AYAの徒然草(55)  『意外と役立つ悪いこと???』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

……………………………………………………………………………………………
第55回 『意外と役立つ悪いこと???』

昨年末、東京ディズニーシーに行きました。その時、おみやげ屋さんでお買い物をしていたら、ちょっとおもしろい光景を見たんです。

幼稚園児ぐらいの女の子が、おみやげ屋さんで売っているディズニーのキャラクターのぬいぐるみを指差して「あれが欲し~い!!!」と大きな声で泣きじゃくりながらお母さんに訴えていたんです。当然、周りにいた他のお客さんは、その大きな泣き声で誰もが振り向き、その子をちらっちらっと見ていました。お母さんは、「ダメよ。家にもいっぱいあるでしょ?」とか、「もっとかわいいのが他のお店にもあるからそっちに行ってみましょう!」と言いながら一生懸命なだめているのですが、その子は一向に泣き止みません。泣き止むどころか、どんどん泣き声は大きくなり、ついには床に座り込んで買ってくれるまで動こうとしなくなりました。ぬいぐるみを見つめながら大きな声で叫び、大きな涙粒を流し、床に座り込んでいる女の子の姿を想像してみてください。お母さんは顔から火が吹きそうなくらい恥ずかしいに違いありません。

お母さんは困り果て、お母さんも泣きそうな顔になっていました。そんな時、お母さんは何も言わずにカバンの中に手を入れて、何やらごそごそと探りながら何か出そうとしていたんです。ついに子どもを泣き止ませる「最終兵器」の登場か!お母さんの「最終兵器」とはなんだろう?と、私はちょっとワクワクしながら、じっとお母さんを観察していました。なんと、カバンから出てきたお母さんの最終兵器は、「チョコレート」でした。「じゃ、これをあげるからもう外に出ましょう!」と言いながらチョコレートを渡すと、女の子は途端に泣き止み、黙ってチョコレートを食べ始め、立ち上がり、お母さんに手を引っ張られながらも反発せずにお店の外にすんなり出て行ったんです。

この光景は、子育ての経験のある方にとっては全く特別な光景ではないのかもしれませんが、私には、なんだかとても不思議に思えました。だって、さっきまであんなに欲しがっていたぬいぐるみのことを、チョコレートを渡されただけですっかり忘れて、チョコレートを食べることに夢中になってしまうんですよ。その時、特に食べたくもなかったチョコレートで満足しちゃうんですから。これを、「子ども騙し」って言うんですよね。

人間は、同じ瞬間に二つのことは考えられません。だから、この女の子は、ぬいぐるみのことをチョコレートで忘れてしまったんですよね。子どもだから、簡単に考えていることを替えさせることができたけど、でも、もしこれが、大人だったら、こんな見え透いたことでは絶対に考えていることを替えさせることはできませんよね。しかし、私は、これをもうちょっと「高度な騙し方」に変えれば、大人にも通用するんじゃないかなぁと思ったんです。

例えば、このような場合です。友達が、気に入って買ったお洋服を自慢し、私にもその同意を求めてきました。「この洋服、すごく高かったんだけど、あまりにもステキだから奮発して買っちゃった!!どう?ステキでしょ?」と、私に「共感」を求めているけれども、実は、私はあまり「ステキ」とは思っていない、というような場合に発揮できそうなんです。

本当に心の底から「ステキ」だと思っていれば素直に「とてもステキね~。どこで買ったの?」と、そのお洋服についての話題で話を弾ませることができますが、「ステキ」だとは思っていなかった場合に返答に困るんですよね。

共感していないのに共感を求められた時の返答は、とても困るものです。仕事中でも同じような状況ってあると思います。思ってもいないことを言って相手を褒めたり大きくうなずいて同意したとしても、相手にウソを見透かされてしまっては、却って相手の気分を悪くさせてしまうのがオチです。だから、思ってもいないことは言わない方が得策ですよね。「適当に返事をしているんだわ」とか、「関心がないんだわ」と思われてしまっては、良い人間関係にヒビが入り、二度と口を利いてもらえなくなってもおかしくありません。

そんな時、こんなふうに答えたらどうでしょうか?「そうそう、今年ってその色が流行りそうだよね。流行の先端を行ってるね~。」とか、「ちょっと珍しいデザインでとても個性的ね。」と言って、話題を今年の「流行」や「個性」に替え、褒めながらも会話の論点を摩り替えてしまうのです。話のきっかけは友達の気に入ったお洋服の話でしたが、「流行」や「個性」の話が弾んでしまえば、すっかり会話のとっかかりなんて忘れてしまうものです。人間は同じ瞬間に二つのことは考えられないんですから。だから、自分が受け答えに困るような話題だったら、さりげなく論点をすり替えてしまえばいいと思うんです。

さて、私は子どもの頃、こんな気持ちになったことを覚えています。父と母と私の三人が一緒に居る場で、母から「ママとパパ、どっちが好き?」と聞かれた時、子どもながらにも、「ここで『ママ』と言ったら、ここにいるパパがかわいそう。」と思ったのです。また、同じ状況で父から、「パパとママ、どっちが好き?」と聞かれて、「ここで『パパ』と答えてしまったら、ママがかわいそう。」と思い、どっちを答えていいかわからなく困ってしまったんです。要するに、どっちを答えても、両方にはいい顔ができない状況になってしまい返答に困ったのです。さて、こんな時、子どもの頃の私はなんて答えていたと思いますか?

私は、その場にはいない、ママでもパパでもない「おばあちゃま」と答えていたそうなんです。(と、大人になってから親から聞きました。)

こんなふうに、答えにくい、もしくははっきり答えてしまうとどちらかに角が立つような場合、これもまた論点をすり替えてしまえばいいんです。例えば「Yes or No」とか「All or Nothing」といった二者択一の質問だとしても、とぼけて勝手に選択肢を増やして話題を替えてしまえば、とりあえず場は和んで会話が弾むと思うんです。

「論点をすり替えること」は、子ども騙しを大人向けにした「大人騙し」です。「騙す」という響きの悪い言葉ですが、でも、「騙す」ことって私たち人間に「本能」として備わっている「自己防衛能力」の1つだと思うんです。答えにくい場合は、論点をすり替えたり選択肢を勝手に増やしたりして相手の思考回路を切り替えることで、意外にも、良い人間関係を維持できたり、状況を良くしたりすることができるんですから。必ずしも、「騙すこと」=「相手を傷つけること」じゃないような気がしてきたんです。

さ~て、みなさんは、一見すごく悪いことに思えるけど、でも「意外と役立つ悪いこと」、他に何かご存じですか?これは使える!と自信のあることがあったら、ぜひ私にもこっそりおしえてくださいね。

<佐藤 彩子>