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コラム

日本における高齢化と自動車・モビリティについて

今回は、「日本における高齢化と自動車・モビリティについて」をテーマとし
た以下のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7098

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【はじめに】

 高齢化は、地球温暖化と同様、今、自動車産業・市場を取り巻く大きな環境
変化の一つであり、特に、その先陣を切る日本にとっては「待った無し」の喫
緊の難問である。

 この度、内閣府が発表した平成 25年版交通安全白書によると、2013年の交通
事故死者は前年より 38 人減り 4373 人であったが、うち高齢者の割合は 52.
7 %と過去最高の割合を記録した。この死者数には加害者も被害者も含まれる
が、警視庁は事態を重く受け止め、今後も更に高齢ドライバー、被害者対策を
強化していく考えだ。然し、一方で、高齢者講習の受講者は昨年実績 201 万人
に達し、「10年後には 600 万人に増える」とも言われている。講習だけで事故
が減るとも思えず、このままでは、「いたちごっこ」にもなりかねない。

 加えて高齢化は地域的に偏在する為、一部では急激な過疎化を引き起こす。
そうなれば、公共交通も止まり、高齢者は運転を続ける以外に選択肢はない。
問題解決の為には、高齢化に、より適合したモビリティの仕組みそのものを開
発・実用化することが必要だ。

 日本の高齢化はこれまで世界一のスピードで進行した。1970年に 65 歳以上
の人口割合が 7 %を超え、「高齢化社会」に突入した後、僅か 24年で 14 %
に倍増した。日本の高齢化は、欧州の「高齢先進国」と比較して 2~ 3 倍の速
さで進行した為、日本には十分な「準備時間」が与えられず、社会保障・福祉
をはじめ随所で軋みに直面している。高齢化率は昨年 10月にとうとう 25 %に
達し、2024年には 30 %を超える。世界を断然とリードして進む日本にとって
は「先例」は存在しない。問題解決について外国に習うことも出来ない。

【ワンクリックアンケートの結果】

 本稿に先駆け、読者の皆様には、「65 歳から 75 歳程度の高齢者ドライバー
の視点に立って、『高齢者にとっての、運転について』どう考えるか」につい
てのアンケートにご協力を頂いた。その結果は次の通り:

1. 移動・交通手段として引き続き重要であり、欠かせない存在   :  56 %
2. 家族・友人を乗せる、どこでも好きなところに行く為に
        欠かせない存在   :  15 %
3. 運転そのものが好きで、ジョギング等の趣味と同等の位置付け :  12 %
4. 公共交通機関等、別のモビリティを活用して、
                     自らは運転はしない、できればしたくない             :  12 %
5. その他                          :    5 %

 以上の通り、「高齢であっても運転せざるを得ない」、「自分のみならず、
配偶者や家族の為にも運転を続けざるを得ない」という意見が 7 割を占めた。
最早、公共交通はあてに出来ず、いくつになっても運転を続けざるを得ない実
態がアンケート結果からも伺える。

【問題解決に向けて】

 近年、「ジェロントロジー」という考え方が広まりつつある。日本語では、
「加齢学」と訳され、高齢化諸課題の解決に向けた基礎的知識を提供する学際
的、実践的な学問だ。20 世紀初めにフランスで始まった学問だが、東大が中心
となり、「2030年の長寿社会における QOL (Quality of Life) の向上にむけ
て、知識の融合・構造化を図る、学際的な取り組み」が産学共同で進行中だ
(東京大学高齢社会総合研究機構)。以下 2 つを中心課題に据えた取り組みを
展開している。

(1) 人生90年時代の人生設計(個人の課題)

(2) 安心で活力ある超高齢社会の創造(社会の課題)

【高齢化の再認識】

 学術的にアプローチすると、今まで渾然としていたものがある程度整理され
て見えてくる。そこで、高齢化について改めて認識したことを列記したい。

 まずは我々自身が、「人生 90年時代」は既に到来したことを認識しなければ
ならない。既に、厚生労働省の統計(2010年時点)からも裏付けられている。
よって、各自が「人生 90年」を確りと前向きに受け止め、その前提で新たなラ
イフプランを策定しなければならない。

