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コラム

スマートモビリティに寄せる期待

今回は、「スマートモビリティに寄せる期待」をテーマとした以下のアンケー
ト結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7208

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【はじめに】

 12月 4日、都内にて内閣府が主催した「戦略イノベーション創造プログラム」
(略称 SIP)のシンポジウムが行われた。SIP とは、安倍政権の下、創設された
総合科学技術・イノベーション会議の主導の下、日本の強みである科学技術イノ
ベーションにより、経済成長をリードし、社会の在り方を大きく変えることを目
指す壮大な国家プロジェクトであり、平成 26年度総額 500 億円の国家予算を用
いて日本政府が主導する産産官学協調の新たな取り組みである。SIP には 10 の
対象課題があり、夫々について、基礎研究から実用化・事業化までを見据えて、
一気通貫で研究開発を推進し、更には国際標準化も意識した取組を展開する、と
されている。シンポジウムにては、それら課題夫々の取組、進捗状況が披露され
た。

 10 の対象課題の内、自動車産業に直接かかわるものとしては「革新的燃焼技
術」と「自動走行システム」とがある。後者については、具体的な目標として以
下が掲げられている。

1. 国家目標「2018年を目途に交通事故死者数 2,500人以下とし、2020年まで
  に世界で最も安全な道路交通社会を実現する」の達成。

2. 自動走行システムの実現と普及。2017年迄にレベル2、2020年代前半迄にレ
  ベル3、更に2020年代後半以降に完全自動走行であるレベル4の市場化を目
   指す。

3. 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一里塚として、東京の発展と
  高齢化社会を見据えたわが国の次世代交通システムを実用化し、これをもと
   に、交通マネジメントとインフラをパッケージ化した輸出ビジネスを創出す
   る。

 特に2.に関しては、 連結バス形態からなり、以下の様な技術を装備した次世
代交通システム(Advanced Rapid Transit=ARTと略)の基本構想が披露された。

● 新幹線レベルのスムーズな加減速、乗客転倒防止
  ⇒自動走行制御

● 速達性、定時運行性の向上
  ⇒PTPS(公共交通優先システム)の高度化、
  ⇒自動走行制御

● 乗降時間短縮、乗降安全性向上
  ⇒自動走行(正着)制御

● 事故低減、運転負荷軽減
  ⇒自動走行技術
  ⇒高度運転支援
等々。

【ワンクリックアンケートの結果】

 本稿に先駆け、読者の皆様には、「スマートモビリティに寄せる期待」につい
てのアンケートにご協力を頂いた。その結果は次の通り:

1. 都市への人口集中に伴い深刻化する渋滞等の問題解決      :  29 %
2. 地方の過疎化に伴い、深刻化する交通利便性の低下等の問題解決:  18 %
3. 人口高齢化に伴う高齢ドライバーの増加が齎す事故等の問題解決: 29 %
4. 導入に伴う新規自動車購入者の拡大(女性ドライバー等):    12 %
5. 導入に伴うインフラ整備等の新規需要が齎す経済の活性化:         5 %
6. その他:               7 %

 なお、併せて以下の様なコメントも頂いた。

● 自動運転はそもそも事故を劇的に減らすことに第一義的意味がある。この観
    点では、何も老若男女を問わず期待される成果ではなかろうか。
● 自動運転が新たなモビリティシステムを構築することにより特に地方経済 
    の振興に役立つのではないだろうか。
● 所有から利用へのサービスビジネスへと変革が起こり、スマート・モビリ 
    ティからスマート・シティも含めた大きなスマート・コミュニティへと進 
    展するだろう。
● 自動運転技術により、自動車への純粋な興味が無くなり、単なる移動手段へ
    と化していくのでは。便利な反面、楽しみが失われるのは残念。

 

【我々を取り巻く状況】 

 ここで、我々を取り巻く状況について、振り返ってみたい。

 まず、人口減少について。国土交通省によれば、2000年と 2025年の人口を対
比した場合、人口減少率は首都圏で 1.8 %、関西圏で 5.4 %。対して、地方中
核都市から 1時間以上離れた地域では 16.5 %と予測されている。既に多くの地
方地域で鉄道・バス等の公共交通の破綻、閉鎖が始まっているが、今後はそうし
た地域が急速に増えることが心配される。

 ついで、高齢化について。詳細は 8月のレポートにて取り上げたが、本年内閣
府発表によると、65 歳以上高齢者人口は 2013年 10月時点で全人口の 25.1 %
を占めるに至った。高齢者になると交通事故のリスクが増える。交通事故死亡者
比率は最も低い 30 歳代と比較して、65~74 歳では 2.5 倍、75 歳超の高齢者に
至っては 4 倍に跳ね上がる。

 地方では、いろいろな問題が進行中だ。例えば、路線バスの運転手不足が深刻
な状態だ。元々バスの運転手は不規則な就労時間等、厳しい労働条件に加え、都
市部を走行するには高い動態視力が要求される為、トラックに比べて若い労働力
を必要とする。このため、東南アジア等外国人を運転手として採用することも検
討せざるを得ない地域もある。

 また、地球温暖化対策についても、自動車産業一体となっての取り組みの結果、
燃費性能は飛躍的に向上しているが、日本国内基準でみると、単位あたり CO2
排出量は 2010年実績 130g/km、2015年達成予測 125g/km と、2020年目標の
95g/km と比べるとまだ大きなギャップがある。

 これらはいずれも喫緊の課題である。

【自動走行による社会変革】

 これら様々な問題の解決策として、自動走行技術が注目される、しかし、一方
で、特にレベル 3 以上の自動走行の実現については、「本当か?」とか、「あ
りえない」という懐疑的、否定的な意見も根強い。

 確かに、自動走行技術は自動車産業にとって「破壊的」なイノベーションであ
り、自動車のあり方そのものを変え、「所有」から「使用」への動きに拍車をか
ける可能性がある。しかし、この流れは自動車だけの問題ではない。豊かになっ
た消費者は、「差別化」だけでは購買意欲はそそられない。精神的価値、社会的
価値の提供が、今、あらゆる商品・サービスに求められている。「より住みよい
環境(世界)」が実現すれば、あえて「所有」にはこだわらない。
 

 2020年に向けて我々は今まさに新しい時代への入り口に立っているのだろう。

 そこで考えたい。今後、もし、自動走行技術の成果が具体的な形で目に見えた
時、世の中はどう答えるだろうか? 例えば、国内交通事故死者数に関する「国
家目標」の 2018年達成はかなり難しいとも言われてはいるが、しかし、もし達
成されたら、どう世論は動くだろうか?また、自動走行システムへの社会的取り
組みがどこかで結実し、高齢者を含めた誰もにとって住み易い地方が小さくとも
実現したら、もっと強い説得力を持つのではないだろうか?

 自動走行システムは、年齢や能力を超え、あらゆる人々が移動の自由と利便性
を享受する新たな自動車社会をつくるもの、と言われる。

 1964年の東京オリンピックの後、日本は本格的なモータリゼーションを迎えた。
そして、2020年には、我々は新たに「モータリゼーション 2.0」を迎えるのかも
知れない。

 そろそろ、その準備をしなければならないではないだろうか、と考えている。

<大森 真也>

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