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コラム

コスト削減を進めるVWグループ

◆独VW、中国からの部品調達を拡大へ。2006年は昨年実績比で100倍規模に

中国合弁会社が現地調達している部品をドイツなど世界で利用し、2~3割の調達費用を低減へ。2006年は10億ドル(約1170億円)規模を計画している。

<2006年05月10日号掲載記事>

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日経新聞の企業欄に大きく取り上げられたので、目にした方も多いと思うが、今週はこの VW グループの中国部品調達拡大の背景について考察してみる。

【VWグループの近況】

VW グループは、2001年以降 3年連続で減益となっていたが、2003年以降コスト削減を強化する施策を打ち出しており、原材料費高騰やユーロ高などによる収益圧迫にも関わらず、業績は回復傾向にある。2008年までに 40 億ユーロ(約 5600 億円)の税前利益改善を目標に掲げている。

この業績回復に大きく寄与したのが、2004年に発表した「ForMotion プログラム」である。新製品の開発・設備投資、人件費、原材料費などのコスト削減だけに留まらず、金融・販売領域での収益性向上にも注力しており、2005年には 31 億ユーロ(約 4340 億円)のコスト削減に取り組んできた。

2006年以降についても、3年間で 100 億ユーロ(約 1 兆 4000 億円)のコスト削減を計画しており、人件費の高いドイツ本国の工場の設備投資を抑えてポーランド、スロバキアの工場を増強を予定している。

グローバル規模での戦略においては、赤字の北米事業とシェアが落ち込む中国事業の再建が直近の課題となっている。北米事業においては、Audi の新型 SUV (Q7)や Chrysler とのミニバン共同開発などの新製品投入により、販売拡大を図りつつある。中国事業においては、「Olympic Program」という 2008年までのリストラ策を発表しており、生産能力拡大計画を下方修正したほか、Skoda ブランドの中国市場投入を予定している。

【プラットフォームの共通化】

売上台数で世界第 5 位の独 VW グループの強みの一つは、他の自動車メーカーよりもプラットフォーム・部品の共通化をいち早く進めてきたことにある。中核ブランドとしての VW を軸に、高級車ブランド Audi、VW よりスポーティな路線を打ち出す Seat、VW より廉価なレンジをカバーする Skoda、そしてスーパースポーツブランドの Lamborghini や超高級車ブランド Bentley ・ Bugattiを傘下に従えている。

VW グループは、Golf、Passat に代表される、コンパクトカーからミドルレンジまでを広くカバーする VW ブランドの車種を軸に、Audi、Seat、Skoda の同セグメント車種に共通プラットフォームを展開することで、効率的な車種展開を進めてきた。しかし、こうした車種拡大の結果、グループ内の他ブランドの車種とのカニバリゼーションが発生している車種もあり、VW ブランド初の高級車 Phaeton やエントリーカー VW Lupo など、販売が伸び悩む車種については、順次入れ替えを進めるなど、車種ラインナップの再構築を図っている。

【現行VW Golf(Golf V)】

現行で 5 代目となる、VW グループの主力モデル Golf は、先代同様日本でも高い人気を維持しており、グレードによっては未だに納車待ちになる状態で、発売後 2年経った現在も新鮮さを失っていない。この Golf のベースとなるプラットフォームは、毎年 200 万台以上という世界最大規模の生産量を誇っている。新旧合わせて、グループ 4 ブランドで 10 車種以上に流用されており、今後更なる派生車種の追加も計画されているという。
最近、その Golf V が予定を 2年繰り上げ、2008年にもモデルチェンジするという自動車雑誌を賑わせている。プレミアム志向を強め、ボディサイズの拡大と質感・走行性能の向上を図った Golf V は、製造コストの増加を車両価格に反映したため、辛うじてドイツ本国ではベストセラーを維持しているものの、先代よりも販売台数が低下していると言われている。

Golf V の製造には、競合車種の 2 倍以上の組み立て時間がかかっていると言われており、コスト削減が喫緊の課題となっているようだ。設計段階からコスト低減を進めると同時に、部品のモジュール化の推進や、派生車種の更なる追加による量産効果を検討しているという。これが、モデルチェンジ前倒しの背景にあると言われている。

【中国からの部品調達拡大】

こうした現状を踏まえると、VW グループにとって如何にコスト削減が大きな課題であるかは明白である。今回の中国からの部品調達拡大も、こうした流れによるものであろう。
とはいえ、100 倍規模に拡大といっても、年間 5 兆円程度といわれる VW グループ全体の部材調達量からすれば、まだ微々たるものである。しかし、中国部品の採用により 2~ 3 割のコスト削減を図ることが見込まれており、導入効果次第ではさらに拡大することが予想される。

欧州においても、コア技術を有するサプライヤーとの関係強化やモジュール化の推進、中東欧地域のサプライヤ育成、サプライヤーとの原材料の共同購買を進めている。こうした取り組みとそれに伴う原価低減活動についてこれないサプライヤーは、中国調達に置き換えられていくことになると予想される。

かつて、Ford を始めとする欧米メーカーも、中国からの部品調達の拡大を目指して検討してきたが、予定以上に進まなかったケースも少なくない。中国において、随一の生産実績と経験を誇る独 VW の場合はどうであろうか。懸念される品質・技術面での影響がなければ、目標に掲げる収益改善にも大きく寄与すると期待されるだけに、中国に拠点を持つ他の自動車メーカーがこぞって追従することも考えられる。中国の自動車部品業界の位置づけも大きく変わる可能性を秘めており、今後の動向に注目したい。

<本條 聡>

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