 「2013年までに雇用確保義務年齢を 65 歳以上に引き上げる」政府の政策に
より、大方の企業では 65 歳迄、職場で働き続けることが可能となりつつある。
加えて、個々人の運動能力から言えば、今の高齢者は嘗てより 10年若返った
(歩く速度の比較による)とも言われている。

 人生 90年時代で、本格的な介護を要するのは、多くの場合が男女共に最後の
5年と言われ、中には、最後まで介護を要さない「PPK (ピンピンコロリ)」と
いう方々も居られる。

 但し一方で、高齢化は「多様性」を伴うのも事実。例えば、男性の場合、約
2 割は 70 歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要になる。
また、約 1 割は、80 歳、90 歳まで元気で自立度を維持したままの高齢者も居
る。両者の間に位置する 7 割は、70 代前半までは自立を保つものの、その後、
徐々に他人の援助を必要とする様になるがその進行度合いには個人差がある。

【高齢者のモビリティについて】

 平成 20年度国土交通白書によると、三大都市圏では「公共交通の利便性」の
重要度が 81.9 %と高く、満足度も 54.6 %と過半数を数えるが、地方圏にお
いては、重要度は 67.8 %、満足度は 23.2 %、不満度が 52.6 %となり、公
共交通を使いたいが発達していないので現実には自動車に頼らざるを得ない人
が半数以上いるのがわかる。

 然し、一方で、高齢に伴い、運転に関連する身体機能が低下する為、交通事
故を起こしてしまうリスクが高くなるのも事実。知覚機能では、有効視野が狭
小化し、情報処理能力は、個人差こそあれど総じて反応時間が遅れることが確
認されている。近年はこれらの機能低下を補うべく、安全装備を多く搭載した
スマートカーや、先進安全自動車(ASV)が多く登場している。

 また、高齢者は普段の運転距離が 20km 以下が 80 %を占め、近距離運転が
中心であり、乗車人数は 1 名乃至は 2 名というケースが 9 割以上を占めてい
る。

 上記を踏まえ、近距離・少人数という観点から、超小型モビリティが高齢者
の手軽な移動手段として今後普及することが期待されている。2013年時点では
販売総数で 5 万台程度ではあるが、カーシェアリングとセットでの実証実験が
横浜等で行われている。

【再度考える~まとめ】

 「高齢化」と聞くと、やもすると悲観的になるが、そもそも、「長寿」と思
えば、誰しもの願いであり、医学の進歩の賜物と途端と前向きになれる。そこ
で、私は未だ若干 50 歳代前半ではあるが、「人生 90年」を認識しつつ、残り
のカーライフについて考えてみたい。

 まず思うのは、「できれば 75 歳迄は現役で仕事も車も頑張りたい」という
こと。それなりに自由なモビリティは確保したい。車は定期的に買い替えたい。
多分、軽自動車や小型車になるのかも知れない。この点は拘らない。ASV であ
ればよい。軽の ASV なら、日本のみならず、後続して高齢化する韓国・中国等
アジア諸国でも歓迎されることだろう。超小型モビリティも然り、良い車であ
れば、グローバルな市場が期待できる。メーカーが高齢者用製品を開発し、高
齢者の声が製品を磨き、新たな市場が広がる。

 75 歳迄は、それなりに QOL が体感できる車に乗りたい。そこで、一つ気に
なることがある。昨今、「アンチエイジング」の薬や化粧品等、高齢者を意識
した CM は頻繁に見る。然し、車については、そうしたケースが少ない。自動
ブレーキだって、自動パーキングだって、高齢化を意識して開発されたものと
思う。でありながら、何故、高齢者が表面に出られないのだろうか ?

 メーカーは高齢者をもっと前面に出してもよいのではなかろうか ? 同時に高
齢者ももっと前面に出てもよいのではないだろうか ? 高齢化だって、皆で向き
合えば怖くない。新たな楽しみ方、ライフスタイルが開発されるのではないだ
ろうか ? CM 等メディアを通じて、今以上に高齢者を対象とした未来のカーラ
イフを前面に出せば、新たな価値観、ニーズが刺激され、日本から世界に向け
ての新たなメッセージが形成されるのではないだろうか、と筆者は考える。

<大森 真也>

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