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コラム

使用者が自動運転に期待する価値について

今回は、「使用者が自動運転に期待する価値について」をテーマとした以下
のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。

 http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7358

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【自動運転に関する各社動向】

 つい先月、グーグルは自社純正の車両をもって北米カリフォルニア州で自動
走行実験を開始することを発表した。この自動運転車のプロトタイプは 2014年
5月に発表された 2 人乗りの非常に簡素な車両で、ステアリングもアクセル・
ブレーキペダルもなく、行き先を指令するシンプルなインターフェースを装備
するのみである。

 同じように未来の完全自動運転の姿を描いたメルセデス・ベンツのコンセプ
トモデルである「F015」は対照的に、ラグジュアリーなイメージを前面に打ち
出している。メルセデス・ベンツによると、自動運転によって運転から解放さ
れた運転者が車内で上質な時間を過ごすことができることが「F015」の本質で
あるが、運転者の手による運転を排除してはおらず、備えられたステアリング
やアクセル・ブレーキペダルを使って運転することも可能としている。

 また、アップルも自動運転車開発プロジェクト「タイタン」を推進中で、車
体は EV ミニバンになると報道されており、この開発のためにデザイナーや開
発者を他社からヘッドハンティングしていると言われている。マスメディアに
捕捉されている写真によれば、試験車両は自動車メーカーが販売している既存
車種をベースにしているものの、プロダクトやインターフェースのデザインに
こだわるアップルに対して、自動車に対しても同じく個性的な特徴を期待する
消費者は多いようである。

 その他、多数の自動車メーカーが、今までの歴史で積み上げてきた弛まぬ運
転支援機能の向上を今後さらに加速させ、運転者の運転作業を構成する「認
知」、「判断」、「操作」の自動化領域を少しずつ広げていくことを謳っている。

【自動運転が齎す様々な価値】

  さて、これらのニュースを見ていて感じるのは、これらの取り組みが『自動
運転』という同じキーワードで語られているものの、そのコンセプトや目指す
意義はさまざまに異なるということである。各社ともに、最終的には完全自動
運転を目指しているのであろうが、その自動運転を通じてどういった価値を使
用者あるいは社会に提供しようとしているかについては、各社ごとに多種多様
であるように見受けられる。それだけ『自動運転』というキーワードが指し示
す領域は広く、これに対して市場が期待する価値も多岐にわたると感じる。

  そこで、使用者の目線で自動運転により享受出来る価値として、どのような
ものがあるかについて考察してみたい。

 [運転そのものが高速化・安全化できる]
 自動運転機能の向上により、事故回避能力が向上することによって運転が安
全化されるとともに、相対的に高い速度でも十分な安全マージンを確保できる
ようになることが期待できる。ただし、多くの自動車メーカーが安全化のため
の自動運転機能を導入または発表しているが、それによって得られる安全マー
ジンを高速運転に振り替えるコンセプトを明確にしているケースはまだ現れて
いない。なお、「高速化」という表現は、無謀な速度超過を許容する意ではな
いことを補足させていただく。

 [子供や高齢者など運転技能が低い運転者が自動車を運転できる]
 自動運転機能の向上により、運転者に要求される運転技能は相対的に低下し、
経験の浅い子供や動体視力の低下した高齢者でも、一般的な運転者よりも多く
の制約事項が課せられる可能性はあるが運転が可能となることが期待される。
グーグルは 2015年 3月より、金沢大学と石川県珠洲市にて自動運転車の実証実
験を開始したが、同地が実証実験の場に選ばれた理由として高齢者比率の高さ
が挙げられており、自動運転の使用者として高齢者が強く意識されていること
が伺える。

[移動時に運転者がサブタスクや余暇消費に注力できる]
 自動運転機能の向上により、運転者が運転に費やしていた時間を、かわりに
別のことに費やせるようになることが期待される。メルセデス・ベンツの「F015」
のコンセプトはまさにその期待に応えることを目指しており、「会話や食事、
仕事など、運転者含む乗員全員が空いた時間を等しく有効に使うことができよ
うになる」と謳っている。

 [無駄な加減速や停止発進を減らすことにより環境負荷が低減できる]
 路車間および車車間の通信と連携した協調型の自動運転により、信号や周囲
の交通状況を加味することによって加速および減速を必要最低限に抑え、CO2
排出量や燃料消費量を最小化することが期待される。

[自動駐車・自動迎車など発車前・到着後の運転者の手間が省くことができる]
 1.~4.のような使用者が乗車している間に生まれる価値ではなく、その
前後に得られる価値にも注目したい。また、自動駐車・自動迎車によって生ま
れる価値は、運転者の拘束時間の削減だけではなく、駐車間隔の極小化による
駐車場の削減や、駐車場の遠隔地化などといったメリットにも繋がる。

 【使用者の期待】

そして、上記のような使用者が自動運転によって得られる価値のうちいずれに
最も期待するかについて、読者の皆様にお尋ねした結果、以下のような結果と
なった。

1.運転そのものが高速化・安全化できる点:27%

2.子供や高齢者など運転技能が低い運転者が自動車を運転できる点:25%

3.移動時に運転者がサブタスクや余暇消費に注力できる点:15%

4.無駄な加減速や停止発進を減らすことにより環境負荷が低減できる点:11%

5.自動駐車・自動迎車など発車前・到着後の運転者の手間が省くことが
 できる点:9%

6.その他:13%

 濃淡はあるもののいずれかが突出しているわけではなく、広く分散する結果
となったが、これは前述のとおり、現状では『自動運転』が指し示す領域が幅
広いことによって、そこに期待される価値も多岐にわたっていることの表れで
あると感じる。

 ここで着目したいのは、アンケート結果の分布ではなく、アンケート回答と
共に寄せられたコメントの一部に、「自動運転技術がどこまで進歩している時
点かについての前提が無いので回答しづらい」という旨が散見された点である。

  【自動運転が使用者の期待に応えられる時期感】
 確かにアンケート選択肢に挙げた各事項は、それぞれがある水準以上実現さ
れるための技術水準は異なる。また、技術の向上に応じて得られる価値が正比
例的に向上するものもあれば、法制度などのボトルネックが解消されると得ら
れる価値が急激に向上するものもある。

 例えば「運転そのものの高速化・安全化」や「無駄な加減速や停止発進を減
らすことにより環境負荷が低減できる点」は、自動運転技術の積み上げで少し
ずつ得られる価値が向上するが、「子供や高齢者など運転技能が低い運転者が
自動車を運転できる点」は運転免許制度の改正を待たなければならないし、
「移動時に運転者がサブタスクや余暇消費に注力できる点」は完全自動運転に
かなり近い水準まで技術が向上しなければ実現できない。

  自動車業界関係者はともかくとして、市場の一般消費者は、自動運転に様々
な期待を抱いているものの、それを齎す「自動運転」を一義的に捉えているよ
うに感じる場面は多い。「自動運転がいつかできる」という総論は具体的なイ
メージを伴って市場に十分浸透したこと思うが、加えて、「自動運転のどの部
分がいつまでにどういう水準で実現される」という各論が、市場の期待と自動
運転技術実用化のロードマップが乖離しないよう二者間で十分に共有されるこ
とが、自動車業界にとどまらない成長を予感させる自動運転関連産業の発展に
おいて肝要かと思う。

<宋 太賢>

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