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コラム

東京モーターショーに期待する自動車の付加価値

 今回は、「東京モーターショーに期待する自動車の付加価値」をテーマとし
た以下のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7511

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【東京モーターショーの変遷と新しい取り組み】

 当メールマガジンをお読みの方には訪れられた方も多いかと想像するが、先
日、第 44 回東京モーターショーが開催された。

 新興国の新車販売台数が急拡大する一方で日本市場の規模は年々縮小気味で
はあるものの、経済産業省発表の『自動車産業戦略 2014』でも謳われているよ
うに日本は課題先進国であり、北米や欧州と並んで他市場のトレンドに先駆け
る先進市場である状況は今後も続く。そして、先日 11月 6日まで開催された東
京モーターショーはその日本市場に対する自動車業界のメッセージが発信され
る大舞台の一つであり、今後のグローバル市場で各メーカー・各ブランドが訴
求していくであろう自動車の新しい付加価値を占うに相応しい場であると考え
られる。

 「きっと、あなたのココロが走り出す」(”Your heart will race.”)をテー
マとして開催された第 44 回東京モーターショーは、延べ入場者数は約 80 万
人と、前回を約 1 割下回る結果となった。入場者減少の背景は天候による影響
もあると思われるが、1962年開催の第 9 回から 2007年開催の第 40 回までは
商用車ショーの回を除くほとんどの回で 100 万人を超えていたことや、過去に
は 200 万人を突破した回(1991年開催の第 29 回)もあることを考えると、少
し寂しい数字であると感じられ、市場(特に若年層)のクルマに対する関心低
下を実感する結果となった。

 一方で、ショーを盛り上げるための新しい意欲的な取り組みも数多く試みら
れた。会期前の 10月 24日には、各年代を代表するクルマを多数集めた『東京
モーターショー 60 周年記念パレード』が開催され、幅広い年齢層のクルマ好
きの関心を集めた。モーターショー会場のビッグサイトからほど近いお台場エ
リアでは、試乗体験を含む『東京モーターフェス 2015 with みんモー』が開催
され、普段クルマに触れる機会の少ない若年層へのアプローチがなされた。更
に、モーターショーの主催者テーマ事業として開催された『スマート・モビリ
ティ・シティ 2015』では、IT や省エネルギー技術を駆使して環境負荷を抑え
る新しい都市の在り方と、そこにおけるクルマの重要な役割が提唱され、クル
マ単体に留まらないより大きな枠組みでのアピールがなされた。

 このように、社会におけるクルマの位置づけや役割の変化に呼応した幅広い
訴求が、先日のモーターショーおよび付随する各イベントでなされたと感じる。

【東京モーターショーで関心の高かったクルマの価値】

 さて、先日の当メールマガジンアンケートにて、東京モーターショーにおい
て訴求されるであろうクルマの付加価値のうち最も期待するものについてご意
見を頂戴したところ、以下のような結果となった。

1.燃費をはじめとする環境性:25%

2.運転支援や部分的な自動運転などの安全性・利便性:34%

3.コネクテビティによるインフォテイメント性:10%

4.自動車の基本となる走る・曲がる・止まるなどの操縦性:12%

5.見る人の注目を集めるデザイン性:13%

6.その他:6%

 上記のように、「2.運転支援や部分的な自動運転などの安全性・利便性」
と「1.燃費をはじめとする環境性」の合計で 60% を占める結果となった。

 この 2 つのクルマの価値について、今回の東京モーターショーでどのような
アピールがなされていたのか、当社が今回と近い内容のアンケートを 2011年と
2013年に実施した際の結果についてもあわせて参照しつつ、以下のように振り
返る。

2011年実施アンケート:http://www.sc-abeam.com/sc/?p=6044
2013年実施アンケート:http://www.sc-abeam.com/sc/?p=6892

[2.運転支援や部分的な自動運転による安全性・利便性]

 モーターショーで最も関心を寄せるのは安全性についてであると回答された
方の割合が、2011年に 12%、2013年に 27% という結果となっており、そして
2015年の今回のアンケートでは 34% の方がこの選択肢を選ばれた。

 2010年に衝突軽減ブレーキの自動停止機能が国土交通相に認可されて以降、
スバル・アイサイトを始めとする各社の運転支援機能の投入が相次ぎ、市場の
関心もそれにつれて年を経るごとに高まっていることの証左と言える。更に、
運転支援の向こうに見据えられる自動運転についても、そう遠くない未来のこ
ととして市場の期待は年々現実味を伴ったものになっている。

 今回のモーターショーでも自動運転に関する発表や展示が多く見られたが、
各社が描くロードマップはそれぞれ独自色が感じられるものであった。日産
は発表した『IDS コンセプト』のプロモーションムービーを上映しており、自
動運転時のパイロットモードとドライバーが運転を楽しみたい際のマニュアル
モードの切り替えにより、自動運転による運転タスクからの解放と手動運転に
よる運転の楽しさを両立することがアピールされていた。メルセデスベンツは、
CES2015 で発表され大きな関心を集めた『F015』や、東京モーターショー専用
に用意された『Vision Tokyo』により、自動運転化により車内をラウンジのよ
うな、運転とは一切関係ないラグジュアリーなスペースにする方向性を打ち出
している。

[1.燃費を始めとする環境性]

 環境性については、2011年が 32%、2013年が 23%、そして今回のアンケート
では 25% の方がこの選択肢を選ばれた。クルマに期待される価値としては、安
定して高い関心を集めていると言える。

 しかし、前回の東京モーターショーからの間に、プラグインハイブリッドを
備える車種数の大幅な増加や FCV の市場投入、日本市場では下火であったクリー
ディーゼルエンジンの増加など、多様性が進んだことによって市場の関心も変
化したものと思う。

 今回のモーターショーでも、FCV 路線を更に進めるトヨタ・ホンダや、EV 路
線を進める日産、プラグインハイブリッドを拡充するドイツメーカー勢など、
この多様化が今後も進むことが伺えた。

【クルマの価値の更なる多様化への期待】

 今回のアンケートで関心が高かった運転支援・自動運転や環境性能は、いず
れも今回のモーターショーで初めて注目された分野ではないが、そこにおける
自動車メーカー各社間の差別化は、一元的な競争ではなく多様化が進んでいる
ことを強く実感した。

 モーターショー来場者数の減少にみられる市場の自動車への関心低下は従来
のクルマの価値が求心力を失ってしまったことにもよると思われるが、運転支
援・自動運転や環境性能といったクルマの価値に新たな多様化の兆しが見られ
ることは、市場が盛り上がりクルマへの関心が再び高まる未来に向けて、非常
に重要なことと思う。

 運転支援・自動運転や環境性能、あるいはまだ見ぬ新しいクルマの価値にお
いて、各自動車メーカー『らしい』多様化が進み、訪れた人が目移りするよう
な魅力的な未来のモーターショーに、期待したい。

<宋 太賢>

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