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コラム

国内自動車メーカーにおいて他社との連携や業務提携が進む領域について

今回は、「国内自動車メーカーにおいて他社との連携や業務提携が進む領域に
ついて」をテーマとした以下のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致し
ます。

http://www.sc-abeam.com/sc/?p=7084

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【自動車メーカーの提携関係の変遷】

 これまでの自動車メーカー間の規模追求型の資本提携のトレンドを表す言葉
として、90年代後半には 400 万台クラブ、10年頃には 800 万台クラブ、昨今
では 1,000 万台クラブというキーワードがある。

 規模追求型の狙いの一つとしては、拡大する新興国市場向けで、利幅の薄い
低価格車の開発コストを賄い、利益を出す為に、販売台数を増やすことで規模
の経済のメリットを享受することだと言われている。

 但し、規模追求型の資本提携は必ずしも成功に至る訳ではなく、ダイムラー・
クライスラーの提携解消以降、規模追求型とは別に、「緩やかな提携」がブー
ムを迎えることになる。グローバル化の進展と共に、市場や商品の多様化が進
む中で、自社単独で全方位戦略を取ることは難しくなってきている。こうした
環境の下、必ずしも資本提携を必要とせずに、自社の強みを活かし、自社の弱
みを補う相互補完関係にメリットを見出す企業が増えてきている。

 例えば、トヨタが資本提携関係にある富士重工に加えて、マツダにも HV 技
術を供与していることや、BMW からディーゼルエンジンを調達したり、環境技
術領域で共同開発するといった動きをしている。

 また、トヨタにおいては、自動車メーカー間の提携に留まらず、車載情報通
信システム、次世代クラウドサービスや自動車用 SNS といった ICT
(Information & Communication Technology)の領域において、アップル、イ
ンテル、マイクロソフト、セールスフォース・ドットコムといった異業種との
共同開発、提携を加速させている。

 このような動向は、これまで独立独歩路線を採ってきたホンダにおいても例
外ではなく、GM との次世代燃料電池システム共同開発に加えて、車載 OS にお
いてグーグルやアップルとも連携を進めるといった動きがでている。

 また、この流れとは別に勢いのある新興国自動車メーカーが先進国メーカー
を買収するケースも増えてきている。TATA が 2008年に Jaguar Land Rover を
買収して以降も、2010年に Volvo を吉利が、2014年には PSA を東風が買収・
資本参加している。これらの新興国メーカーの販売先は自国市場が中心であり、
海外展開を見据えた先進国メーカーが持つブランド力やイメージとの相乗効果、
及び環境技術の取得が狙いであると言われ、自社の弱みを補完するというカテ
ゴリーに入ると考える。更に、中国の自動車部品メーカー・万向集団が PHV 等
次世代自動車専門の新興メーカーである米・ Fisker や、Fisker 向けにバッテ
リーを納めていた A123 Systems を買収するといった動きも出ており、新興国
自動車メーカー(部品メーカー)の動向にも目が離せない。
  
【個社ごとの連携から日本連合への進展】

 上述の通り、グローバルベースでの競争がより一層厳しくなることが予想さ
れる中、自動車メーカー間での連携が複雑さを増してきている。最近の報道を
見る限りでは、下記のように国内自動車メーカーの他社との連携や業務提携が
多岐に亘り、更に活発化してきており、新しいステージに突入したと感じる。

 - 国内乗用車 8 社を中心とした産学官連携での「内燃機関の燃焼技術」、
  「排出ガス浄化技術」を共同研究する組織(AICE)の立ち上げ

 - 国内自動車メーカー、二輪メーカー 14 社連携で、汎用性の高い部品や車
  載用半導体等の仕様統一化に向けた取り組み

 - トヨタ、日産、ホンダ、三菱自が充電インフラ普及を目的とした共同出資
  会社を設立

 上述のような観点からも今後の国内自動車メーカーの業務提携動向に注目が
集まる。今後、国内自動車メーカーにおいて特にどの領域において他社との連
携・業務提携が進むと考えられるか、メルマガ読者の皆様にお伺いした結果、
下記の通り、「基礎技術研究・開発領域」が最多となった。

[国内自動車メーカーにおいて他社との連携や業務提携が進む領域について]
1. 基礎技術研究・開発領域 : 31 %
 (例:上述の「AICE」、等)

2.調達領域   : 22 %
 (例:上述の「汎用部品や車載用半導体等の仕様統一化」、等)

3.生産領域   : 22 %
 (例:日産と三菱自の軽自動車 OEM 生産、生産ノウハウの共有、等)
 
4.販売・マーケティング領域 : 20 %
 (例:上述の「充電インフラ普及」等、環境車の普及課題解決や新市場創出
    に向けた連携、等)

5.その他   : 5 %

 ここで、自動車メーカーの売上高研究開発費比率(13年度、連結ベース)を
見てみたい。一例として抽出した単年度の数値ではあるが、下記を見ると、VW
や Fiat に対して、国内自動車メーカーは比較的高い水準にあると言える。

[売上高研究開発費比率(13年度、連結ベース): 各社発表資料より]
 - ホンダ: 5.4 %
 - 日産 : 4.8 %
 - スズキ: 4.3 %
 - マツダ: 3.7 %
 - トヨタ: 3.5 %

 - VW  : 3.8 %
 - Fiat : 2.6 %

 勿論、売上高研究開発費比率が高い水準にあること自体を否定するものでは
なく、多くの研究開発費を投じた結果として、これまでの競争力のある魅力的
な商品開発に繋がっているものと信じる。筆者がここで主張したいのは、拡大
する新興国市場への対応や、高付加価値車両への取り組み等、自動車メーカー
としては、限られた自社のリソースを有効的に活用して行く必要があり、今後
はより一層有効的、且つ効率的な研究開発費の活用が求められるのではないか
ということである。
 
 上記日本連合の発足は、正に上記趣旨と合致しているものと考える。今後は
同じ日本の経済・産業や雇用を担う国内自動車メーカーとして、「競争領域」
と「協調領域」を明確に定義し、そして巧く使い分けながら他社との連携強化
を図り、研究開発費や人材等のリソースを本来の意味での「競争領域」に焦点
を絞って投入して行くことで、他国と比べて今まで以上に競争力の高い商品の
投入が可能になるものと信じる。また、開発期間や開発工数の削減にも繋がる
であろう。

 AICE において、元々内燃機関の技術を得意としていた企業とそうではない企
業等、夫々の参加企業が受ける恩恵は、企業により大小があるかもしれない。
だからと言って、連合の中で各企業が出し惜しみをすることがあっては全く意
味が無くなる為、連合の中でより大きな役割を果たした企業がより大きなメリ
ットを享受できるような仕組みや、各社の積極性を引き出す環境づくりを中立
的な立場にある官主導で取り組んでいくことも必要になるかもしれない。

 このように同志が集まった日本連合での取り組みをより活性化させ、日本経
済全体の持続的な革新と成長を、引き続き自動車産業が牽引することで、次世
代の日本居住者が世界の中で現在の私たちと同じ豊かさと誇りを享受できるこ
とに繋がることを期待したい。

<横山 満久>

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