の2次電池を巡る開発競争

◆トヨタ、ハイブリッド車用リチウムイオン電池を独自開発し、実用化へ

子会社・パナソニックEVエナジーの定款にリチウムイオン電池の開発を追加

<2005年10月31日号掲載記事>

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昨今の世界的な原油価格の高騰や環境規制の強化の中、ハイブリッド自動車を始めとする環境技術に注目が集まっている。ハイブリッド自動車の開発では世界をリードしているトヨタ、ホンダの日本勢であるが、欧米自動車メーカーも追従すべく、開発を本格化させている。

9月に開催されたフランクフルトモーターショーにおいて、ダイムラークライスラーは新型 S クラスにディーゼルエンジンを使った燃費重視のマイルドハイブリッドシステムを搭載すること、そして BMW と GM と共にパワー重視のフルハイブリッドシステムを開発することを発表している。また、Audi も来年発売予定の新型 SUV である Q7 のハイブリッドモデルを公開している。

先週まで開催されていた東京モーターショーにおいても、国内自動車メーカーが多数のハイブリッド自動車を展示していた。市場投入が期待されるレクサスGS450h やトヨタエスティマハイブリッドなどのニューモデルから、72km/L という驚異の燃費を誇るダイハツ UFE- IIIのようなコンセプトカーまでバラエティに富んだ内容となっており、自動車メーカーのハイブリッド技術への注力度が伺える。

かつて燃料電池自動車が実用化するまでの橋渡し的な存在と言われてきたハイブリッド技術であるが、現在は燃料電池等の電気自動車やガソリン以外の代替燃料とも組み合せられる汎用性の高い環境技術として捉えられている。モータ、2 次電池を始めとするハイブリッド技術の技術力を高めることで、他の動力源の車両の総合効率向上にもつながるからである。

自動車メーカー各社の技術開発が進んだ結果、市場に投入されるハイブリッド自動車も大きく性能向上している。車両の総合効率でも初代トヨタプリウスが 26 %程度だったのに対し、現行プリウスでは 32 %まで向上しており、現時点では同社の燃料電池自動車を凌ぐ性能を誇っている。また、数年前は低燃費だけがセールスポイントであったハイブリッド自動車は、低回転時に高トルクを発生できるモータの加速性能を活かし、低燃費と走行性能との両立が謳われることが多くなっている。

しかし、依然としてハイブリッド自動車はコストダウンやシステムの小型軽量化など、いくつかの課題を抱えており、本格的な普及に向けて改善が期待されている。

コストの問題は消費者の選択に大きく影響を及ぼす。基本的にベースモデルとハイブリッドモデルの価格差は 50 万円以上あるものがほとんどであり、トヨタハリアー・クルーガー V など高いものでは 100 万円近く高くなるものまである。今月発売される新型シビックハイブリッドでは、ベースモデルとの価格差を 30 万円程度まで抑えているなど、コストダウンが進められる傾向ではあるが、燃料費の節約で車両価格の元を取るには長期間の使用が前提となってしまう。燃料費の節約をセールスポイントにするというよりは、消費者の環境意識に訴えることに頼らざるを得ないため、消費者の意識改革の必要もあり、本格的な普及には限界がある。

また、小型軽量化も本格的な普及に向けて重要な課題である。コストダウンと小型軽量化が実現できれば、市場の中心を担うコンパクトカーにもハイブリッドシステムの搭載が進められる。このセグメントで燃料費の節約をセールスポイントにできれば、大きな推進力となるはずである。

こうした課題解決のためには、モータ、インバータ、2 次電池などのハイブリッドシステムの要素技術の改善が求められている。この中でも特に大きな技術革新が期待されているのが 2 次電池である。

現在ハイブリッドシステムに搭載されている 2 次電池は、ニッケル水素、リチウムイオン、キャパシタの 3 種類である。このうち最も普及が進んでいるのがニッケル水素電池であり、トヨタ、ホンダ、フォードなど市場に投入されている多くのハイブリッド自動車が採用している。

リチウムイオン電池は、ニッケル水素電池よりも高出力、大容量であり、同じ容量であれば、重量を半分にできるため小型軽量化にも有利である。しかし、現時点ではコストが高く、信頼性試験も十分な領域に至っていない。いすゞのエルフハイブリッド等で採用されているが、ニッケル水素電池には遠く及ばない。

キャパシタは、物理的に電荷を蓄えるために耐久性が高く、充放電効率が高いという特徴を持つ。蓄電容量が低いため、これまでなかなか採用が進まなかったが、近年エネルギー密度を大幅に高める技術を開発する企業が出てきている。2002年に日産ディーゼルが実用化したがベース車両の 2 倍以上の価格であったため、大きく普及はしなかった。コストダウンも両立できれば、将来大きく普及する可能性も秘めている。

トヨタと松下グループの合弁会社であるパナソニック EV エナジーは、年間30 万台分(2004年度)のニッケル水素電池を生産する最大手のハイブリッド自動車用 2 次電池メーカーである。トヨタの全ハイブリッドモデルに加え、ホンダ、Ford にも供給している。トヨタは先月同社の増資に伴い、出資比率を引き上げた。これまでハイブリッド市場をリードしてきたトヨタとしても、2 次電池の開発に注力し、競争優位を保とうという姿勢が伺える。

このパナソニック EV エナジーが、リチウムイオン電池の開発に本格的に着手するというのが今回のニュースである。前述の通り、現時点での主流はニッケル水素電池であるが、業界では 2010年頃にはリチウムイオン電池が取って代わるのではないかと言われている。コストダウンと信頼性確保が実現できれば、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が普及する可能性は高い。

ハイブリッドシステム用リチウムイオン電池の開発に取り組むのはトヨタ・松下だけではない。富士重と NEC は 2002年に NEC ラミリオンエナジーを合弁で設立し、マンガン系リチウムイオン組電池の開発に取り組んでいる。NEC の持つリチウムイオン電池セル技術と富士重が持つ自動車用電池技術を融合させ、国際的にデファクトスタンダードとなり得る 2 次電池の開発に注力している。

ハイブリッドシステム自体も進化を続けており、自動車メーカー各社が様々なシステムを提案している。今後も新たなシステムが市場に投入されることが予想される。こうした中、普及に向けて大きなカギとなると見られているのが次世代 2 次電池技術である。安い、軽い、高性能と三拍子揃った 2 次電池を実用化したメーカーがデファクトスタンダードとなる可能性を秘めている。今後も各社の開発競争から目が離せそうにない。

<本條 聡>

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